第7糞 金魚の糞では掴めないもの
俺は松谷から俺も知っている過去の話を聞いた。
『松谷さん、そんな風に思ってたんですね…』
『そうですね、いや〜やらかしたなぁ〜オレ』
『キンタさんが卒業式に返事しなかったのって確か…』
『…泣きそうになってたからですね
松谷のことみたら絶対泣いてたと思うんで…』
松谷がオレとの間に疎外感を感じてたっていってたが、俺自身も感じてはいた。
しかし、俺と別れてからの松谷の間には俺の知らない奴が俺の知らない会話をしていたからとてもじゃないが話し掛けずらかった。
俺としては一軍とも仲良くしたいし、松谷とも仲良くしたかったが、金魚の糞を嫌いな松谷とはそんな無謀なことは出来なかったんだろう…
「ごめんな、意味分からん話いきなりして…こんな話されてもなんとも言えないよな笑」
俺が考え事をしていて黙っていたため松谷がそんなことを言ってきた。
「あっ、あぁ…まぁ…そんな別れ方で金太って人、亡くなってしまったのはなんか名残り惜しいな…」
「…確かにな、卒業式よりも前に話せてたらとか、金魚の糞が嫌いとか言って『好き嫌い』なんかにこだわんなければよかったとか、今でも何回も考えちまう。
…まぁ金魚の糞を嫌いなことには変わりないけど」
「…そんな嫌いなんだ笑…」
松谷と俺の過去の話をしていたらあっという間にチョウカク村のボスの巣窟に着いた。
「こっ、こいつがボス…!?」
ボスは小さくて蚊のような虫だった。
「なっ、なんでデカいんだ!?」
「え!?あれでデカいのか…」
「あぁ、普段は現実の蚊と同じくらいなんだ
でも今回のは野球のボールくらいある!」
「デカいっていったって野球ボールくらいじゃあ…」
「まぁ確かに『バグ』が効けば大丈夫だが…
このボス…『モスキート』は小さすぎて攻撃する範囲がめっちゃ狭いんだ。…今回は違うがな。
その上、この蚊の攻撃を1回でもくらったら『一撃』で死ぬ!
しかし、モスキートも攻撃が1度でも当たれば倒せる!
要するにプレイヤーとボスのサドンデスってわけだ!」
「なんだよそれ!理不尽じゃねーか!?」
「あぁ、理不尽なのが『五感ブレイカー』だからな!」
『スカーレットさん…俺のいる世界ってヤバいっすね…』
『…なんかすいません』
「で、モスキートを倒すバクについてなんだが…」
松谷が言うには、モスキートの少し前にある柵を超えたらバトルが始まり、その瞬間にレベル5で取得できる『かまいたち』という殺傷力の高い風が、丁度モスキートに当たり倒せるらしい。
「この柵を超えた瞬間、闘いは始まる…!」
『松谷さんかっこいい〜!』
『いや、ダサいでしょ!』
「ワイルドドラゴン、お前はそこで待ってろ
オレが一瞬でけりをつける!!」
「…あぁ、分かった。」
柵を超えた瞬間松谷は剣を抜き、技を使った。
俺は野球ボールくらいのモスキートを『一撃』で倒せるとは思えなかった。
そして、オレの予想は正しく松谷が放った技でモスキートを倒すことは出来なかった。
「たっ、倒せなかった!?」
と、言っている松谷の近くの背後にはモスキートが迫っていた。
「マッツー、避けろ!!」
「っ!」
モスキートがデカいためか速度が遅く松谷は何とかしゃがみ、避けることが出来た。
そして、松谷は頭上にいるモスキートに向かい、剣を振るったがモスキートは倒せなかった。
「くそっ!なんで倒せねーんだ!!」
『キンタさん、加勢しないんですか?』
『いや、オレまだ始めたばっかなんで…』
『…キンタさん、そうやって諦めてばっかだから『一軍』になれないんですよ!
『意志』を持って行動しないと!!』
『…そうですね!!』
もし、今のうんこレベルのオレがこのバトルに参戦しても邪魔になるだけかもしれないが、参戦することに意味があるような気がした。
『ほら!ボッーとしてないで速く加勢してください!!』
『…はい!いってきます!!』
『意志』を持たないと言っては過言だが、そんな金魚の糞みたいな生き方もいい生き方だとは思う。
が、そんな生き方では掴めないものがある気がする…
でも、今の俺ならその掴めないものに手が届きそうな気がした。
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