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第3話 生きる理由2

 ぼーっと窓の外を眺めていた。


 別に黄昏ている訳ではなく、もちろん黄昏ている私ミステリアスで魅力的とか思っている訳でもない。


 ただ現状がつまらなくて物語の登場人物がよくやっているように窓の外を眺めると、こんな現状を変えるような出来事が起こるかもしれないなんて、淡い期待とも呼べないただの願望をしていただけだ。


 メッセージの返信はいくら待っても来ず、既読すらつく気配は無かった。


 もしかしたらとっくの昔にブロックされているかもしれない。


 やっぱり私達の関係はあそこでぱったりと途切れてしまっていたんだろう。


 補習なんて受ける気にもなれず、さっきまでとは違い、何も考えずに窓の外を眺めた。



「人は何で生きるんだろう」



 声が聞こえた。


 隣にいる自分でも微かに聞き取れるくらいの小さな声だった。


 まるで意図せずポロリと落とされたような、誰にも届かないで空気に混じって消えてしまうようなそんな感じだった。


 隣を見てみるとペンを片手に持ち、黒板を見ている少年が顔をしかめ苦しそうに何かを見ていた。見ようとしてるように見えた。


 普段なら、いや、普段は人が生きる理由を考えるような人とは会わないけれど、そもそもそんな人を知ったのは今日この時が初めてなんだけど、普通なら聞こえなかったふりをするか、席を窓際によせて距離をとるかだけどこの時は違った。


 他の人とその男子が違うように思った。


 見てるものが違う……というか、多分似ているようなものなんだけど、何て言えばいいんだろう。


 見ようとしてるものが他の皆と違う気がした。


 皆が毎日見てる『いつも』の日常が、彼には別のように見えてるような気がした。


 だから『いつも』と乖離してしまった自分に重ねたのだろうか。


 物語は登場人物が何かをしてから始まっていた。


 もし、世界というものが誰かの意思によってそうやって変わっていくのだとしたら、


 そうなのだとしたら私はこの面白くない今を変えたかった。


 だから考えるよりも体が動いていた。


 この先にある未来を想像しながら言葉を紡いだ。


「人は幸せになるために生きてるんじゃないかな」


 どこにでもありふれているような言葉。


 そんな言葉しか浮かばなかったけど、他には何も思い付かなかった。


 頭に浮かんだ言葉が口をついて出てきた。


「生きるのは目的じゃなくて手段なんだよ。楽しくなるための、幸せになるための手段なんだと私は思うな」


 自然に口角があがっているような気がした。


 それくらい私はこの出来事に期待していた。


 多分この時の私はどうかしてたんだ。


 その日、家に帰るとベッドに潜りうずくまった。


「人は幸せになるために生きてるんじゃないかな」


「生きるのは目的じゃなくて手段なんだよ。楽しくなるための、幸せになるための手段なんだと私は思うな」


 頭の中で反芻する度にある感情が沸いてくる。


「うっわぁぁぁぁぁぁぁ、恥ずかしいぃぃぃぃ何言ってるの私はぁ!」


 跳ねる度にベッドはぎしぎしときしみ、体と一緒に布団ももっふもふと上下に動く。


 しばらく動いて疲れると動かなくなり、また頭にあの言葉がよみがえり「うわぁぁぁぁぁあ」と奇声をあげながらまたベッドの上で跳ねるのだった。


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