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君と輪廻の結び方  無適正者と鬼姫の異界捜記  作者: 鈴片ひかり
第四章 結びの章
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43 結び① 玉結び

「葵衣様、巨人族討伐の件、お疲れ様でした」


「さすがに王都に乗り込んでホツレ因子に侵された巨人王をぶち殺すのは疲れたわ……でもこれで対策が取れていない因子は後一つね?」

「はい、後195年後、魔族の一種族であるダルギーバ族 邪王の元へ堕ちることでしょう」


 ラザルフォードの端、ある貴族の館の一室で二人はくつろいでいた。調度品は最低限。

 目の前には金髪ロングのメイド服を着た少女が紅茶を入れているところだ。


「京羽、本当にメッセージを入れていいの?あなたの綺麗な肌を私はずっと愛でて居たいのだけど」


 深くお辞儀した京羽と呼ばれた金髪の少女は柔らかな笑みを浮かべながら頷いた。


「葵衣様がおっしゃったメッセージの意味。忘れないために……I expect you to die……あなたが死ぬことを期待しています、素敵な言葉ですね」


「そう受け取ってくれる人が身近にいて私は幸せだわ」


 葵衣は魔導ペンを手に取ると、メイド服をはだけ、上半身を露にした京羽の背後に立つと首筋へ慎重に文字を刻んでいく。


「マイ、ガイガスパパにはちゃんと手紙送ってる?」

「ご心配なく、それに葵衣様が巨人族の侵攻を防いでくれたことでドワーフ王国が正式にお礼を申し上げたいということです」


「お礼か……ねえ、なら頼みたいことがあるの。ドワーフならレイジがこっちに来た時に使える刀を打ち上げてくれるよね? レイジはやっぱりね日本人だから男の子だから刀を渡してあげたいの。どんな困難も理不尽も切り裂けるような」

「ふふふふふ、まるでお母さんですね葵衣様」


「はいできた。お母さんか、まあ手のかかる子だからなぁ」


「私は葵衣様が糺次様のことを考え思いをはせるときに見せるその優しい笑顔が大好きです。お二人でバカップルぶりに周りが呆れるぐらいいちゃいちゃニコニコしている姿を見てため息を吐くのが私の夢なのです……でもおかしいですね、発掘人形が夢なんて」


「京羽がそう思ってくれるのはうれしいけど、バカップルになんてならないわよ」

「いえ、絶対にバカップルになります」


「マイに京羽、意地悪ね」



 ◇



 ”

 神星歴 2312年


 父上、いかがお過ごしでしょうか?


 先日手配してくれた結びの覚悟を示してくれた一族を隠れ谷に住まわせました。

 今後200年に渡り、葵衣様の手足となって支えてくれることでしょう。


 でも大丈夫です。

 人魚の肉を食べ不老不死の体になった私が、永久に葵衣様を支えましょう。


 少しずつ準備が進んでおります。


 発掘人形の京羽が支援してくれるおかげで、来たるべきレイジ様が到着なさる結びの日に向けての準備は着々と進行中です。


 昨日は魔導王国の由緒ある予言者の一族と盟約を結ぶ手はずとなりました。


 鬼姫たる葵衣様の血を飲んだことで覚醒した予言者の力を駆使し、王国に降りかかる災いを知らせ防ぐ代わりに協力体制を確約させました。


 後20年後に現れるホツレがバラまいた第二因子、がヴァルジェリス帝国とリシュメア王国、そして魔導王国ラザルフォードとの戦になる未来が見えています。


 可能な限り被害を抑え未来に繋げなければなりません……京羽との別れはもう少し先ですが葵衣様が妹のようにかわいがっているため心が引き裂かれそうな思いがします。


 ”



 ”

 神星歴 2331年


 父上が病床にあると聞き、ペンを取りました。

 見舞いなどいらぬとおっしゃっておりますが、心配でなりません。


 三国を巻き込んだ戦争でしたが、ホツレ因子の捜索が難航し葵衣様の活躍があっても沈静化に1年がかかってしまいました。


 人の生み出す業がいかに重いものか、時折投げ出してしまいたくなる時もあるものです。


 ですが、ぷに太が京羽が支えてくれるので生きていけます。


 葵衣様の症状は悪化しているように見えます。


 ホツレの心臓を喰らい、我が身に100万の魂を封じている負担はいかばかりでしょう……


 ホツレ化の進行が止まりません。魂の定着のためにホツレ因子を利用し、肉体の維持のために人魚の肉を利用しているのです、反動の大きさは想像すらできません。


 自ら選んだ茨の道ですが、葵衣様は辛そうな顔一つ見せません。

 ですが私は知っています。夜になると融合化の痛みで苦しんでいる姿を……決して人前では見せない姿です。せめてもの救いはその美しさが微塵も陰っていないことでしょうか。


 ぷに太がずっと見守り続けてくれていますが、やはり葵衣様が苦しむ姿は見ていられません。


 私はこれから魔族の国に赴き、現魔王やキーパーソンたちと縁を結ばなければなりません。父上……もし時の巡りと運命の輪が結ぶ先に私たちが再び出会うことを期待してペンを置きます。


 マイは、父上の娘で幸せでした。


 ”


 ”

 神星歴 2361年


 私はいったい誰に手紙をしたためているのでしょう。


 一週間前、グルノアの街で京羽を水晶封印凍結処理をしました。


 葵衣様はずっと、ずっと泣いておられました。

 ぷに太は体が大分大きくなりましたが、変化の術で葵衣様へ常に寄り添っています。


 I() ex()pect you to die ・・・・・・・


 この言葉が結実する日が着々と近づいているのですね。


 東大陸の根回しは非常に難航しております。

 できればレイジ様の出迎えをスムーズにしたかったのですが、それを優先すると全てが水泡に帰す未来しか見えません。


 せめて、ドワーフ王国が心血を注いで打ち上げているという刀があの方へ渡るように手配せねば。


 ですが、時の結び目と接合点を見出すのがこれほどに大変だとは思いませんでした。


 そしてキーとなる少女たちの未来が少しずつ見えてきます。


 魔王の娘 エスメラルダ姫の誕生が見えたこと。

 彼女こそ第三のホツレを打ち破るために選ばれた娘。


 闇月の女神シルメリアの加護を受けた魔導の勇者。



 そして先ほど知り得た事実です。

 エスメラルダ姫とレイジ様の運命が絡み合うという未来……



 運命とはなんと勇壮で荘厳で、そして残酷なのでしょう


 ”


目を通してくれた方、少しでも興味を持ってくれた方々に心から感謝申し上げます。


忙しく辛い日常の中で、私如きの作品ではありますがほんの数秒でも息抜きや忘れられる時間が提供できたのならこれ以上の喜びはありません。


右上のブックマークや最新話下部の評価ボタンで応援してもらえると、本人は小躍りし跳ね回り喜び、モチベにもなるので、気が向きましたらよろしくお願いします。

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