とある日の放課後。
「アイツまじムリー。ありえねぇー!!」
・・・・ブチッ。
私のなかの何かがキレル音がした。ああ。あはは。
まぁあえてそれを露にはしないけれど。
藤代陸。隣のクラスの男子。因みにサッカー部。
さっき藤代が言ってた「あいつ」っていうのは私の大好きな芸能人のことで。
あーあーあーあーあーあーむかつくー。ありえねーのはお前だ!!
ていうかこの学校他クラスへの出入り禁止だよね?なに私のクラスに入ってきてくれちゃってるんですか。
まぁ要するに私は藤代が嫌いなわけで。
だって人が好きなもの平気で大声で批判するし。
その人自身も批判するし。もちろん大声で。
自己中心的。・・・・最悪要素じゃない、コレって。
今のは2年前のトキの話。以来私はずっと藤代が大嫌い。
で、今はやっと高校の3年になったっていうのに。
私の名前、櫻井美鈴が印刷されているクラス表には「藤代陸」の文字。
最悪だあああああああああああああああ!!!!
高校生活もあと1年。思いでもたくさん作る、予定の年。大事な年だよ。
よりによって藤代と同じクラス?!・・・ホンット冗談じゃない。
「なーなー櫻井。お前頭いいんだろ?」
気安く私の名前、呼ばないで欲しいなあ☆あはははは。
席が近いっていうただでさえ最悪な状況なのに。
「・・・・え、あ、さぁ。」
「なんだよそれ。てかさ、ここの問題の解き方教えてよ。」
・・・はい?なんで私が貴方に?問題の解き方を教える?
冗談じゃないよ。ていうか私貴方の斜め後ろだから、席。
隣の子にでも聞けばいいのに。
「・・・・藤代だって頭いいんでしょ。そのくらい解けるでしょ。」
「はぁ?!解けねーから聞いてるんだし。ま、俺も頭いーけどさっ。」
うわっナルシスト。ありえない。
しょーがないなぁ本当。
「だからここに代入すると式がこうなるから、んで・・・。」
「・・・おおっ。なるほど。ってかさお前偏差値いくつ?」
「はっ?何でそんなこと言わなきゃなんないの?」
「いいじゃん別に。教えろよ。」
「藤代は。いくつ」
「俺?俺はー、58くらい?」
「・・・・・プラス7」
「はぁあああ?!すげぇお前頭いいー。」
あれ・・・・。私無意識のうちに会話しちゃったよ。
つーか何コイツ・・・。私の想像ほど悪いやつじゃないのかもね。
私があいつを見たとき大体あいつは何かを批判してる時だったし。
別にそんなにむかつかなくなってきた。
・・・私って単純だなあ、まったく。
「ばかじゃねーの、瑛?」
「うっせーよ藤代もやれよー。」
「はぁ?俺そんなのやらねーし。」
楽しそうに男子とジャレてんのね。
・・・っていうかなんで私は藤代を見てるわけ?
別に視界に入っただけだしね。
「ねー美玲きいてよっ!!」
「何?」
「昨日の帰りに偶然、霧島と会って、一緒に帰ったんだ♪」
「・・・よかったね。」
「もーかっこよすぎてダメだーー!!」
「花奈、うるさいから(苦笑)」
親友の如月花奈は同じクラスの霧島優紀が好きで。
もーきゃっきゃきゃっきゃよくそんなに騒げるよなあ(笑)
「美玲も好きな人いないの?」
「まーたそれ?」
「いーじゃん教えてよう!」
「教えてっていうかいないから。」
「なーんで?!本当にいないの?」
「うん。ほん・・・」
・・・・どうなんだろう。少し前までは1つ下の野球部の人が好きだった。
けどそこまで好きだったのかはわかんないんだよね。
その前に好きだった人は長い間好きだった。高1の頃だったかな?
その人も野球部の人にも告白なんて結局してないし。
「卒業までには告白しよう。」
いつも好きな人が出来るとそう決める。卒業までなのはフラれた後が気まずくならないようにするため。
でも、卒業までには冷めちゃうのがオチで。
「美玲ー?み・れ・いー?」
「・・・。」
「美玲ってばっ!!おーい!!」
「んはっ!!ごめん、ぼーっとしてた!」
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「櫻井ー。」
「何?」
「なあ地理教えて!!マジやばいんだよね。」
「無理。」
「即答かよ!!」
「だって私地理できないもん。地理死んでるから。むしろ教えてほしいくらいだし。」
「マジで?まあ俺も日本史とか世界史とか歴史系はパーフェクトなんだけどな~。」
「・・・ナニソレ自慢?・・・うざっ。」
「きっつ!!」
気がつけば割と藤代と話すようになってたりして。
まあ気がつけば目で追うようになってたりしちゃったりして。
・・・まあ、それって・・・認めたくないけどそういうこと・・・なのかな?
