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転生司祭は逃げだしたい!!  作者:
番外編

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8/24

転生司祭は転職したい 1

本編の「転生司祭は逃げられない」後の会話です。




「えっと、私……邪教の教祖様になりたいとか言いましたっけ?」



あれ、おかしいな?もしかして僕、寝てた?

知らない間に寝落ちして意味不明の寝言でも吐き散らしてましたか??

困惑しながら躊躇(ためら)いがちに視線をやれば、無表情かつ若干死んだ目で首を振ってくれる仲間たち。だよね、よかった。


そして、疑惑を抱かせた当の本人たちはというと……。


「「邪教じゃないです!」」


声を揃えて叫んだ。


いや、邪教だよっ!!

邪教以外のなんでもないよっ?!


心の中で全力で叫び返しながら片頭痛を訴える頭を押さえた。




(さか)のぼること少し前。



王都を襲撃した魔物の討伐も終わり『▶ にげる 』のコマンド選択にも失敗。

勇者と聖女にサンドイッチされつつ大国の次期王やエルフ王族ファミリーに囲まれての事情聴取?的なアレも終了。

父親のやらかしで超絶多忙な王子たちは僕に謝罪を重ねながらも事後処理のためにすでに退出し、アルベルト様やアルトもエルフの森へ帰るために腰を上げた。


「……今まで、悪かった……」


あーだの、そのだの散々言い淀んだあとでぐしゃぐしゃと頭を掻きつつ視線を逸らして謝罪したアルト。

「いえ」とお得意の微笑みを浮かべて返せば、謝罪が恥ずかしかったのかキッと睨んで、だけどまた決まり悪そうに「悪い」と反省する姿は思春期の若者っぽい。

ずっとガンつけられてたこともあって、僕の中でアルトは不良系キャラなのだ。見掛けは美形エルフだけど。


そんな素直になれない不良系エルフに「謝るならちゃんと謝れ」「誠意が感じられなーい」「ありがとうとごめんなさいは基本なのー」とご不満そうなアーサー、ユリア、花妖精たち。

逆ギレされても恐いから僕としては煽るのやめて欲しい。アルトにしては頑張ったと思うよ。


そして不良系息子さんと我儘系娘さんの父親たるアルベルト様は雰囲気と威厳がありすぎて、謝罪も謝辞もされるこっちの方が恐縮して頭を下げたい気分になるから居た堪れないよね。


「ミシェル―、元気でねー」


「また遊びにくるっ!」


「ミシェルもきてー」


お肉♡お肉♡と謎の歌を歌いだす花妖精たちにシルフィーナが「なんですの?」と訝し気に問う。

楽しそうに歌う花妖精たちはとってもキュートなんだけど、いかんせん歌詞が謎だしね。


「お礼なのー」


「ありがとーのお礼は基本っ」


「しつれーなシルフィーナやアルトとは違うのー」


言葉足らずの花妖精たちの言葉は案の定理解されず、それでもさり気なくディスられたシルフィーナやアルトから説明を求める視線を向いた。


「エルフの森は豊かで食材も美味しいですから。彼女たちは時折お礼として小さな果実などを転移で送ってくれてたんです。訪れた際はお肉を振る舞って下さるとそういうことだと思います」


「そう」「そうなの」とコクコク頷く妖精たち。


いやー、初めて受け取った時は吃驚した。

何もない空間から急に苺がぽろぽろ降ってきたからね。普通に恐すぎて食べれなかった。送り主がわかってからは有り難くいただいたけど。

小さな果実や貴重な薬草メインなのは妖精たちが小っちゃいからだ。自分の体よりあまりにも大きいものの転移は難しいらしい。


エルフの森の食材は美味しいから何気に楽しみ。

因みにエルフは草食系なイメージもあるけど、普通に肉食。弓が得意な狩猟民族だし。そりゃ獲ったら食べるよね。


「アルトたちやみんなにイジメさせないからー」


「遊びにきてー♪」


「なっ!!大体、お前たち知っていたなら教えてくれればっ。そうすればわたくしだってあんな失礼な対応は……」


「姉上の言う通りだ」


「わーせきにんてんかー」


「大人げなーい」


シルフィーナたち花妖精たちと仲悪いの?

めっちゃ舐められまくってない?気安さの表れなの??


「そもそも、知ってたとか知らなかったとか関係ないだろ」


「騙したわけでもなく司祭様は最初に条件告げたもんね。その時に断わらなくて、治療は受けておいてイチャモンだけつけるとかどうなの?」


アーサーとユリアもやめなさい。

突っかかってくるシルフィーナに喧嘩売るのやめてって止めてたから鬱憤(うっぷん)たまってたのかもだけどやめて。


シルフィーナたちの為っていうか、僕の胃の平穏の為にやめて。司祭様のお願い。


「まぁまぁ、私は気にしてませんし、何より口止めしたのは私自身ですから」


大袈裟に感謝されても手柄横取りの罪悪感で胃がしくしくするだけだし。

ねっと双方を宥める。喧嘩反対。



そんなこんなで、若干ゴタゴタはありつつもアルベルト様とアルトたちも帰った。

そして残された勇者パーティ一同はそのまま解散するでもなく雑談の流れになった。


「王子殿下たち、驚いてましたね」


ぽつりと呟いたヨハンくんの言葉にそっと目を逸らす。

驚いてもいたし、ドン引きされてましたね。


勇者パーティの隠された一面は果たして明らかにして良かったのだろうか。

ある意味、魔王よりヤベェ奴認識されてない?


