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209.亜種霊長破壊神ルギ

209.亜種霊長破壊神ルギ





~アリアケ視点~


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!


ひときわ大きな騒音がこちらまで響いた後、静かになった。


「どうやら、神と神の戦いは終わったらしいな」


「そのようですね。この体に…。僕の器にワイズ神様の神核が流れ込んできています。これでアリアケ先生や皆さんも終わりですね」


「ど、どいうことだよ!」


フィネが叫ぶ。


ルギが微笑みながら答えた。


「簡単ですよ。神への進化には幾つも条件があります。神に認められるとか、そもそもその体に適正があるのか。でも一番重要なのは神核が生成されるかどうか。ワイズ神様から頂いた神の水(ソーマ)だけでは半神程度が限界でした。完全体になるには、やはり既にある核を利用するのが一番早かったというわけです」


「ワイズ神を利用したってのか!?」


「そうです」


ルギは昏い表情で笑うが、俺は首を振り、


「それは違う」


と否定した。


「違いません」


「違うな。お前たちは単なる共犯関係だ。ワイズ神がどういう悩みを持っていたのかは想像するしかないが、クソ真面目だからな、あれは。大方、邪神に対応できず、あまつさえその後救済を行なうほどの力さえないことを悔いたんだろう」


「……てことは、ルギはワイズ神の後継者?」


フィネが言った。だが、意外な人物がその言葉を否定する。


「いいえ、それも違いますね」


「ピノ?」


そう。それは、これまでほとんど沈黙を貫いていたピノであった。


彼女は猫耳を動かしながら言う。


「あのワイズ・・・・・・は人間種族を至上とする新たなる統治が、星の生命体全体の強さを保つことにつながると考えた狭隘(きょうあい)なる思考の偏在神です。ゆえに、ルギはワイズ神の神性すべてを継承する者ではありません」


「あのう、ちょっといいかしら。話の腰の骨を折って悪いんだけどいい加減聞かせて頂戴」


「あんた何者!?」


「あら、ソラ、私が聞こうと思ったのに」


キュールネーとソラの疑問に、ピノは、いつもとは違う凛々しい表情を見せながら言った。


「すみません、絶対に隠す必要がありましたもので、普段意識も半分遮蔽(しゃへい)していました。改めて挨拶させてください。私の名はワイズ神。人のみを至上とする偏在神より分離した、もう一人のピノ・ワイズ(わたし)です」


「「「は?????」」」


生徒たちの唖然とした声がはもった。





「あなたがワイズ神様、なの?」


キュールネーが信じられないとばかりに呟く。


「正確にはその一側面。全ての種族が協力し、上下の境なく仲間となり、共に星の未来を作ることを志向したピノ《偏在神》とでも言いましょうか。今まで通り、ピノで結構です」


ピノ・ワイズ神はそう答えた。


ルギは昏い表情のまま、


「なるほど、そうだったんですね。それはワイズ神様も教えてはくれませんでした。まさか二人に別れているなんて……」


「とすりゃあ、話は簡単だ! 半分になっちまった神様の神核を引き継いだって大した強さにはなんねーだろ!」


フィネが快哉を叫ぶが、


「そう簡単なわけないじゃろ? なぁ、旦那様?」


「もちろんだ」


俺も肩をすくめつつ肯定した。


「ピノには神核がない。つまり、基本的には神核はあっちのワイズ神が持っていたというわけだ。そして、それは今、ルギへと流れ込んでいる」


「なんだよ、結局、不利ってわけか!?」


フィネが失望した表情を浮かべるが、


「いやいや、そうではなくてのう、フィネよ。今、ここにいるから分からぬかもしれぬが、これは神話の一くさりなのよ」


「はい?」


フィネが首を傾げた。


「つまりこういうことですよ、フィネさん」


ラッカライが先生らしい説明口調で言った。


「この戦いはですね、後に神話で語られる聖戦の最後なんです。何の最後かと言えば、この星がこの後数百年、数千年に渡って、どう繁栄するのかを決める戦いが、ここで決まるんですよ」


「えっ? えっ? えっ?」


「ルギさんは人が力を持ち、世界を支配する統治機構を肯定する神。一方で、私たちは様々な種族が力を合わせ、協力して、不合理で非効率かもしれませんが、その茨の道を行くヒトの代表。これは世界を『霊長《人》』か『亜種霊長ヒト』のどちらに委ねるかと言う神話に他ならないんです」


「い、いつの間にそんなことに!?」


「先生とかかわった時点じゃないでしょうか。ねえ、先生?」


「いやいや。俺を原因みたいに言うんじゃない」


「いや、間違いなく、先生がこの神話の主役でしょうに」


俺は聞こえないフリをしながら口を開いた。


「聞いての通りだ。これは神話の戦い。星の未来を決する戦いだ。お前にその覚悟はあるか、ルギ?」


その問いに対して、ルギは嗤う。


「あははははははははは!」


たちまち、彼の体から黒い影が伸び始める。


ヴァンパイアの特性とワイズ神の神性が加わり、もはや邪魔者を全て吸収し破壊する恐るべき神となりはてている。


「亜種霊長破壊神ルギ、か」


「適切な名前ですね、先生。この力で秩序を地上にもたらしましょう。力こそが全て。人を頂点とし亜種霊長たちを支配してもらう。それによってこの世界に秩序をもたらしましょう! もう二度とフィネを傷つけさせないように!!」


「あたしを理由にするんじゃねえよ! 馬鹿! きついのお見舞いしてさっさと帰るぞ馬鹿!」


「やれるものなら、やってみてくださいよ、フィネ! あなたには僕の影の中で永遠にまどろみを与えましょう!!」


こうして、


『亜種霊長破壊神ルギ戦』


が開始されたのである。

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