126.魔王登場と新メンバー加入
第3巻の発売日は9月7日です。ぜひ、ご予約・ご購入のほどお願い致します。
またコミックも8月開始予定です。こちらもぜひお楽しみに!
126.魔王登場と新メンバー加入
~魔王リスキス視点~
「分かったのだ! それではアルガス地方の制圧は1年もあれば出来るというわけだな?」
「はい、リスキス魔王様!」
玉座に座る私の前には、かしずいた四魔公の一人がいた。
名をトリドスと言うキング・オークだ。
その力は一振りで山すら吹き飛ばすという。
彼以外にそんな力を持つオークはいないので、とりあえず四魔公にした!
(まぁ、正確には、先日四魔公ワルダークが倒されてしまったために、一人は空位なのだけどねっ……!)
そして、その余った一席を誰にするかで、魔王領では政治的な駆け引きが勃発していた。
あてぃしは面倒なのが大嫌いなので放置しているが、そのうち解決せねばならない問題の一つなのだ。超面倒なのだ!
「はぁ……。それにしても、あいつはこらえ性のない者だったのだ! あてぃし以上のせっかちさんだったのだ!」
思わず口から愚痴が漏れた。自慢の赤髪をクリクリした。
「は? 何かおっしゃいましたか?」
「何でもない。妄言なのだ!」
あてぃしはそう言ってごまかす。
ワルダーク・ゾゾルゲー。
あの爺ちゃんをグランハイム王国に潜り込ませることで、どれだけ魔王領の利益になっていたか分からない。
何せ敵国の情報が筒抜けなのだ。他国の情報ですら、得ることが出来た。
だから余計なことせずに、その地位にしがみついていてくれるだけで良かったのだ。
なのに!
だというのに!
あのジジイ、勝手に動いたうえに、魔神ポセイドンの復活を目論んで自滅してしまったのだ! 最強のあほなのだ!
(情報の重要さというのが、魔族たちにはどうしても浸透しないのだ。そういう種族だからしょうがないのだけど~)
忸怩たる思い! なのだ!
「魔王様? どうされたのですか?」
さすがに内省にふけりすぎたようだ。
私はいつもの調子で告げる。
「状況は理解した。だが、あの地域は人類も死守しようとするはずなのだ。こちらは圧力をかけるふりをし続けるだけで、奴らの物量や兵士を消費させるという効果がある。戦力を分散させることも可能なのだ。ゆえに最悪占領できずとも良いので焦らずとも良いと伝えるのだ」
あてぃしの指示に、
「はは! ありがたきお言葉! かの地の兵士、将軍たち一同に伝えましょう! きっと一気呵成に脆弱な人類どもを制圧するに違いありません!!!」
「……意図を正確に伝えるために、文官に後ほど書面を用意させるのだ。それをかの地へ届けて欲しいのだ」
「ははぁ!」
やれやれ、なのだ。あてぃしだって、あんまり頭使うの好きじゃないのだけど、さすがに魔王なので苦手とか言ってられないのだ。でもそのうちハゲそうなのだ……。
さて、そんな軍事協議の後、四魔公トリドスが退室したので、あてぃしも自室へと引き上げたのだ。
ピンク基調のファンシー気味のお部屋なのだ。
……だが、そこにはいるはずのない存在が、立っていて、あてぃしに話しかけていたのだ。
「久しぶりじゃな、魔王」
「……これはこれはご無沙汰なのだ、邪神様」
驚いたのだ。どうやって入ったか何て詮索するつもりはないのだ。
そうではなくて、
「普段は裏から世界を操る邪神様が、どうして直接こっちに出てこられたのだ?」
「うむ。そのことよ、魔王リスキス」
邪神様は企み事を口にしようとするのだ。あてぃしは一生懸命に聞くようにする。まあ、ぶっちゃけ内心、
(超面倒くさそうなのだ! まぁ仕方ないのだ)
と嘆息しまくりだったのだけど。
「何なりと邪神様。あなたに頂いた力により、あてぃしは魔族を統べる力を得たのだ。ならば、あなたは親と同じ。いかなる指示にも従うのだ」
「ふふふ。話が早いな。魔王よ。実は、な」
邪神様の話を最後まで聞き、あてぃしは早速承諾の返事と策を口にしたのだ。
「分かったのだ! ではとっておきの駒を動かすのだ!」
「ほう、とっておきの駒とは?」
邪神様が興味深そうにするが、
「むふふ、とっておきと言えば、とっておきなのだ! これ以上ない『駒』なのだ!! ネタバレすると楽しみ半減だと思うので、楽しみにしておいて欲しいのだ」
「ほう」
あてぃしはそう言って、その策を実行の準備をしはじめたのだ。
何事にも準備はいるというもの。
それに、
「アリアケ・ミハマっち! 邪神様にそこまで見込まれてるとは! 会うのが超楽しみになのだ!」
あてぃしはウキウキと心を躍らせる。
だって、
「ワルツは一人では踊れないのだ!」
その声はすでに去った邪神様には聞こえていないはずなのだ!
