マッド・ティー・パーティー
怒られてしまった爺婆8人。
彼の怒りを収める事が出来るだろうか。
「そんなに怒らなくても・・・。」
清がなだめようとするも、彼はかなりご立腹。
年寄り8人相手に怒る怒る。
彼は決して寛容な神では無いようだ。
爺さん、婆さんも黙ってはいない。
「若者の様に素早くはできない」
だの
「頭が付いて行かない」
だの言い訳をしてみたものの、怒りに火を注ぐだけであった。
ひとしきり彼が怒鳴り散らした後、プルプル震えていた婆さんが、うつむいて泣き出してしまった。
それを見た彼は、怒りの言葉も途中で、婆さんの方を向いたまま固まってしまった。
バツが悪そうである。
プルプルしている婆さん、名をトワと言う。小柄で痩せっぽち。腰が曲がっている。声も小さめ。
さっきまで、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で「ごめんなさい、ごめんなさい。」と言い続けていた。
彼女だけは一言も言い訳をしていなかった。
ただプルプルしながら、あやまっていただけだった。
そんなトワを、彼は、神を名乗っておきながら、泣かせてしまったのだった。
場が静まり帰った数秒後、トワは一言だけ発した。
「急ぎますから・・・。」
それを聞いた彼は怒るのを止め、一言
「・・・早くしろよ!」
と言うと、その場から去っていった。
立ち去る彼の背中を見つめる8人の老人。
彼が居なくなったのを確認すると、トワ婆さんはニコやかに皆に言った。
「さあ、お茶にでもしましょうか。」
トワは、テーブルの横にあったポットから急須に湯を注ぐと、8つの湯のみへユックリとお茶を注ぎだした。
すると元気な爺さんが叫ぶ
「ダウト!!」
6人の爺婆は驚いて叫んだ爺さんに振り返る。
トワは落ち着いている。お茶を注ぎ続けている。
元気な爺さんが言う。
「トワさん、急ぐ気全然無いだろ!」
トワさん、肩が小さく揺れている。
明らかに笑っている。
それを見て全員が笑う。
笑いながら、皆でお茶を頂く。
笑いながら熱い茶を飲もうとするから、案の定、震える手からお茶が溢れて「アチャチャ!」とか言い出す爺さん。
それを見て、全員また笑う。
「あらあら」とか言いながらトワさんがお茶をこぼした爺さんの手を拭いてあげる。
トワは優しい。
「どこからそれ持ってきた?」
と爺さんが聞くと、トワさん
「あ、これ、フキンじゃないわ。さっき神さんが忘れていった羽衣だわ」
と言う。
それを見て、また皆笑う。
トワさん、
「みなさん、これでも食べて落ち着いて」
と言いながら茶菓子をテーブルの上へ。
皆で笑いながら菓子を食べる。
爺さんが「そのお菓子、どこから?」
と聞くと、トワさん一言。
「さあ?」
爺さん
「さあ?って!!誰の物かも良く分からない菓子をワシらに食わせているのか!」
それを聞いて、皆また笑う。
トワ「私だけ食べてないから私は無罪ね。」
元気な爺さん「ダウト!!あんたが一番有罪!」
それを見て、皆また笑う。
トランプしながら、茶をすすり、菓子を食べながら大笑い。中にはうずくまって、テーブルをドンドン叩きながら笑っている者もいる。
笑い狂う老人たちの茶会である。