第18糞 疑問
俺は茸澤の洗脳を解くため、圧倒的な力の差を見せつけて茸澤に勝つことを誓った。
そのために俺は浅川たちと修行をすることになった。
修行と言うだけあって俺は今、尾股とコロシアムの出口付近で戦っていた。
「いくぞー!金太ー!」
「ワッ、ワーーーーーッ!」
素早い動きで突撃してきた尾股だったがオレがビビっていたせいか、拳が当たる直前で尾股は止まった。
こんな一連の流れをかれこれ5回以上は繰り返していた。
そのため尾股には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「尾股ごめんな、何回もビビっちまって。」
「金太は戦うことが怖いのか?」
「う、うん。」
ここでお茶を濁した所で意味は無いと思い素直にそう言った。
「確かにこのゲームVRってだけあってリアルで怖いよな〜
…でも、そうやって心から『怖い』って思えるのは金太が人間、いや、『戦士』として成長出来ている証拠だよ。」
「えっ…」
俺はこれからこの世界にいる間、「戦いが怖い」という想いを抱きながら戦っていくことに怖がっていたのかもしれない。
尾股の言葉はそんな考えを促してくれる上に、ここ最近の心のわだかまりを解いてくれるような最高な言葉であった。
「だから大丈夫だって金太!ドンッと身構えて戦ってこうぜ!」
「………おう!」
それから俺たちはひたすらに戦った。
後から聞いた話なのだが、4日間続くコロシアムの3日目の相手は若林らしい。
それは浅川たちが、茸澤が「4日、4日」とブツブツ言っていたのを見ていたことからほぼほぼ確定らしい。
確かに俺も顔合わせの時、茸澤が「4日もあればイけるかなあ藁藁藁藁」と言っている姿を見ていた為、納得できた。
3日目の相手が若林と確定したことで「絶対に勝てるなぁー」と思い、心底安心した。
それと同時に4日目に『何か』を企んでいる茸澤と戦うことも確定したことも意味したため、それに対する不安も生まれた。
「いくぞー!金太ー!」
「なんとかなれーッ」
俺はなりふり構わず剣を振り回した。
戦闘経験を積んだ俺だが未だに「怖さ」を払拭できずにいた。
「おおっ!」
目を瞑りながら剣を振り回していたら、尾股の驚く声が聞こえてきた。
「やるなぁ〜金太」
そう言われ恐る恐る目を開けて見ると尾股のHP量が減っていた。
「……オレがやったのか?」
「あぁ、そうだよ!数時間でよくここまで成長したな!金太!!」
「………ただ目を瞑りながら剣を振り回してただけなんだけどなぁー…」
「目を瞑るっていう『舐めプ』をしながら俺にダメージ与えたのか!?……すげーな、金太。」
『……そうじゃないんだよなぁ〜』
その後も尾股との戦いは続き半日が経とうとする頃、浅川たちは現実の方で用事があるとのことでログアウトした。
『おつかれさまです、キンタさん』
『……おつかれさまです』
『私、今日のアサカワさんたちを見てて思ったことがあるんですけど…』
と、スカーレットさんは重い雰囲気を醸し出しながらそう言った。
『…何ですか?』
『一応現実ではキンタさん死んだことになってるんですよ…それなのにこのゲームにキンタさんがいる……この「矛盾」を2人が聞いてこないのおかしくないですか!?』
『た、確かに……』
その時スカーレットさんのその疑問が俺の中でもっと規模が大きい疑問へと変わった。
なんでスカーレットさんは「神様」なのに知らないことがあるんだ?
なんで浅川たちみたいな俺の身内の人がこうも奇跡的にこのゲームに集まっているんだ?
『五感ブレイカー』なんて糞ゲー本当に実在するのか?
……ていうか、今の『俺』は本当の『俺』なのか?
これからは不定期更新にしていこうと思います。
でも、なるべく週1で更新していくようにするつもりです。




