26.エルフ族を滅亡の危機から救う話
続編となります。宜しくお願いします。
全体的に修正しました。(8/15)
少しは読みやすくなったかな。
26.エルフ族を滅亡の危機から救う話
「旦那様、ここがエルフが住むと言う≪肥沃の森≫なのじゃな。広大な森じゃのう」
竜の末姫コレットが楽しそうに言った。
俺は頷く。
俺たちはオルデンに行くため≪肥沃の大森林≫を通過しているところだった。
「このまま勇者パーティーを追放された俺を、エルフたちが放っておいてくれればいいがな。彼らはかつて先代勇者と盟約を結び、この道を人間に開放した。だから勇者パーティーを追放された俺をすんなりと通してくれるかは微妙なところだ」
俺はそう呟きつつ、
「何もなくても、森を抜けるまでに1週間はかかるだろうな。・・・それにしても、思ったよりも魔素が強いな・・・。あまり魔素がたまると様々なものを呼び寄せるが・・・管理はされていないのか?」
「エルフが多数住んでおるのじゃから、森は大切に管理されておるのではないのか?」
コレットがもっともな疑問を口にするが、
「大切にする、というのも考え方が色々あるさ。例えば、間違った過去の知識をそのまま頑なに踏襲するというのも、ある意味『伝統を大切にする』という風に言えたりするからなぁ」
「やはり旦那様の言葉には含蓄があるのう! 勉強になるわい!」
「相変わらず大げさだな」
「なんと!? わし的にはだいぶ抑え目にしておるから許すのじゃ!」
と、そんな世間話をしながら馬車を走らせていた、その時である。
「そこの馬車、止まれ!」
高圧的な声が森に響いた。
まさに検問といった風にエルフが複数名、道をふさぐようにして立っている。
(やはり来たか)
思った以上にピリピリとした雰囲気を感じる。
(それにしても、こいつらひどく憔悴しているな?)
エルフたちはひどく疲弊している様子であった。目には隈ができ、立っているだけでフラフラといった風に。俺が通るだけではなく、他にも何かあったのかもしれない。
「どうかしたのか?」
俺は御者台から、彼らを見下ろして言う。
長耳族と言われる彼らは、その名の通りとがった耳を持ち、また非常に美しい容姿をしていることで有名だ。
ただ、頭が固いのとプライドが高すぎるきらいがあるため、あまり他種族から好かれてはいない。
一方で、俺は彼らが世界に必要な人種だと判断していた。
森で生きる彼らの存在がなければ、自然と人間界のバランスは崩れるだろう。そう言う意味で、世界を見渡す俺のような上位の存在としては、エルフの存在価値を認めているのである。
俺レベルの人間になると好き嫌いといった個人の好悪とは、一線を画した考え方にならざるを得ないのだ。
「お前は、アリアケ=ミハマ。間違いないな!」
怒声で誰何される。
「ああ、そうだが?」
俺は素直にうなづいた。
すると、
「大人しくしろ! この災厄の種め! お前の様な災いの原因を通すわけには行かぬ! いいや、ここで捕縛する。これはエルフ族全員の意志だ!」
そう叫ぶと、周りのエルフたちも一斉にこちらに弓矢を向けた。
その目はまるでゴミを見るように。
「旦那様、こいつらわしの旦那様に弓を引こうとしておるのじゃ。じゃから、愛の炎で焼き払って良いかの?」
「すぐに毎回焼き払おうとするな」
それになんだ愛の炎って。
とにかく「待て待て」と竜の姫を止めた。
いきなり弓を向けてくる蛮族めいた者たちだが、彼ら一般人が愚かなのは今に始まったことではないのだ。
愚か者は焼くのではなく、愚かゆえに導いてやらなくてはならない。学ぶ機会を与えねばならない。
「何をごちゃごちゃと言っている」
数名が一斉に御者台より引きずりおろそうとしてくるが。
「やれやれ」
「なにっ⁉」「な、なんて力だ!」「くそ、本当にこれが追放された無能者の力なのかっ」
俺が≪腕力増強≫をして腕を振るい、その風圧で全員が吹っ飛んでしりもちをつき、泥だらけになった。
何をこれくらいで驚いているのやら。実力差は歴然だ。だがそれを見抜けないのもまた、彼らがただの無害な一般人である証か。
俺は咳払いするとエルフたちに言う。
「お前たちが何に怒っているのか、分からんが、少しは事情を説明してみてはどうだ? エルフは蛮族ではなかったように記憶しているがどうだ? そうではないなら、弁明の機会を与えてやるから、少しは知能ある生き物らしく、事情を説明してみろ」
俺はそう言って彼らに釈明の機会を与えようとした。
しかし、
「何が弁明だ! この勇者パーティーを追放された≪災厄の種≫め! 貴様のせいで我が森は原因不明の≪枯死≫が発生しているのだぞ!」
