第25話 学校祭
学校祭当日、と言っても今日は前日祭だそうで保護者とかが来るのは明日からなのだが、前日祭当日、僕と音海は教室で店番をしていた。まあ、何故かと言われれば他のクラスメイト達は部活の準備で部室に行ってたり、他には別クラスに遊びに行っていたりとでいつの間にか店番係が僕と音海になっていたのだ。
用事が無かったから良かったができれば一声かけるくらい……いや、クラスの真ん中で語るような変人と会話しようなんて物好きはこのクラスにはいないか。
当番中は僕も音海も特に話はしなかった。
そもそもこんなところでいつもみたいな会話をするのも少し気恥ずかしい。
まあ、そんなこんなで現在店番をしているが特に誰かが来る訳でもなく、不毛な時間を過ごしていた。
ちなみに僕たちのクラスは各クラス担任達によるくじ引き大会で見事運の悪さを発揮した望月先生のおかげで休憩所をしている。
……店番いらなくないか?
一応仕事としては汚れたテーブルクロスを変えたり、ゴミ箱がいっぱいになればゴミ置き場に持っていったりとあるのだが、休憩所に店番はいらない気がするんだが。
管理者スペースみたいな感じか?
まあ、そんな思考になるくらいには不毛で暇な時間だった。
それに今日は前日祭なので人も生徒と先生だけでこの教室に来る人はいなかった。
隣のお化け屋敷は大盛況のようで叫び声が聞こえてくる。
お化け屋敷をするにしては小さい教室だが上手くいっているようで少し興味がある。
一緒に行くような奴がいないから行かないけど。
そんなどうでもいいことを考えていればいつの間にか係の時間はあと五分まで来ていた。
これで明日の文化祭には仕事が無いと思うと結構良い時間に当番を貰えたな。
明日の文化祭か。
「音海、もしよかったら一緒に文化祭回らないか?」
「え? いいの?」
「一人だとつまらないからな」
音海とは部室以外では全く話していなかったのだ。
だったらこの機会に部室以外でも一緒に過ごすというのも学校で普通に話せるようになるきっかけにかもしれない。
けど、一番は音海と一緒だと色々と楽しそうなのだ。
それこそ一人で回るよりよっぽど。
「なら……うん。一緒に回ろう」
その時、音海の顔が少し朱に染まっているように見えたのはやっぱり僕の希望的観測なのだろうか。
○●○
文化祭当日、全クラス強制創作ダンスもクラスTシャツを着て無事に終え、部室でぼーっとしていた。
今日は外部の人たち、と言っても大半が保護者とその家族ぐらいだが、それでも全校生徒600人程の学校にそれぞれの家族が来るとなれば結構な人数で、人がいない場所は部室くらいしか見つけられなかった。
音海にはすでに伝えているので準備ができたら来るそうだ。
「おまたせ」
今日の音海はダンスがあったからか短めの髪をサイドポニーに結んでおり、いつもより幼そうに見えて可愛らしい。
幼いって言ったら怒りそうだから言わないが。
「じゃあ行くか」
「そうだね。まずどこ行く?」
パンフレットを開くと飲食店やら各部活動の模擬店もあるのだが、それほど興味が沸く物は見当たらない。
「そういえば文芸部は文集とか書かなくていいの?」
「特に何も言われてないしいいんじゃないか?」
それに部員は一人だけだからやろうとしても大した物はできなさそうだし、それに色々と面倒そうだ。
「まあ、いっか。じゃあここ行かない?」
そう言って指差されたのは一階の模擬店でたこ焼きと焼きそばを売っている店だった。
まあ、そんな訳で来てみたのだが、さすが焼きそば、大勢が並んでおりそこそこ待った後なんとか自分たちの順番が来た。
「あの、焼きそば二つください」
「焼きそば二つ! ってもう無いのか!?」
接客をしていた3年生らしき人は少し気まずそうにこっちを見た。
「あと一つしか無いらしい。すまんな」
「じゃあ一つください」
取り出していた600円を300円にして渡すとホントにごめんな。と言って焼きそばを渡してくれた。