「・・・花奈。」
「んー?どしたの美玲。」
「私さ、よくわかんないけど藤代のことが好きになってたっぽい・・んだけど・・・。」
「あ、やっぱりそーなんだ?」
「え?!」
「見てれば分かるもん(笑)」
「え、ええ・・・。私そんなに分かりやすいかな・・・?!」
「もー、何年友達やってると思ってんのー?(笑)」
それから気になり始めた。隣のクラスの女子。
石川萌。彼氏もちのすごく可愛い女の子。
なんだろう。容姿もすっごくかわいいけど雰囲気とか話し方とかもすごく可愛いんだよね。
まあその彼氏は私の隣の席の萩原玲也なんだけど。
すごく藤代と仲が良くて。よく話してる。
・・・まあ要するに嫉妬なんだけど・・。彼氏もちなのになんでそんなにするのかな?
萩原がかわいそうだと思う。・・でもこれってやっぱり醜いただの嫉妬だよね。
あー。どうせ私が藤代に告ったところでフラれて終わりなんだろうな・・・。
・・・ていうか藤代って絶対石川さんのこと好きだよね・・?
まあダメもとで卒業式にでも告白してみようかなー・・・。
「櫻井?さーくーらーいー?」
「・・・・え?!ごめん何?聞いてなかった!」
「ここ教えてって言ってんじゃん。」
「ん・・・ああ。問題ね・・。うん、そうだよね。」
「?・・何お前どうかしたの?」
「んいーや。別に。全然。どうもしてない。ていうか元からどうかしてるから!」
「・・まあいいけどさ。」
「で、何だっけ?・・ああ、これ。ここの座標が・・・」
「・・・・おお、なるほど!!サンキュー。」
「いや・・別に。うん。」
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その日の放課後。最近めでたいことに花奈と霧島は付き合い始めたので私は1人帰ってるんだけど。
あー、本当おめでとうだよね。とりあえず花奈を泣かせたら霧島は抹殺するとして・・・。
「!!」
藤代だ!・・・声、かけてみようかな。
いや、でも話すことないしな・・・。
・・・んまあなるようになれだ!!
そう思って私は駆け出したがすぐに足が止まった。
「本当ひどくないー?あれギリギリセーフだったって!」
「知らねーよ(笑)昨日遅くまでテレビなんか見てるからじゃん?」
「遅刻は遅刻だっての。あきらめろ!」
「うぅ~・・・。」
藤代の隣には人がいた。石川さんだった。凄く楽しそうに話してる。
やっぱり石川さんのことが好きなんだな。
その笑顔を彼女に向けないでほしいだなんてただの醜い嫉妬で。
彼女でもないのに嫉妬なんて図々しすぎだよ、私。
ああもう本当に嫌な女だな、私は。
あー・・・なんか鬱になってきた・・・。
あれ・・私泣いてるのかな?
「あれ?櫻井じゃん!」
「!!・・・藤代?!」
気付いたら藤代が隣にいたんだ。
もう石川さんとは別れたらしかった。
「え?!お前泣いてんの?!え、ごめん俺何かしちゃった!?」
「違・・違うから。大丈夫。ごめん、本当なんでもないから。本当ごめん、じゃあね。」
そう言って私は歩き出した。
元々私なんてブサイクなんだから泣いたらとんでもない顔になる。
そんなの見せたくない。
もう卒業式の告白もいいや。無駄なことはしないほうがいいしね。
「え、ちょ待てよ櫻井!どうせなら一緒に帰ろうぜ。」
「・・・え。」
「何かあったんなら俺でよければ聞くけど?」
「・・・・ありがとう。でもいい。本当に何もないから。」
もう私に優しくしないで。
余計に涙があふれてくるから。
諦められなくなるから。
他の女の子にも同じように接してることくらい分かってる。
でも私みたいな馬鹿はもしかしたら希望があるのかも、って期待なんかしちゃうんだよ。
「え、何?やっぱり俺、嫌われてる?」
「・・・え?」
「いや、何か最近話しかけてもボーッとしてること多いし。萩原とかとは普通に話してるから俺嫌われてんのかなーって。嫌いなら嫌いって言ってくれればもう話しかけないようにするからさ。」
藤代はさらりとそう言った。
都合がいい。藤代が私に話しかけなければもう何も思わなくてすむ。
簡単に諦められる。
「うん。私藤代のこと嫌いだからそうして。」
そう言おうと思った。
「・・・なわけ・・・ない。」
「・・え?何?」
「嫌いなわけないじゃん。」
「え。」
「嫌いなわけない。そうだよ好きだよ。大好きだよ。」
私の口は私の思ったとおりに動いてはくれなかった。
ほら、藤代が驚きつつも困ってる。
困らせたくなんかないよ。
こんなこと言いたいんじゃない。違う。違うの。
でも止まらない。
「でも藤代は石川さんが大っっ好きでしょ?」
