鳩と恋心
「修学旅行の時に告白するわ」
決意を固めた瞳で、笹川リョウコは、親友である米塚ハヅキを見つめた。結局最後の最後まで好きな人が誰かかを教えて貰えず、曖昧な回答しか出せずにいた。
親友としては、ハヅキは100%の力で協力したかったが故に終始もどかしい気持ちでいっぱいだった。
だがそれもようやっと終わる。彼女にひとつの区切りがつくのだ。これでリョウコの告白が成功でも失敗でも、彼女の後押しをするだけである。
ただまあ、小さい頃から仲の良かったリョウコが見知らぬ男に取られると思うと、少しさみしいものもある。またちょくちょく自分と遊んでくれればいいのだが、なんて思ったりもした。
そんな告白の決行日である修学旅行の日は、すぐさまやってきた。自由時間は二日目からで、一日目はクラスの団体行動だ。動くとしたら自由時間だろう、とハヅキは踏んでいた。
(やっぱり同じクラス? となるとサッカー部次期エースの……いやいや……)
現地のガイドさんに連れられて、各所を巡っているにもかかわらず、ハヅキはリョウコの想い人のことで頭がいっぱいだ。親友を奪い去るライバルというよりかは、もうここまでくると一種の好奇心――探究心、そして推理の気分だった。
リョウコは別段目立って可愛いというわけではないが、別け隔てなく接して誰かが困っていればすぐに手を差し伸べる。男女共々仲がいいためか、ハヅキの中では様々な候補が上がっていく。
怖い顔で考え込んでいれば、当の本人であるリョウコがハヅキの顔を覗き込んできた。
「つまんない?」
「え!? あ、ごめん。考え事してた」
「ふうん」
一度だけ、リョウコに「好きな人って誰なの?」と聞いたことがある。その時ははぐらかされてしまったが、今日結局告白をするのであれば、聞いてみるのもいいかもしれない。と、ハヅキは思った。
「……ねえ、好きな人って、だれ?」
「えー……、まぁいっか。修学旅行に告白するって言ったし」
くるり、とスカートを広げて大袈裟に振り向いたリョウコは、今までにハヅキが見たことのない顔をしていた。
ニンマリと笑って、まるで恋する少女のような――
「私の好きな人はね」
人差し指を元気よく向けた。
先は――ハヅキだった。
「ふぇ!?」
鳩が豆鉄砲を食ったようというのは、こういう事を言うのだろうか。