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32.一方その頃、勇者ビビアたちは⑩ ~勇者はかつての仲間と再会する~

32.一方その頃、勇者ビビアたちは⑩ ~勇者はかつての仲間と再会する~






「ね、ねえ。やっぱりアリアケに謝ろうよ」


プララがそんなことを言い出したのである。


「何を・・・何を馬鹿なことを言ってやがる! プララ‼ よりにもよって、あ、謝るだとぅ!?」


俺は叫ぶように言う。


「そんな無様な真似が許されるわけないでしょう⁉ 正気なの、プララ! そもそも魔の洞窟で役立たずだったあなたのせいで、こうなってるのよ⁉」


「そうだぞプララ。頭でも打ったのではないのか? 魔法だけでなく、頭まで悪くなっては魔法使い失格だぞ!」


デリア、エルガーも目を剥いて罵倒した。当然だな!


「恥を知れ! このヘボ魔法使いが!」


俺たちは当然の抗議をする。


普段であれば、俺たちの正論にプララはすぐに納得する。


だが、


「私の実力は確かにみんなが言う通り大したことがないのかもしれない。でも、それとこれとは別じゃん⁉  じゃあ聞くけど、モンスターに最初にやられたのはどこの勇者!? 盾役を果たせなかったのはどこのでくの坊!? それに攻撃が通じない拳闘士はどこのどいつなのさ! それって全部、今まではアリアケの支援があったから、やってこれただけだったんじゃないの⁉」


「なっ⁉」


「そ、それは偶々よっ⁉」


「そっ、そうだ! 油断していただけだっ!」


だがプララは更に言いつのる。


「じゃあ、そもそもの話! 光源を十分に出せなかったのは悪かったけどさ、それならそれで、そういう条件にあった冒険の仕方をするのがリーダーの役目なんじゃないの⁉ それなのに闇雲に動き回ってモンスターを呼び寄せてさ! アリアケだったらそんな下手な冒険の仕方はしなかったよ! 彼だったらどんな条件下でも、それにあわせた戦略を立ててナビゲートしてた! 気配察知に注力して、移動にも細心の注意を払ったに違いないよ!」


「ぐ、ぐぐぐっ・・・」


「何より、アンタらやられそうになったら私の回復アイテムを奪って逃げたじゃん! アリアケは口うるさい奴だったけどさ、それは彼なりに正しいことを示してくれてたんだよ! 彼がいてくれたら、あんな道理に外れことは絶対に許さなかった! だから、ねえ、謝ろうよ! 頭を下げて戻って来てもらおうよう‼ やっぱり私たちには彼の力が絶対にひつよ・・・」


「い、いい加減にしろ!」


俺は叫ぶ。勇者としてのプライドをズタズタにされた俺は顔を真っ赤にした。


「買いかぶりもいい加減にしろ。あいつにそんな力があるわけがないだろう! ユニークスキルもないあいつにそんなことがっ・・・! あるわけないんだ! 口から出まかせだ! 俺たちは実力でのしあがったんだ! 俺こそが、神に愛されてるから聖剣に選ばれた男でっ・・・! だから俺があいつより劣っているわけがねえ!」


「そ、そうよ! あんなの後ろから偉そうなこと言ってるだけじゃない! 私がこのパーティーの支柱なのよ! 勇者を支えているのは私なんだから!」


「その通りだ。俺こそがこのパーティーの盾なんだ! あんなひ弱な男に助けられていたなんて・・・信じられるか!」


俺たちは激しくプララを罵倒した。


「おいおい、あいつら大丈夫なのかよ・・・」


「完全に仲間割れしてやがる」


「ていうかアイテム強奪って・・・ただの犯罪者じゃねえか」


「しかもあいつら全員、感情論しか言ってねえな。冒険者のイロハも学べてねえんじゃねえか?」


ははは、という嘲笑の声、はぁ、という呆れの声が耳に響く。


そして、


「アリアケさんと一緒にメディスンの町で戦った時は、日頃いがみあってる100名の冒険者たちが一致団結したもんだが・・・。やはりこの勇者はだめだな。4人ですらまとまっちゃいねえ」


その言葉に、俺は余りの悔しさに歯噛みする


奥歯がくだけるほどに強くギリギリと歯噛みした。


血の涙すら流れそうだ。


この世界で最も優れた、聖剣に選ばれた勇者の俺が、こんな冒険者ギルドで笑いものにされていいはずがない。それも、あんなヘボポーターのアリアケと比較される形でっ・・・!