「うむ! 勇者パーティーに災いをもたらしたことが、盟約関係にある我々へ影響をもたらしたのだ!」
そうだ、そうだ! と更に激高した。
一方の俺は冷静に彼らの言葉をまとめる。
≪枯死≫か。
なるほど要するに、
「≪肥沃の森≫の木々が枯れ始めているわけか・・・。だとすれば、森の結界も弱まりモンスターも現れ始めているかもしれんな。そして、その原因は勇者パーティーを追放された俺にあるのではないか、と、そういうわけか」
「どうして勇者パーティーを追放された旦那様が原因になるのじゃ?」
「先代との盟約に、勇者はこの森を庇護することをうたっているんだ。つまり、勇者パーティーを追放された俺は、勇者パーティーの力を弱め、ひいてはこの森に災いをもたらした、ということだろう」
「古い伝統を≪大切≫にしておるんじゃなあ。先代の話なんじゃろ、それって・・・」
呆れたような、皮肉をこめたコレットの言葉に、俺は「そうだなぁ」と頷いた。
「・・・負けぬ。絶対にお前たちを拘束する! このような災厄をもらたした大罪、どのように裁くかは我らがエルフの長が決めるのだ! 一族の命運をかけて!」
そう言って、エルフたちがにじり寄って来た。
困ったなあ、と俺は頭をかく。
蹴散らすことは簡単だが、こいつらも大真面目なので、どう対応しようか迷ったのだ。
こいつらは馬鹿で頑迷で固陋だが、別に悪人とかではない。
そう言う意味で、こういう一般人たちを導く役割を担う俺としては、対応が非常に悩ましいのである。
だが、
「うーん、やっぱりわしの命より大事な旦那様に仇なそうとする存在は、誰であろうと許してはおけぬな」
コレットの口からきしゃーと炎が漏れていた。
「いや、ちょっと待てコレット・・・。こんがり焼くのは禁止で」
俺がそう言いかけた時である。
「お、お待ちください! 大賢者アリアケ様! コレット様!」
そう言いながら、ずざざっと、俺たちとエルフの間に割り込んで来たのは、やはりエルフの一人の少女であった。
見た目の歳は15、6くらいだろうか。
美しい金色の髪を長く伸ばした、どこか儚い雰囲気のする少女である。
だがどこか気品があった。
土下座をしながら、こちらに顔を向けて訴えた。
「同胞の無礼。お許しください。この者たちは古い伝統に縛られた哀れな者たち。なにとぞご慈悲を頂きたく」
そう言って改めて頭を下げたのである。
「なっ⁉ セラ姫! 何という事をおっしゃるのです!」
「そうですぞ! それに、なぜこんな痴れ者に頭を下げるなど!」
「言葉を慎みなさい。今大賢者様とコレット様が少し力を出せば、あなた方など一瞬で消し炭になっていましたよ。力の差は歴然なのです。そんなことも分からないのですか?」
「馬鹿な! 勇者パーティーを追放された役立たずの男にそのような力があるわけがっ・・・」
「・・・大賢者様とコレット様がメディスンの町を1000のモンスターより救った話を知らないのですか?」
「メディスンを? あの人間どもの町のことでしょうか? ふん、我ら誇り高きエルフ族は外界のことなど知る必要などないのです! この森が我らの故郷。そして最大の防衛拠点なのです!それにその話はどうせ嘘でありましょう! 1000などと‼ セラ姫以外誰も信じますまいなぁ!」
「耳をふさぎ、目をふさぎ・・・。何より、その肝心の森が立ち行かなくなって困っているのではなかったのですか、我々は? は~・・・」
セラと名乗った少女は軽く目をつむる。
頭が痛いとばかりに。
「ともかく、この場は私に任せなさい。これはエルフ長の妹として、あなたたちの姫としての言葉です」
「む、しかし我らはエルフ長の指示で・・・」
「いいから去りなさい。・・・大丈夫です。兄には私から話をしますので。あなたたちが咎められることはありませんよ」
「そこまでセラ様がおっしゃるのでしたら・・・ですが、きっと後悔なされますぞ!」
言い捨てて、検問のエルフたちは去って行った。
「はぁ・・・」
セラはもう一度ため息をついてから、こちらに向き直る。
そして改めて深く頭を下げ、
「大賢者アリアケ様。そしてコレット様。この度は同胞が申し訳ありませんでした。無礼をお許しください」
そう言ってから、俺のほうをすがるような目で見て、
「そして、大変身勝手なお願いですが、どうか私たちエルフ族を滅亡よりお助けください」
彼女はそう言って、大きな瞳から一筋涙をこぼした。
「この≪肥沃の森≫を癒し、エルフ族をお救いください。頼れるのはこの世界で最も偉大な大賢者たるアリアケ様しかいないのです」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。














