15.一方その頃、勇者ビビアたちは⑤~
15. ~閑話 一方その頃、勇者ビビアたちは⑤~
俺は間髪入れずに、プララの鳩尾にボディーブローを叩きこむ。油断していたプララは思いっきりせき込み、身動きが取れない。
「やっぱりアイテムを隠し持ってやがったか!」
時間がない! 俺は遠慮などせず、プララの体中をまさぐって、隠していたアイテムを根こそぎ奪う。
「お、おえええ。う、う、な、なんで・・・・」
地面に倒れたプララは腹のものをぶちまけながら、涙と鼻水にまみれている。
「ビビア様、いきなりなんてことをっ・・・⁉」
「そ、そうだぞ、勇者。いきなり仲間を殴るなんてっ」
デリアとエルガーが抗議して来るが、
「馬鹿が‼ 何を呑気なことを言ってやがる! このままじゃ全滅だろうが‼」
そんなことも分からねえのか、この無能どもは!
俺は内心で悪態をついた。幼馴染だからとパーティーに加えてやっていたのに、これほど役立たずだとは!
するとデリアとエルガーはポカンとした表情になり、
「も、もしかしてそれは」
「プララをここに置いて行くという・・・そういう意味なのか?」
はぁ。全部説明しなくちゃ理解できねえのかよ! この低能ボンクラどもは!!
「た、助けを呼びに行くだけだ! このままじゃあ全滅だぞ! なら、ついてこれねえ仲間を置いて行くしかねえだろうが! これはやむを得ない判断だ!」
「ア、アイテムのことは」
「もう残りのアイテムがすくねえんだよ。ここから脱出しても、上の階で手詰まりになる! 俺たちが何とか脱出しなきゃならねえんだ! でないとプララだって助けることはできねえ! 大丈夫だ、プララ、別に見捨てるわけじゃない! 助けを呼びに行くだけだからな!」
俺の言葉にデリアとエルガーは理解したとばかりに表情を消した。
「そうね。急いで助けを呼びに行かないといけないわ」
「デ、デリア⁉ な、なんで! どうしてよ! じ、じにたくない‼ じにだくないいい! だ、助けて! 助けてよぉ⁉ エ、エルガー⁉」
「すまない、プララ。なんとか持ちこたえてくれ。魔法の使えない足手まといのお前を連れて行けば全滅する。苦渋の決断だが、これしかないんだ」
「ッ⁉ そ、そんな‼ あたしたち仲間でしょ! くそ! くそ! あんたら許さないからね! 絶対に許さない‼ 許さねえ! 呪ってやる! 呪い殺してやるからなぁ!!」
そんな言葉を背中に聞きながら、俺とデリア、エルガーは駆け出す。
一刻も早くこの場所から逃げ出さなくてはならなった。
だが、
「アリシア、何してるんだ!」
「いえ、私はここでこのフェンリルを食い止めますので」
「馬鹿が! プララと一緒に死ぬ気か⁉」
「・・・行って下さい」
アリシアはそう言うと、結界魔法を唱える。
白い透明な壁が通路を遮る。これでそう簡単にフェンリルは俺たちを追ってはこれないだろう。
「アリシア、くそ!」
ちい!
俺は舌打ちする。
聖女はまだ使えそうだったから、ここで別れるのはかなりの痛手だった。今後の回復はプララから奪った回復薬しかないということになる。
だが、今はこの窮地を脱することが先決だった。
いや、考えようによっては、二人の犠牲で確実に俺の命が助かるのだから、安いものかもしれない。尊い犠牲というやつだ。
明かりもデリアの炎の魔法で代替すれば何とか帰れるっ・・・!
「よ、よし分かった! 必ず助けを呼んでくるからな! 死ぬんじゃねえぞ!」
俺はまったく自分で信じていないセリフを叫びながら、この場からかけ去ったのであった。
~聖女アリシア=ルンデブルク~
やれやれ。
私は嘆息する。
聖女などと言われてしまってから何年もたちました。おかげで、こんなところに残っているわけですが・・・、
「だ、だすけで‼ ねえ、聞いてるのアリシア!! 私を助けなさいよ‼ ねえ!」
さっきから、なんだか地面からうるさい声が聞こえてきます。
さすがに集中できません。距離はありますけど、ゆっくりとフェンリルが迫ってきているのです。
「ちょっと黙りなさい。プララ」
「⁉」
私が普段出さない声を出したせいで、プララさんを驚かせてしまったようですね。
「驚かせてしまいましたか? でも今は大事な場面ですからね。・・・あの人もいないですし、はぁ・・・だから、洞窟に来てからもあんまりやる気出ないのですよね・・・。多少羽目を外しても構いませんでしょう?」
「あ、あんた、誰に口きいて・・・」
「・・・分かったかどうかだけ、答えなさい」
冷たい口調で言う。
「ひっ⁉ わ、分かりま・・・した・・・」
いえ、怯えなくても宜しいでしょうに。
「心配しなくても、私だってまだ死にたくありません。あの人に会っていっぱいラブラブしないといけないのですから」
「ら・・・らぶらぶ・・・? あ、あんた何言ってんの? それにあんたの言うあの人って・・・」
プララさんが唖然とするのが分かった。私の口調が聖女のイメージとずれているからでしょう。
「そんなのアリアケさんに決まっています♡」
ああ、言ってしまいました!
私の愛しい方。この世界で唯一の人。私の英雄様。
「どうして、あんな奴を・・・。何の役にも立たない、パーティーのお荷物だったのに・・・」
プララさんの言葉に、私は思わず吹き出しました。
「そんなわけないじゃないですか~。言い方は悪いですが節穴すぎますよー。冗談はやめてくださいっ。英雄をつかまえて無礼千万ですよ?」
「なっ⁉」
「だいたいですね、勘違いされているんですよ、皆さんは。いえ、実力が開きすぎていて分からないのかしら。あっ、でもアリアケさんが隠していたわけじゃないですよ。あの人ったらいつも正直に言ってましたからね。信じなかったのは皆さんです。そして、この状況なわけですけど」
いいですか? と続ける。
「まず、あの方にユニークスキルがない、というのがそもそもの間違いです」
「う、嘘よ! だって鑑定士がアリアケにはユニークスキルはないって!」
「そういうユニークスキルなんじゃないですよ、多分ですけど。恐らくスキルではなくて、存在が”ユニーク”なんじゃないでしょうか。あの方にユニークスキルが無いと言われてから、私が大陸中の書物をありったけ調べた私の推測ですが、あの方のユニークスキルは『隣に侍る神』だと思います。そう言う意味では”称号”などに近いのでは?」
「隣に侍る神ぃ???? はぁ、何よ、それ???? ん? いや、でもそれってどこかで聞いたことがあるような・・・」
「村でおばあちゃんたちに聞いたでしょうに。1万年以上前のおとぎ話ですよ。いわく、世界を救う勇者が現れる時、その隣には≪あらゆる助けを行う神が侍る≫、と」
「あいつが神だって言うの⁉」
プララさんが驚愕した。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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