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【第四回】SSコン 〜給料〜

【SSコン:給料】 毎月の密かな楽しみ

給料日、それは自分が働いた対価をもらえる日。

今の職場になったのは五年前。妻が寝たきりになってしまってからだ。

最初は自分のしたかった営業職についていたが

妻が産んでくれた大切な5歳の愛娘のこともあり

在宅で歩合制のある仕事に転職したのだ。

きっと七夕の日に産まれた娘はもう寝ているだろう。

俺は箪笥の奥底から手帳を取り出すと万年筆で文字を書き始めた。

“7月 1日六月分の給料が入った。妻が起きたら三人で旅行に行きたい。

手始めに日帰りで行けそうな温泉街にでも行こうか。

個人的には子供が大きくなったらテーマパークやいろいろなところに連れて行ってあげたい

七日はあの子の誕生日だし奮発していろんなところに連れて行ってあげよう。“

書き終えると俺の財布の中から先月残った余りのお金を封筒に入れ挟む。

これは妻が入院し始めてからの楽しみである。

いつか、三人で楽しいことをするために

俺のお小遣いを切り詰めて毎月封筒に入れるのだ。

何がやりたいだとかここに行ってみたいだとか

三人でやりたいことが詰まった手帳ももう七代目だ。

きっとこれを見たら妻は泣いてしまうだろうな。

気が強いように見えるだけで彼女はとても繊細だから。

あと6日で娘の6歳の誕生日だ。来年はいよいよ小学生になる。

入学式までには起きてくれるだろうか。もう起きないんじゃないだろうか

と考えて涙が止まらなくなった。

年々涙腺が緩くなっている気がする。どうにかしなければ。

誕生日プレゼントは何がいいだろうか。

あの子は妻のこともあり我慢しがちだから

誕生日くらい好きなものを買ってあげたい。

こういう時妻がいれば女の子の好きなものがわかるのだろうか。

なんて考えたところで妻は寝たきりだ。頑張って考えようとスマホを取り出す。

ホーム画面には短冊の掛かった笹を背景に笑っている娘の写真が写っている。

毎年あの子のお願い事は決まっている。

『おかあさんとおとうさんがあえますように』一体誰に聞いたのやら

…もしかしたら我が娘は天才なのかもしれない。

疲れているのかそんな思考ばかりが頭を襲う。もう寝ようと思い布団に入る。

そんな俺に追い討ちをかけるように

寝たきりの妻が起きてただいまと言った夢を見た。

もしかしたら妻が起きてこの手帳達に

書いてあることを三人でできる日はそう遠くないのかもしれない。

なんて思ったのは俺だけの秘密にしておきたいものだ。

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