第8糞 怠けた精神と現実を変えるための時間
俺は今モスキートに挑もうとしていた。
『はい!いってきます!!』
そう言って俺は柵を超えた。
「マッツー、俺も闘う。」
「闘うたってお前初心者だろ?
そんなレベルあるわけないだろ!」
「まぁ、ないけど…」
『いや、あります!
キンタさんのレベル、99でカンストしてます!』
「「え?」」
「オレのレベル…」
「お前のレベル…」
「「カンストしてる!?」」
「「なんでカンストしてんだ?」」
『詳しいことはあとです!』
「お前自身も知らないのか?」
「……たぶんバグだと思う!」
「そんなバグ聞いた事ないけどな…」
だからスカーレットさんはオレをバトルに参加させたのか…
「…マッツー、下がっててくれ」
「あぁ」と言って、松谷は柵を超えて下がっていった。
「また柵を超えれば攻撃を受けないのか?」
「あぁ…てっ、後ろからモスキート来てるぞ!」
「!!、ま か せ ろーーー!」
「キィン!」と音をたてながら、剣を振った。
「よし!死んだか!?」
と、モスキートの方を見るとモスキートはまだ、生き生きとしていた。
「カンストしてても倒せないのか…!?
これじゃあまるで『ラスボス』と同じじゃねーか…!?」
「え!?ラスボス!?」
「…ワイルドドラゴンは闘いに集中しろ!!」
「…分かった!」
「はぁ、はぁ……」
あれから30分くらいモスキートの攻撃を避けカウンター…と、繰り返し攻撃をしてきたが、それでもモスキートは倒せなかった。
「ワイルドドラゴン!まだやれるか!?」
「……無理かも」
そのため、体力も底を突いていた。
「そうか…それなら俺に任せろ」
その時の松谷には強い『意志』を感じた。
「頑張れよ、マッツー…」
「おう!」
中学生の頃、学年1の運動音痴だったとは思えない程、松谷は貫禄のある身体を軽々と動かしていた。
『成長したなぁ〜松谷…』
そんなことを思いながらオレは長い時間ボッーと松谷を眺めていた。
『キンタさん、呑気なこと言ってる場合じゃないですよ!
マツヤさんの手助けをしないと…!』
『…そうですね、でもどうすれば…』
『キンタさん!「プロフィール」って言ってみてください!』
『…分かりました』
そして、オレは「プロフィール」と言った。
『うお!なんか画面出てきた!』
その画面にはオレのレベルやユーザー名が書かれていた。
所謂、プロフィール画面だった。
『そこに「使える技」って書いてある箇所ありません?』
『あります!』
『そこに 「the chamber of spirit and time 」って技あると思うんですけど…』
『はい!あります!
で、この技何なんですか?』
『その技は、その技で攻撃された敵の中で流れる時間が遅くなるんです!
ちなみにこの技めっちゃ強いんでカンストしてないと使えません!』
『説明よく分からなかったんですけど…
この技使えばモスキート倒せるんですよね?』
『はい、たぶん!
ほら!行ってきてください!!』
「はい!!!」
そう言って俺は柵を超えた。
その時、柵以外のなにかも越えられた気がした。
「マッツー、変わるよ」
「…ワイルドドラゴン!?
体力は大丈夫なのか?」
「あぁ、回復した」
「じゃ、オレは休んでるぞ!」
「おう!」
そして、松谷は柵の後ろへと下がっていった。
「よし、やるか!」
『キンタさん!モスキート来てます!速くさっきの技を!!』
『…』
『…どうしたんですか?』
『…どうやって技使うんですか?』
『やべ!教えてなかった!
……技名を叫んでください!!』
『えぇ!英語苦手なのに〜』
「ザ、ちぇ、ちゃんバー、オブ、スピリット、アンド、たいむーーー!!」
技名を叫んだあと、前を見るとモスキートの動きがとても遅くなっていた。
「モスキートが止まった!?」
「止まったんじゃない、流れる時間を遅くしたんだ。」
後ろから松谷の声がした。
『マツヤさん、カッケ〜〜』
自分が使った技でもないのにさも自分が使ったように言ってる奴のどこがかっこいいのか分からない。
「…マッツー!なんで来たんだ!?」
「お前が『精神と時の部屋』使ってくれたからな!」
「ん?オレが使ったのはなんか…長い英語の技だぞ!」
「あぁ、あれは英語で『精神と時の部屋』って言ってるだけだぞ!」
「このゲーム、パクリもしてんのか!
…どんだけ糞ゲーなんだ!?」
「まぁまぁまぁ、とりあえずお前がカンストしてくれてて良かったよ!
ありがとう!ワイルドドラゴン!!」
と言い松谷は抱きついてきた。
「ちょっ!暑苦しいって、マッツー」
中学の頃名残惜しい別れ方をしてしまったから松谷に感謝されるのはなんかめっちゃ嬉しかった。
「よし、じゃあモスキートフルボッコにしていくか!
精神と時の部屋も3分しか持たねーし!」
「えっ、オレが技使ってからもう1分くらい経ってんじゃねーか!」
「まぁ1分もあれば流石に倒せるよ!心の友!!」
『キンタさんめっちゃ照れてるじゃないですか!』
『だ、黙っててくださいよ!スカーレットさん!』
「そっ、そうだな!こっ心の友…」
「オラオラオラオラオラオラオラオラ…!」
オラたちは、必死にモスキートに向かい剣をぶん回したが、なかなか倒せないでいた。
『キンタさん、ここまで倒せないんじゃ激臭を使うしか…』
『また、さっきの技で動きを止めれば…』
『あの技は1日1回しか使えないんです!』
『!?でも、激臭を使ったら松谷とかこの村にいる全員が死んじゃうんじゃ…』
『マツヤさんとかは1回死んでも生き返れるけどキンタさんは生き返れないんですよ!』
確かに、この闘いは俺の命が懸かってる!
…もう覚悟を決めるしか………
『分かりました。でも最後にー・・』
『…そうですね!それは伝えた方がいいです!!』
「松谷…伝えたいことがある。」
「!!なんでオレの本名知ってー・・」
「松谷、卒業式の時は泣きそうだったから無視しちゃったんだ。
だから、ちょっと遅いけどあの時の返事…させてくれ……!」
『パカッ』俺はヘルメットを外した。
「松谷あぁー!!!今までありがとうおぉー!!!」
「えっ、き、金太?って、くさあぁっ!」
『『バタン』』
モスキートと松谷の倒れる音がした。
『なんかこの闘いで俺、変われた気がします!!!』
『えぇ、キンタさんは変われたと思いますよ体臭がキツくなったとことか…』
『オレが言ってるのはそういう変われたじゃないですよ!』
………自分のことが前より好きになれた気がした。
ブックマークと評価お願いします。