3英雄
「それにしても、この世の終わりみたいな顔をしているな」
「ライオ、ちょっとは同情したらどうなの?」
「同情も何も受け入れないなら、前に進めねえだろうが」
翌日、被害を確認すべく、城下を歩きながら帝国民達の顔を見ると、感情が抜けている者、泣き崩れ目が真っ赤になっている者など、一言でいうと絶望している者達しかいなかった。確かに家族、愛人、友人を失い、家までなくなればそうなるだろう。
「あ、英雄様だ!」
「本当だ!リオン様、ヴァン様、リオン様だ」
「わーい。何をしに来たのですか?」
「街の様子を見に来たのよ。貴方達も頑張ってるわね」
「チッ」
英雄か・・・羨ましいよな。魔王を討ち取ったのはリオン達で、俺は後方で怖くて逃げた臆病者とか言われている。戦っただけマシだろうが、それならば、宮廷魔術師団、帝国騎士団の連中は何なんだ?あいつらも帝国のために、散っていった勇者たちとか言われてるし。俺だけ圧倒的に待遇がおかしいだろ・・・。
「リナ、そろそろ行くぞ。大聖堂で大臣たちがお待ちだ」
「えー。まあ仕方ないか。君たちまた遊ぼうね!」
子供たちとの話は終わり、急ぎ王城にある大聖堂へ向かい、約束の時間ギリギリに到着した。流石俺たち!!素晴らしい!!
「これはお待ちしておりました。リナ様、ヴァン様、リオン様、ライオ殿。それでは中へどうぞ」
「ありがとうございます」
ライオ殿ね。これが扱いの違いか。まあいい英雄じゃないから仕方がない。
「私達大臣は、3英雄様の意見に従うことを先程決定致しました。ここからは3英雄様とライオ殿でお話くださいませ。決まり次第連絡をくださいましたら、また駆けつけますので」
英雄というやつも可哀想。明らかに面倒くさいからこっちに押し付けて来ただろう。形だけの英雄ならば、ならないほうがいいなとその時決意した。
数時間後、話を始めて一向に進まない。
「ライオ!少しは意見を出したらどうなの?貴方も英雄の一人でしょ?」
「一緒にしないでほしいな。お前らは英雄だが、俺はただの錬金術師だ」
「ライオさんも、リナさんも落ち着いてください。余計話し合いが進みません」
「リオン、少しだけ黙ってて、ライオには覚悟がないように見える。だからそこを直さないといい国は作れないわ」
「何が覚悟だよ。お前らが英雄であって、俺は違う。それはお前が変えようと変えれない事実だ。もういい後は英雄様で決めろ。じゃあーな」
リナのワガママには流石に堪えられん。自分たちが英雄と含めた話し方をするが、実際はあの三人だ。それに、覚悟がないだと?当然だろうが、だって俺は英雄になれなかったし、なろうとも思わないからだ。
「リナさん少し言いすぎですよ」
「あ、うん・・。でも・・」
「下らん。英雄ではなく、後方で逃げていたやつが、悪い。それだけだ。さあ話し合いを進めるぞ」
外へ出てからも、ヴァンが悪口を言っているのが聞こえてきた。好きなだけ言えばいいさ、俺は英雄になれと言われても拒否するし、家で研究だけしてるからな。それにしても、ヴァンの魔力量がおかしいような気がしたな。何かしたのだろうか?
まさか!?英雄になれと言われても拒否すると決意するとは・・・。(タイトル回収Ⅰ)
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