33.一方その頃、勇者ビビアたちは⑪ ~勇者たちは真の力をみせる~
33.一方その頃、勇者ビビアたちは⑪ ~勇者たちは真の力をみせる~
俺たちは今、エドコック大森林の中にいた。木々が鬱蒼と生い茂っており、視界も悪く、やたらと暑い場所である。
メンバーは、勇者である俺、デリア、エルガー、プララ、ローレライ。それからポーターの男のバシュータで合計6名だ。
「やれやれ、本当にあっちーな。さっさと奥地に住み着いたというワイバーンを始末して帰りてえもんだ」
俺は悪態を吐く。すると新しく仲間になったローレライがニコニコしながら言った。
「思いだしますねえ。私が冒険者として参加させて頂いた時も、そんな風に余裕を持たれながら冒険を進められていましたものね。 押し寄せて来る敵をばったばったとなぎ倒される、勇者様の聖剣の煌めきは今だに忘れられません」
キラキラとした瞳を向けてくるローレライに俺は大いに気を良くする。
「わーっはっはっは‼ そうだろう、そうだろう! ま、俺にかかれば敵の1000や2000、物の数ではないさ! 俺を倒したいなら、そうだな、それこそゲシュペント・ドラゴンでも連れてくるがいい!」
「すごい! さすがです!!」
「うむうむ、あーっはっはっはっは!」
俺は気分よく行軍する。そうだよ、これこそが勇者を正しく敬う一般人の反応なんだ。あのギルドの連中共は恐らく田舎者の馬鹿ばかりだったんだろう。アリアケのありもしない英雄譚に踊らされていたのがその証拠だ! 俺こそが英雄であり、魔王を倒してこの国の姫と結婚して王になる存在なんだ!
俺はかつての正しい気持ちを取り戻した。英雄としての雄大な気持ちをなぁ!
「でもでも、ワイバーンくらいでしたら、勇者様の出番はないかもしれませんね。デリア姉様やプララさんの必殺技で一撃ですよ! 勇者様が一番なのは当たり前ですけど、他の皆さんもこの大陸に敵う人たちはいないくらいの超一流冒険者なんですから。まあ、それくらい勇者パーティーに名を連ねているんだから、当たり前のことなのかもしれませんけど」
その言葉に、
「も、もちろんそうよ! ふ、ふふふ。ふふふふ! ええ、勇者様のお手を煩わせる必要もありませんわ! 私の拳で一撃よ!」
「えー、プララだって活躍したいなぁ。私がファイヤーボール撃てばそれですぐ済むんだしー」
「やれやれ。お前たち調子に乗るなよ。油断大敵だ。ま、どんな敵が来ても、この鋼の肉体を持つエルガー様が鉄壁の防御でダメージなど受けようもないのだがなぁ。わーはっはっはっはっはっははは!」
デリア、プララ、エルガーも大声で笑いだす。
ああ、そうさ。
「俺たち勇者パーティーは全員超一流の人間たちの集まりなんだ!」
「そうですわ。馬鹿にされるいわれなんて一つもなかったのですわ!」
「あたしたちは人生の勝ち組なんだ! 他の奴らはカスだよ!」
「俺たちをかがやかせるための、ま、舞台道具みたいなものだからな!」
そう言って笑う。
と、その時である。
ザッ! という音と共に茂みから≪マンティコア≫が1体出現する。人面・獅子の胴体・コウモリの翼・サソリの尾を持つ獣で、Cランクモンスターだ。
「楽勝だな! よし、戦闘開始だ!」
「任せて下さい!!」
「防御は任せろ」
「援護するよ!」
息はピッタリだな。
まずは勇者の俺が切りかかる。聖剣ではなく、普通の騎士たちが使う剣だが威力は十分だ。
「トロいんだよおおお!」
ずぶしゃ!!!
よっしゃ、見事胴体に命中! 即死だな!
「ぎゃわああああああああああああああああああああああ⁉」
が、即死だったはずのマンティコアが暴れ出し、サソリの尾を振り回した。
それが俺の腕をかする!
「な、なに⁉ ぐ、ぐああああああああ⁉ いでえええええ⁉ う、腕が! 腕がしびれるぅううあああ⁉」
「ちょ、ちょっと勇者!?」
「馬鹿! 何をやってる! 邪魔だ! どけ! そんなかすり傷程度で悲鳴を上げるな、軟弱者が‼」
「て、てめえ、誰に口をきいてやがるううう!」
「い、いいからどいてよ! ファイヤーボール!」
どおおおおおおおおおおおおおおん!!!
「グ、グオオオオ・・・グオオオオオォォォオォオォォ・・・・」
今度こそ致命傷だったらしく、徐々に咆哮の声は小さくなっていく。
ちっ、手間とらせやがって。くそ、それにしても痛えええ・・・・。毒が回ってやがる、くそが! くそが! くそが!
俺は内心で毒づく。
その時である。
「あ、あれ?」
ローレライが後衛から俺たちの方を見つめ、首を傾げていた。
「あれれ? もしかして、勇者様たち・・・苦戦されてましたか?」
ローレライが自分でも信じられないとばかりに口を開いた。
「い、いや・・・。いやいや!」
俺は腕の激痛を我慢しながら、脂汗を流しつつ、大したことないとばかりに笑顔を浮かべた。
「ちょ、ちょっと・・・。そう、ちょっと調子が悪かったんだ」
「そ、そうなんですか⁉」
ローレライは驚いたとばかりに目を見開き、
「調子が悪いようでしたら、一度街に戻られた方がいいかもしれませんね・・・うーん」
「は、ははは。いやいや、たまたま調子が悪かっただけだから。今度は大丈夫だ!」
「は、はぁ。そうなんですね。わ、分かりました」
どこか必死な様子の俺の気配に怯えたのか、言葉少なにローレライは頷いた。と、とにかく納得はしたみたいだな。
しかし、
「あの、勇者ごめん・・・」
プララが口を開いた。
「私、実はちょっと調子が悪くてさ・・・」
そう言うと腹を抑えて、
「ちょっと、お腹が痛くて。ごめんだけど、帰って、いいかな?」
ひきつった表情でそう言った。
「嫌だ! まだ死にたくない! また殺されかけるのは嫌だぁ!」
プララの絶叫が前方より響く。
「縁起でもないこと言うな! このクソ魔法使いが!」
「そうですわ! 戦いを前にして仮病で逃げ出そうとする仲間には≪先頭≫こそがお似合いです!」
「その通りだ。俺もこんなことはしたくない。だが、おまえの腐った性根を叩きなおすために、あえて先頭をお前にしているんだぞ」
俺の言葉に、メンバーも同意する。
「何言ってんだよ! 仲間を置いて逃げだしたのはアンタたちじゃん!」
プララは叫ぶように言った。
「あ、あのう・・・」
と、ローレライがおずおずと手を挙げた。
「逃げたって、一体何の話なんですか・・・?」
「な、何でもないわ!」
「ああ。こっちの話だ!」
デリアとエルガーが力強く言う。
「???????????」
ローレライはただただ怪訝な表情を浮かべたのであった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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