226.冥王ナイア
226.冥王ナイア
「ここが滅亡種人類王国クルーシュチャか」
「凄まじい壁の高さだな! へ、へへへ。これならあのレッドドラゴンたちだっておいそれと入ってはこれねえだろう。ひへ、ひへへ」
「そうでもない。というか、普通に入ってくる。バリスタ隊や対空迎撃部隊が対応はするがな」
「ひいいいいいいい! 戻りたい! 現代に戻ってゆっくり眠りてえよう!」
「アリアケとやら。このビビアというのは本当に連れて来て良かったのか? 明らかにお前の足手まといにしか思えないんだが?」
俺はその言葉に微笑みつつ、
「俺に追いつこうと必死にしがみついてくる弟子を振りほどいたりはしないさ。それに不出来な子ほど可愛いという言葉もある」
「ふむ、なるほど、出来の悪い子供か! なるほど、それなら理解できる。お前は優しいのだな、アリアケ」
「ざっけんな! 誰がてめえの弟子だああああああああああ!」
ビビアがたちまち激高する。フェンリルは眉根をしかめて、
「とはいえ、こうもうるさいとかなわんな。少し黙らせるか」
「ひ! ひぃ!? お、お助けをぉぉおおおお!?」
フェンリルにトラウマのあるビビアはたちまち腰を抜かして後ずさる。
「なんでこいつは私に対してこんなに及び腰なんだ? 何かしたか?」
「過去でお前と似た相手に散々やられてな」
「なるほど、戦いの古傷か。名誉の負傷といったところか。だが、それに怯えてばかりでは前には進めんぞ、下級勇者ビビア」
「ぐぎ! ぐぎぎぎぎぎいいいいい!」
実際は名誉の負傷どころか、呪いの洞窟でのクエストの失敗によって、勇者パーティーの評判は以後下降の一途をたどるのだが、それは過去のフェンリルには関係のないことだろう。
そんなよもやま話をしていると、俺たちはフェンリルに案内されるまま目的地に着いた。
「滅亡種人類王国クルーシュチャにおける中心。冥王ナイア様のいらっしゃる宮殿だ。粗相のないようにな、特に下級勇者よ。漏らしたりしたら首を刎ねるぞ」
「さすがに漏らしたりしねえ!」
よく胃の中のものはぶちまけているがなぁ。
だが言わぬが華だ。入城禁止にされてもら困る。
そして、玉座の間へと通された。神殿づくりの宮殿の中は、官吏たちが忙しく走り回っているが、玉座の間でさえ、官吏たちが行列を作っていた。滅亡に瀕しているのだから当然だな。
と、その行列の合間から、ひょっこりと首を出した幼い容姿の少女姿が見えた。
こちらを視認するや、
「おお、新たな敵かああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!! ついに宮殿の中にまで攻め入ってきたか、イヴどもめえええええええええええええ!!!!」
そう言って、官吏を飛び越えるようにして大きく跳躍しながら、こちらへ深紅の大鎌を振りかざしてくる。
だが、深紅に染まるはその大鎌だけではない。
髪の毛や瞳の色も深紅に染まっている。
美しき少女であるにもかかわらず、ルビー色の髪を翻し、空を舞う姿は蝙蝠のようだ。
ギイイイイイイイイイイイイイイン!
鋭い刃が俺に直撃する音が、宮殿に伝搬した。
「≪物理無効≫。あんたが冥王ナイアか。俺は下級勇者パーティーの……まぁポーターのアリアケだ。こっちは下級勇者ビビア」
「……」
「ふむ、丁寧な挨拶痛み入る。我は冥王メイアじゃ。我が一撃を防ぐとは邪神の使いのくせに天晴である! 褒めてつかわす! ゆえに、死ねえええええええええええええええええええええ!!!!」
ギチギチギチギチギチギチ!!!!!!