「はい」
「え? いいよ」
「今日一緒に回ってくれてるお礼だから気にしないでくれ。それよりも今すぐどっかに避難したい」
正直もうこの空間にいたくない。歩いてるだけで人に当たるし、色んな匂いが混ざってるのも不快感を大きくした。
とりあえず今は外の空気を吸いたい。
「じゃあ中庭にでも行こっか」
歩き出そうとするも人の流れに押されて思うように前に進まない。
後ろを見ると音海が流されそうになっているのを見つけたので手をとり引っ張り出すとそのまま人ごみを抜ける。
「大丈夫か?」
「え、えっと……うん」
うつむいているので顔は見えないが耳が赤くなっているのが見えた。
「本当に大丈夫か?」
「だ、大丈夫だけど……四季くんの方こそ大丈夫?」
「え?」
「手握ってるから……」
その言葉に、今の状況を見返してみると僕は音海の手を繋いでいる状態で、人間恐怖症の自分がこういう状態なのを気にして言ってくれているんだろうが、それなのに異性と手を繋いでいるということの方に意識が持っていかれる。
そう考えると気持ち悪いとかの前に顔が熱くなっていくのがわかった。
「わ、悪い」
そう言って手を話すと音海はその手をもう一度握った。
「お、音海?」
「その、嫌じゃなかったら、このままがいい……です」
そう言って音海は胸に頭を当てた。
急激に鼓動が早くなっていくのがわかる。
「何で敬語なんだ」
「なんとなく……」
どっちもお互いに顔が見れなくて顔を背ける。
「……嫌じゃない」
「え?」
「中庭行くぞ」
二回目はさすがに言えず手を引いて中庭に向かう。
あんな態度をとられてしまえばやっぱり期待してしまいそうで、でもただの自意識過剰かもしれないと考えてしまう。
だから今はこの答えは出さない。
自分の気持ちにも今は名前をつけたくない。
意識し過ぎて今までのように戻れないのも嫌だから
でもいつかは言葉の枠組みに入れて意識してどうにかしようと迷わなければならないのかもしれないが、そこら辺は未来の僕に任せよう。
とりあえずベンチに座るもどちらも何も言えず、ただずっと繋いだ手にばかり意識してしまう。
「焼きそば食べないのか?」
少し上ずってかすれた声になってしまったが今はこの沈黙に耐えられないのだ。
「う、うんそうだね。四季くんも一口いる?」
「じゃあちょっと貰う」
そう言うと音海は割りばしと焼きそばを渡してくれたので少しだけ食べる。
正直味なんてわからない。
お礼を言って返すと音海はまだ顔を赤く染めていた。
平静を保とうと音海は焼きそばを食べ始めた。
僕が使った箸で。
いや、間接キスとか気にしてるのは気持ち悪いな。意識するな意識するな。
けれど現実とはそう上手くいくようなものではなく。
「あっ」
その声に顔を向けると音海は音海で気づいてしまったようで割りばしと僕とそれからもう一度割りばしに視線を向けるとぼっと音がなりそうな程顔を真っ赤にした。
「ご、ごめん」
「謝らないでくれ」
それからはお互いに何も言えず、終始恥ずかしくて、そのまま文化祭は終わってしまった。
けれど不思議ともったいないとか、もうちょっと何かしておけばよかったとかの考えは出てこなくて
買ったのは焼きそばだけで、他のお店には一回も行っていないのにそれでも楽しいと思えたのはやっぱり……
いや、やめよう。
今はこの距離感が一番なのだ。
それが逃げなのか最適解なのかは今の僕にはわからなかった。
いや、迷う必要なんて無い。
迷ったらダメだ。
僕にそういうのは
許されない。
pv1000突破ありがとうございます!
ということでサブタイトルとか変えたりしたいんですが未だにそういうのは得意になれないので、今回から最終回まで毎日投稿頑張ります!
という訳で読んでくださった皆さんありがとうございます!
終わりまで行けそうだからあらすじ書き直すか……