「ま、まぁミシェルの不当な評価も改善されるだろうしそこは良かったじゃん!」


あからさまにアーサーたちの本性バレた件から話そらしましたねジャンさん。


「素直に喜べないのは何故でしょう」


僕にしても胃をチクチク、いやザクザク?刺激してやまなかった不審、蔑み、侮蔑や怒りに満ちた視線はなくなったけど……代わりに最後の方はビッミョーな視線向けられてた気がするの気のせい?

大変ですねっていう同情とかあれやそれのね。

うん、気のせいじゃないな。


「司祭様の素晴らしさが伝わってないのは由々しき事態です。この機会に司祭様の偉功を広く伝えるべきです!」


「そうだアーサー!パーティーとか式典で伝えるのはどう?」


「お願いやめて!?」


思わず叫んだ。

ほんとやめて。お願いだから。


「保護者は大変だね」


「笑ってないで止めて下さい。本来なら貴方の役割なんですから!」


「はっ?俺?」


人差し指で自分を指すジャンさんに大きく頷く。


「実質的なリーダーは勇者であるアーサーですけど、調整だのまとめ役は年長者のジャンの役目でしたし」


「俺はリーダーも司祭様だと思ってます!!」


アーサーはちょっと黙っててくれるかな?ユリアもコクコクしない。


そんでもって「年長者ってならババアのシルフィーナじゃねーか」って失言して顔ギリギリに風魔法ぷっぱなされたウルフは無視します。女性に年のこと触れるのが悪い。ましてやシルフィーナはエルフだし見た目の年齢が全てなんだよ。


「そもそも本来なら私は旅のメンバーではなかったですし」


死にキャラだしね、僕。


「危険な旅に子供だけで向かわせるのは気が咎めたので私も同行しましたけど、正直魔王討伐まで同行すること自体予想外でしたよ。自分の力不足は嫌と言う程認識してましたしジャンを仲間にしたらお役御免だと思ってました。普通に足手まといで脱落宣言されるだろうなって」


なんでジャンさんかって?

シルフィーナは我儘だし、ウルフは脳筋だからね。保護者にはちょっと……。


そーいえば、ゲームのジャンさん今より年とってること差し引いてもくたびれてた気がするけど色々大変だったのかな?

まぁそのくたびれた感じも気怠げな大人の色気に溢れてたけど。美形は得だな。


「えー、司祭様が抜けちゃったらわたしたちも抜けます」


いや、聖女と勇者は抜けちゃ駄目だろっ?!


「ミシェル様を足手まとい扱いなんてしたら……魔王の二の舞じゃないですか?」


「普通に殺すな」


「「「…………」」」


さも当然、って感じで何言ってんのっ?!やだ、この子こわい。


視線の端ではウルフは尻尾を握りしめながら「美味い飯に餌付けされてて良かった!!」って呟いてるし、シルフィーナもちょっと肩をビクつかせてた。二人が一番危なかったしね。


不穏な雰囲気を払拭しようと別の話題を探しつつ、「あっ」と声を上げる。


「そうだ、今後は私のことは“司祭”様じゃなく名前でいいですよ。

 今回の件で私は司祭を辞そうと思ってるので」


「「「「「はっ?!」」」」」


あーそうだ、伝えとかなきゃ。ぐらいの気持ちで告げたら漏れなく全員に身を乗り出して驚かれて逆にこっちはちょっとのけぞった。


「はぁ?ちょ、待ってミシェル。ちょっと一旦落ち着こう」


両手を前に広げてそう言うジャンさんこそ落ち着こう。


「えっ、司祭様なんで……」


「司祭様っ?!」


いや、だから司祭様言うな言うてるやーん!聞く気なしかいな!

詰め寄ってくる両サイドに何故かエセ関西弁風なツッコミが出た。もちろん、心の中で。


「戒律破りもしてしまいましたしね」


苦笑いしつつそう告げれば、はっとした表情をしたアーサーが「でもあれは正当防衛で!」と焦り、ユリアは「それにあの場にいた人間しか見て……」と中途半端に言葉を止めた。


ちなみに、ギリ殺してはいない。

意識だけ失わせれば術は解けるし、殺さなかったのは優しさではない。むしろ、逆。罪人として法で裁かれ処刑されるべきだ。アーサーたちに手を出されたこと、結構ムカついてるからね。


僕を挟んで無言で見つめ合う二人。

決意を込めた瞳で見つめ合い、強く頷いた。


「ちょっと用事を思い出したので席を外しますね」


「すぐに戻ってくるんで」


にっこり笑顔に本能的にヤバいものを感じ両手でそれぞれ二人の腕を掴んだのは長年の反射だった。


「おい、まさか……」


「駄目ですっ!!流石に一国の王子殿下たちに手を出すのは駄目ですぅ!」


片頬を引き攣らせるウルフに、ウルフがあえて濁した部分を声に出し涙目で二人を止めるヨハンくん。


「やだなぁ、ヨハンくん。大丈夫。()るのは最終手段だよ!まずは説得!」


「俺たちにだって常識ぐらいある」


絶対その常識僕らとズレてる!!やめてー!!









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― 新着の感想 ―
[一言] 番外編嬉しい!!!面白そうな予感しかしない。 何がどうして邪教の教祖様なんて話になったんだw
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