深紅の鎌から炎が噴き出し、俺の物理無効を貫通した。
「≪回数付き回避≫。さっきイヴがどうと叫んでいたが、俺はそのイヴとか言う人外ではない」
「なんじゃと!? だが、それをどうやって証明する! そっちのビビアと言う男は、さっきから泡を吹いて失禁しているではないか!」
「すまない、ナイア女王。失禁はするなと言っていたんだが……」
「うむ! 玉座の間で失禁をするとは前代未聞。勇者が何かは知らんが、失禁勇者とやらが味方とは到底思えぬ!」
「下級勇者なんだが、まぁ、そうだよなぁ」
いきなり現れた正体不明の男が、よりにもよって玉座の間で失禁すれば、敵味方問わず斬首刑だろう。
味方だと説得しても意味がない。
失禁だけはしないと思っていたが、俺の認識が間違いだったようだ。まだまだ俺もビビアへの評価が甘い。
と、そんな会話やら猛省やらをしていると、フェンリルが口を開いた。
「すみません、ナイア様。この者たちは獣人たちの村を救うのを手伝ってくれました。正体はよく分かってはいないのですが、以前ナイア様が正体不明の旅人をもし見つけたら連れて来いと言っていたので案内したのですが……」
「うむ! 星見がそう言っていたからな! 『7人の英雄』が現れると! そして人類滅亡を回避する重要なキーパーソンっぽい! とのことなのでな! であるが!」
ドン!!! と鎌を地面に置くが、それだけで、レンガの床がくだけた。
「まじでこやつがそうなんじゃろうか? 我が星見を疑いたくはないが、ちょっと冥王的に信じたくないみたいな感じになってるぞ!」
「はぁ、そうですね。ただ、こちらのアリアケ殿は素晴らしい力を持っていますので問題ないかと。そのビビアとかいう男はアリアケ殿の弟子だそうです」
「そういうことか。だが弟子は選んだ方がいいぞ、アリアケよ!」
「お言葉痛み入ります。女王陛下」
「ナイアで良い! うむ、だいたい分かったし、我が鎌を受け止めたのだから、お主について文句はない! ビビアについては保留にしておくが、とりあえず雑巾で床を拭かせたい」
「ええ、自分のことは自分でするように教えているので大丈夫だと思います、ナイア女王」
「うむ! なら良し! でだ、アリアケよ。お主らには積もる話もあるし、そなたらも色々話を聞きたいであろう。だが、見ての通り人類は滅亡しかけておってな、ちょっと我の手が止まると、人類の息の根が止まるのだ。しばし待てるか?」
「もちろんです」
「ちなみに、そなたも王の風格があるが、あっているか?」
「いちおう王もやっていますが、俺のこともアリアケでいいですよ」
「そうか、アリアケ王よ。だが、我は余り他人行儀なのは好まぬ! ということで好き勝手にアリアケと呼ぶ! 大儀であった! ちょっと待っててくれ! フェンリルも大儀であった! 帰って来て早々ですまぬが、アリアケたちをもてなしておいてくれるぬか? ああ、それにしても、あそこの獣人の村もそろそろ厳しそうよな。腐ったドラゴンがああも跋扈していてはなあ!」
腐ったドラゴン?
レッドドラゴンではなかったのか?
と、そんなことを考えているうちに、既に冥王ナイアは「では、またあとでな! アリアケ!」と言いながら、玉座へと戻って行った。行列をつくる官吏たちは2倍に増えている。
「とりあえず泊まる場所を確保する必要があるだろう。ナイア様がおっしゃったように細かい話はまた後でしよう。長旅だったのだろう? 疲れをいやすが良い」
「いや、その前に」
「?」
俺は彼女の言葉をさえぎって言った。
「ビビアを起こして床を掃除させてから行くとしよう」
「……そうだったな。まったく、面倒だな。頭からかぶりついてやろうか、ブツブツ」
フェンリルの面倒そうなぼやきが、俺の耳朶を打ったのだった。
こうして下級勇者パーティーは、ひとまず滅亡種人類王国『クルーシュチャ』の冥王ナイア女王と、無事謁見をすることが出来たのだった。
【小説・コミック情報】
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CV:井上 喜久子さん・保志 総一朗さん
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