第6糞 自分の意志
松谷の回想が思った以上に短かったので文字数も短くなりました。……松谷の責任です。
これはオレと金太が中3の頃の話。
この頃はまだ金太と、毎日一緒に帰るくらい相思相愛の仲だった。(お互いに仲良い人が他にいなかったというのもある。)
「で、そのクソゲーのおもろいとこなんだけど…かくかくしかじか…」
「あはは、なんだよそれ笑笑」
「…なぁ、金太はゲームやってないのにオレの話聞いてて楽しい?」
「うん!楽しいよ!松谷説明上手いから!!」
オレはその時金太との疎外感を感じていた。
オレはゲームが好きで、金太はアニメが好きでお互いに違う趣味があったからだ。
ある時から金太は変わっていった。
「で、そのゲームは…かくかくしかじか」
「あはは!…あっ、ちょっと待って!」
と言い、金太は一軍男子の方に行ってしまった。
「…おい、金太!」
と、こんな感じな一軍男子に引っ付いていく『金魚の糞』みたいになっていってしまった。
オレは金太になんで一軍男子の話に混ざってるのか聞いてみることにした。
「なんで、金太一軍についていくようになっちゃったんだ?」
「いやぁー、そろそろ高校だから高校デビューしようかなぁーて……別に松谷が嫌いになったとかではないよ!!」
「…そっか」
それから、オレと金太との心の距離は遠くなっていった。
それは淡い夏の出来事だった。
俺は自分の意志で行動しない『金魚の糞』が嫌いだ。
だからこそ、俺の唯一のダチである金太にはそんな奴になって欲しくなかった。
だから、金太を改心させたいと思ったが俺には人の生き方を変える勇気がなかった。
冬になり、ついに金太とは話さなくなりただの他人になってしまった。金太は金魚の糞になり、一方のオレはぼっちではなく、他のゲーム好きと仲良くなっていた。
その人たちとの会話は楽しいものであったが、金太との会話でしか得られないようなものがあった気がした。
それからも金太と話すことはないまま卒業式を迎えることになった。
卒業式を終え、みんなが写真を撮っている中、オレはゲーム仲間と相も変わらずくだらない話をしていた。
「ついに義務教育卒業かぁ〜」
「wwwwwなんだよその言い方www
はぁ…はやく家帰ってゲームやりてー」
「マッツー、マジでゲーム好きよなwww
確かに、卒業式はかったるいけども笑笑」
「まぁな笑」
「…松谷!一緒に写真撮らない?」
「…えっ」
談笑している中話し掛けてきたのは金太だった。
「せっかくだし最後に」
「別にいいけど…」
とりあえず写真を撮った。
「うん!よく撮れてる!……今までありがとう!また会ったらよろしくね!!」
俺はこの時「このまま終わっていいのか…?」と思った。このまま別れると一生会えない気がしたから。
「金太あぁ!!!今までありがとう!!!」
自分でもこんな声が出るのかというくらいの大声で感謝を伝えた。
本当はもっと細かく感謝を伝えたかったけど、頭がごちゃごちゃでありきたりな言葉しか出なかった。
でも、そんな言葉なのに沢山の感謝が詰まっていた気がする。
しかし、金太は返事をしないで一軍男子に引っ付いて行ってしまった。
俺はこの上ない屈辱を感じた。
これだから自分の意志がない金魚の糞は嫌いだ。
………金太を変えられなかった自分も嫌いだ。
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