(俺の実力を知らしめなくてはだめだ)


ふとそんな考えが頭をよぎる。


(ここにいる全員を亡き者にすれば、俺の実力を王国も認めざるを得ないよな・・・)


そんなことを一瞬考え、実際に剣へと手が伸び始めた・・・その時である。


「はわわ、勇者様たちじゃないですか~」


ポヤンとした、だがよく通る声がギルドへとこだました。








あまりに場違いな声に、ギルドは一瞬静寂に包まれる。だが、その声を発した人間は特に気にしていないようだ。独自のポヤヤンとした空気のまま、ぱたぱたと勇者たち一行に近づいて来た。


「き、君は・・・確か・・・ローレライ、だったか?」


「は、はい、そうです! 覚えて頂いていて光栄です!」


そう言って深く頭を下げた。


少女の名はローレライ。ふわふわとした緑の髪を伸ばした15歳くらいの少女だ。


あどけない、駆け出しといった風情だが、前回、たまたま一緒に冒険したことがあり、見た目に関わらず、それなりの高レベル回復術士であった。


「ご無沙汰をしております。ご挨拶が遅れてすみませんでした。まさか、また勇者様たちとお会いできるなんて、本当に光栄です!」


「そ、そうか?」


「はい!」


ローレライは何らてらいなく頷いた。


「前回の冒険で色んな奇跡を見せてもらってから、毎晩のようにその光景を思い出します。もう数年も前ですのに。竜を一撃で切り伏せた勇者様の聖剣一刀撃(ホーリー・スラッシュ)、デリア姉様が襲い来るオーガたちを軒並み叩きのめした殺戮的舞踏、エルガー様があらゆる敵の攻撃をその鋼の肉体で全て跳ね返した鉄壁防御! そしてプララさんの巧みで疲れを知らぬ支援魔法に攻撃魔法! 勇者パーティーの皆さんの武勇を片時も忘れたことはありませんでした! ・・・あれ、でもそう言えばもうお一人、アリアケ様がいらっしゃいませんね?」


俺は彼女の言葉を聞いて・・・最後のアリアケの部分だけは無視して口を開く。


「ふっふふふ。そうかそうか! いや、その通りだ。フゥ。いや、俺としたことが一度の冒険の失敗を余りに引きずりすぎていたな。俺にはこれまで王国を救い、民草を救済して来たと言う数々の実績があるんだ。そして、俺の実力は助けられた皆が一番よく知っている」


その言葉にローレライはニコリとして、


「その通りです。それで・・・私はしばらく別の冒険に出ていて、今日久しぶりに戻って来て、勇者様の回復術士の募集を見かけたのですが、まだ採用枠は余っていますか?」


「ああ、現在数十人から選考しようとしていたところだったが、ローレライ、君とパーティーを組むとしよう」


「え? い、いいんですか? いきなりなのに、私なんかで? それに数十人の応募があったなら、もっと実力のある冒険者さんたちがたくさん・・・」


「一度パーティーを組んだことがある君が適任だろう。それに君の実力は知っているしな。お互いの信頼関係があることが重要だ」


「そうなんですね。わぁ! 嬉しいです! またご一緒できるなんて! よろしくお願いします!」


ローレライはニコリと微笑んで言った。


やれやれと俺は椅子にゆったりともたれかかる。


「ふ、これが本当の勇者の人気というものだ。見る者が見ればちゃんと俺の実力は評価されているってことさ」


「私も少し焦っていましたわ。たかだか一度の冒険の失敗で。ふふふ、あの失敗のおかげで私たちは更なる飛躍をとげる良い経験をしたのでしょう!」


「そうだな。勝って兜の緒を締めよ。今まで勝利の連続だった。だが、実力があっても運悪くたまには失敗だってある。だからこそ冒険は面白いんだ。そうだろう、プララ?」


エルガーがプララに水を向けた。


すると、プララもローレライの言葉に、かつての栄光を思いだしたようだ。


「そ、そうだよね・・・。私たちはみんなで沢山の冒険を経験して突破してきたんだ。ご、ごめんね、みんな! なんだかわたしナーバスになってたみたい! もう大丈夫! ってか、よく考えたらDランククエストなんか楽勝っしょ!」


「ははは! だから最初からそう言ってるじゃない!」


「さあ、出発しましょう!」


「そうだな、ポーターのバシュータを呼んで早速出発だ!」


「「「「おう!!!!」」」」


こうして俺たちは成功が約束された新たなDランククエストへ意気揚々と出発したのである。


その冒険先は≪エドコック大森林≫。


そこに住み着いたワイバーンの討伐がその任務であった。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 神が主人公に頼まなければ社会にもまれて正義感のある勇者に成長したんかな
[一言] ギブアップ。斬新な切り口と思ったけど、ただの世の中にありふれ過ぎてるこんなアホおるわけないやろストーリーだった。書籍も3巻まで出てコミカライズまでされているわけですから通りすがりの感想なんて…
[一言] ワイバーンに討伐される任務?
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