「・・・なあ櫻井。」
「本当に石川さんってね凄く可愛いと思うんだ。容姿だけじゃないよ?」
「・・・おい。」
「でも萩原は結構石川さんのこと溺愛してるみたいだから頑張ってね。」
「おい!!」
そこでやっと私の口が止まった。
もう何も言わないで。何か言うのなら私を罵るだけにして。
もう貴方の声なんて聞きたくないよ。
「・・・・ごめん。・・・ごめん!!本当ごめん!今の全部嘘だから!あ、石川さんが可愛いとか萩原の話は本当だけど私別に藤代のこと好きじゃないから。冗談冗談!」
そう言って私は笑った。
こういう時に笑うのってすごく得意。
多分上手に笑えてたと思う。
「もういい加減にしろよ。お前勝手に決めつけすぎ。」
あー、やっぱり怒らせちゃった。
そう思っていると不意に体がふわっとあたたかくなった。
「・・・藤代?!ちょっ何してんの?」
藤代に抱きしめられた。
もうやめて。本当にやめて。嫌だ。
「嫌だよ・・・。本当に嫌。やめて。」
「やめない。」
「はなして。」
「はなさない。」
抵抗してもかなわない。突き飛ばそうとしても放してくれない
「・・・ねえ、こんなことして何が楽しいの?何の嫌がらせ?」
「嫌がらせじゃない。・・・俺がしたいからしてるだけ。」
「嫌がらせが趣味なの?」
「んなわけねーじゃん。」
もうワケがわからなくなっきた。
「あーもうじゃあハッキリ言う。」
「?・・何が?」
「俺、櫻井のこと好きなんだけど。」
思考がとまった。
「・・嘘。」
「?!なんで!!嘘じゃねえし。」
「絶対嘘だ!」
「嘘じゃねーよ!!俺がどんなヤツにもこんなことしてると思うか?」
「思うよ!!」
「!!・・・。俺そんなに軽く見えるかな・・・。」
そう言って藤代はやっと放してくれた。
でも嘘だよね。馬鹿をからかうのはいい加減にしてほしい。
「・・はぁ。もうこんなに早く告るつもりなかったのに・・・。」
「・・・。え、まさか本当なの?」
「本当だって・・・さっきから言ってるだろ?」
藤代の顔がかっと赤くなった。
「俺は去年からずっと好きだった。でも俺嫌われてたみたいだったから。3年で同じクラスになった時
すげー嬉しかったんだよ。話しかけたら櫻井は普通に返してくれたからそんなに嫌われてないのかなって期待なんかして。でもやっぱ嫌われてたんだなーと思ってさ・・・。」
「うん。私ずっと藤代のこと大っ嫌いだった。」
「!!・・・やっぱりか。はぁ・・・。もう俺フラれたけど気まずくなんのやだから明日から普通に接してくれ・・・。」
「ねえ、私の話ちゃんと聞いてる?」
「え、聞いてるけど。」
「私は嫌い”だった”って言ってるんだけど。」
「うん。・・・、え?」
「・・・・っだからっ!私も藤代のことがっ好きなんだ・・・けど・・・。」
「・・・・・マジで?」
「・・・・・マジで。」
「・・・やべー超嬉しいどうしよう。」
そう言って藤代は再び私を抱きしめた。
私はもう抵抗なんてしない。
嬉しさに顔の筋肉が緩むのを隠しきれない。
「お前って被害妄想癖あるよな。」
「うん、それは認める。」
「もしかして自分のことブスだとか思ってんの?」
「当たり前じゃん。こんな顔が可愛いわけないでしょ。」
「可愛いよ。」
「お世辞なんていらないよ?」
「俺が可愛いって言ってんだから可愛いんだよ。ていうかお前のこと好きな男子結構いるんだけどお前それ知らないだろ?」
「藤代って冗談が上手いんだね。(笑)」
「っ冗談じゃねえよ!!名前はださないけど俺の知ってる限りでは3人いるんだよ!」
「・・・え、マジで?」
「マジで。でももうお前は今日から俺のモンだから絶対告白されても断れ。」
「言われなくても。」
そう言ってお互い笑った。
その時は忘れてたんだ。
・・・・ここが普通の道路であるということを。
「え。・・・み、美玲・・?だよね・・?」
「つーか藤代?!え、マジお前ら何やってんの?こんな道のど真ん中で」
反射的に私達はバッと離れた。
「花奈っ?!」
「霧島っ?!」
「やだもー☆美玲ってば良かったじゃん♪ただ道の真ん中はどうかと思うよー。」
「いやっ・・だーっその、これは違くて」
「はいはい言い訳しないの♪」
「藤代、お前もよーやるなー。」
「はぁっ?!違ぇーよ!!てかお前ら普通にスルーして通れよ!!」
そんなとある日の放課後。
初投稿です。どうも、紫紀と言います。
美玲は被害妄想壁がある感じですが普通女の子って皆こんな感じだと思います。
拙い文章ですが読んでくださりありがとうございました!!
良かったら感想もらえると凄く嬉しいです。