~勇者ビビア視点~
「くそが! くそが! くそがよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
俺は地面に頭を突っ伏しながら絶叫した。
ここは街道のど真ん中。
だが、とうとうアイテムと金、食糧が底をついたのだ。
もうどうしようもないと絶望の怨嗟の声を張り上げてしまったのだった。
「ちょっと、落ち着くじゃん勇者! きひ、きひひひ! とうとう最低のEランクにまで落とされて悔しいのはわかるけどさ! 分かるけどさ! 分かるけどって、分かるわけないじゃん! あーっはっははっは! 笑える! 笑える! あのSランクパーティーだった勇者が、今はドブさらいくらいしか仕事を受けられないなんて、あーっはっはっはっはっは、いひいひいひいひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!! そんな無様で無様で無様で無様な気持ちを分かれって方が無理ってもんっしょー!!!」
「ちょっとプララ! あんた仲間に対して何てこというの⁉ 勇者は一生懸命やってるわ! た、確かにちょっと失敗続きだし、重要な狩場は崩壊させるし、牢屋には入れられるし、聖槍の使い手を追い出したあげく惨敗、しかも御前試合ではモンスターになって街を恐怖のどん底に突き落とし、そして先日は悪魔に操られて国教の中心地である聖都セプテノを破滅の一歩寸前まで追い込んだけどもっ……!」
「そうだぞ! 笑いごとではないぞ! 勇者はEランク! 俺たちだってDランクに大降格だ! 今や勇者パーティーとばれるだけで、小さな町の子供たちにまで、クスクス、あの筋肉って見せ筋なんだって、だっさーい! と笑われる始末なのだぞ! こんな屈辱に身を焦がさずしてなんとする!」
「うっせーよ! もとはと言えば、あたしを最初に洞窟に置き去りにした罰があたってんだろうがよ! 反省してあたしに土下座して謝罪しろってんだよ!」
「それはもう終わったことでしょう! いい加減にしなさいよ、プララ!」
「終わってねーよ! やられたほうが一生覚えてるもんなんだよ!」
「そんなことよりもどうするのだ勇者よ! もう路銀がないぞ! ろくなクエストも王国の許可がなければ受けられん!」
「知るかよ! てめーらが何とかしねーか! もう何日食ってねえと思ってんだよ!」
「お風呂も入れないなんてあんまりですわ! ちょっとお金貸しなさいよ、エルガー! あんたなんて風呂入らなくても平気ででしょう⁉」
「愚かな! 肉体の日々のメンテナンスがどれほど重要かの認識が薄すぎる! これだから筋肉に理解の薄い女というのはっ……!」
その口汚い口論は四六時中続いていた。
勇者パーティーから、ただのポーターであるアリアケが抜けてから、彼らの地位や名誉は凋落の一途をたどっていた。
かつての栄光はもうなく、街を歩けば借金取りに追われ、子供たちに嘲笑され、大人たちからは見てはいけないものとして目をそらされたりする始末。
「どうして! どうして! どうして! どうして!」
どうしてこんなことになったんだ!
くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ!
「せめて! せめてまともなポーターが一人付きさえすりゃあ、またやり直せるってーのに!」
俺はそう確信する。
アリアケというポーターがいなくなってから、全てが狂いだした。
だからこそ、バシュータと言うポーターを雇ったが、あいつはとんだ無能で、俺たちの足を引っ張る事しかできなかったんだ!
あれは運が悪いだけだった。
「もう一度チャンスさえあれば、俺たちはまた栄光のステージに戻ることが出来るのにぃいいいいいいいいいいいいい! あああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そう絶叫した時であった。
「あの、ポーターをお探しですか?」
突然、その声は背後から聞こえていた。
「は? 誰だ?」
「ああ、突然声をかけてしまって驚かせてしまい申し訳ありません。私の名前はティリス。実は先日、所属していたパーティーと別れてしまって、これからどうしようかと途方にくれていたところなのです。あなたたちは?」
そう声をかけて来たのは、黒髪を長く伸ばした溌剌とした感じの少女であった。
「俺たちは」
名乗ろうとしたところ、
「ああ! 分かりました!」
彼女がパンと手をたたいて言った。
俺はその少女の仕草に唇をニヤりと歪める。
いかに俺たちが多少落ちぶれようとも、その真の力。威厳。威容。ポテンシャル。あふれでる人間的な存在力。そんなものはどうしても滲み出てしまう。
それが彼女におのずと俺たちの正体を伝えてしまったのだろうと確信したからだ。
だが、
「皆さんもダンジョン攻略に失敗したC? いえ、Dランクパーティーさんたちですね!」
「ぐ! ぐぎぎぃいいい⁉」
俺は彼女の言葉に思わず唇をかみしめると同時に、うめき声を上げることしかできない。
唇を強くかみしめすぎて血がしたたり、言葉を紡ぐことができなかったのだ。
しかし、彼女はそんな俺の様子には気づかずに言葉を続ける。
「話を最初に戻しますね。私も長くポーターをやっていたんです。見たところ、皆さんのパーティーにはポーターがいらっしゃらない御様子! どうでしょうか、ここは一つ、私をパーティーメンバーに入れて頂けないでしょうか! きっとお役に立てますよ!」
そう溌剌とティリスは言った。
しかし、俺は言下に、
「はぁ、てめえなんかを加入させるわけがっ……! むがぁ⁉」
断ろうとしたのだが、
「ティリスさん、でしたわね! ええ、ええ。ぜひ入ってもらえればと思いますわ! あと、もし宜しければ路銀を少し融通してもらうことは出来ないでしょうか? おっしゃるように少し攻略の失敗が続きまして、ちょーっとだけ、物入りなのですわ!」
「ああ、やっぱりそうだったんですね? いいですよ。多少持ち合わせがありますから」
「マジじゃん!? 捨てる神あればってやつじゃん! これで今日はまともなスープにありつけるし、お湯も使えるじゃんじゃかじゃん♪」
「うむ! 俺の筋肉も喜んでいるぞ! ふは! ははははははははは!」
「むぎぃ! むぎぃ! むっぎぎぎぎいいいいいいい!!(お前ら! 離せ! 俺がリーダーなんだぞ!)」
俺が口を開こうとしても、3人がかりで抑え込まれ、ろくに口を開けないのだった。
「あの、その男性の方は何かおっしゃりたそうなんですが……」
「「「え?」」」
三人は冷徹な目で俺を見下ろすと、
「あなたのパーティー加入を歓迎すると言っているのよ。ええ、でもちょっと興奮気味みたい。よっこらしょっと」
「ぎひへあ⁉」
デリアのユニークスキル『防御無視』を不意打ちで叩き込まれた俺は、たちまち激痛と共に、意識が薄らいでいく。
顎がガクリと縦に揺れた。
「ふふふ、どうやら賛成のようですわ。それに落ち着いたみたいですわね。さ、ティリスこれから宜しくお願いしますわね?」
「はーい! 宜しくお願いしまーす!」
少女は朗らかに笑った。
だが、意識が落ちる寸前、俺はそんな少女と偶然目があう。
しかし、その瞳の奥に映るのは何か得体のしれない何者かのように、俺には思えて仕方なかったのだった。
だが、残念ながら次に起きたとき、そのことを俺はついに思い出すことはできなかったのだが……。
第3巻は9月7日発売です! ご予約、ご購入ぜひお願いします! コミックも8月開始予定です!
小説の第1巻は即重版! 第2巻も好評発売中です。
第3巻試し読みはまだのようですが、出来るようになりましたらすぐにお知らせしますね(*^-^*)
https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/yuusyaparty/
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「魔王ちゃんは今後どうなるのっ……!」
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