第22話 寿命
夏休みというのは始まった時に思う『まだまだ』という気持ちも、残り数日と両手で数えられるようになれば少しずつ近づいてくる始業式に頭が痛くなっていく。
そしてついに来た始業式では長ったらしい先生の声を左から右へと流していく。
それも終われば教室でSHRがあってそこからいつものような日常へと戻っていく。
そんな流れに流されながら思うことは一つだった。
今年の夏休み、何も無かったな。と。
何かはあると思ったんだ。
あれだけ色々あったんだから今年の夏休みくらい何かあってもいいのではないか、ここは僕から誘うべきなんだろうか、というか何に誘えばいいんだ。
そんなことを考えて明日呼べばいいやと思ってるうちに、二ヶ月なんてあっという間に消費してしまい、高校一年の夏は家で宿題をするだけという灰色一色の夏休みを過ごしてしまった。
問題はそれだけじゃない。補習が終わったあとは特に部活も無かったから音海と全く話していないんだ。
二ヶ月も話していなければどうやって話しかけてたのかも、どうやって挨拶してたのかも忘れてしまって、結局何もできない。
そんな事も考えてしまって二学期初日に音海と話すこともできなかった。
○●○
放課後、部室で本を読む。夏休みに本屋にこもっていて見つけた本なのだがそこそこ面白い。
まだまだ序盤だがここからどのように繋がっていくのか気になるところだ。
「部室懐かしいね」
そんな事を考えているといつの間にか音海がドアのそばに立っていた。
「そうだな」
音海はドアを閉めると入り口から一番近い席ではなく、隣の席まで歩くと腰をおろす。
「それ面白いの?」
「ああ、まだ序盤だけど結構面白い」
そう言うと音海は少し驚いたような顔をしてそれから優しい笑みを浮かべる。
「そっか」
「どうしたんだ?」
そんな表情の理由がわからず首を傾げると何でもないと言って少し笑った。
気にはなるが、音海が言う様子がないので聞かなくてもいいと結論づけると本を閉じて鞄に入れる。また家に帰ってから読もう。
「それで、今日の議題って決まってるのか?」
「今日はね、『寿命』っていうのはどう?」
「結構重そうな議題だな」
『寿命』、命の長さ、期間。
これに至ってはあの日からよく考えるようになった。
「無ければいいのにな」
「え?」
「寿命なんて無ければいいのにな」
寿命なんて無ければいい。だって、時間が有限なら必然的にできることも大きく限られてしまう。
「時間があれば何でもできるとは言わないけど、時間が無いと何もできないだろ」
実際、世界中の本を生きている間に読むというのは不可能だと聞いたことがある。
本だけじゃない。人との繋がりとか、そういうものも永遠の別れが存在する限り、永遠の絆なんていうものも存在しない。
それ以上に死ぬというのは怖いんだ。
自分だけが死んだその瞬間に世界から切り離されて
自分以外が進んで、置いてけぼりで
それが怖いんだ。
死後の世界の存在なんてわからなくて、死んだらその瞬間僕という存在は消えて無くなって、自分はそれに対して何もできないようなそんな想像をしてしまうのだ。
死んだことなんて無いから実際は知らないが、それでも知らない物は怖いんだ。
わからない物は怖いんだ。
「私は、多分あるからこそ今が楽しくいられるんだと思うよ」
「どういうことだ?」
「だって、限りがあるからこそ今のうちにこれをしよう。って思えると思うんだ。だって無限だったら今はやらなくてもいいや。後ですればいい。って何でも後回しにしちゃいそうで、結局すごく楽しいって瞬間が少ないと思うんだ」
それはまるでどこかの誰かの夏休みみたいな物で、悔しいけれど納得してしまった。
「そうかもな……」
「私はそう思ってるよ」
自信満々と顔に書いてある音海を見て、自分はまだ有限だとしっかり理解して日常を過ごしていないんだなと考えてしまう。
確かに、今までそんな風に考えた事はなくて、自分の『寿命の無い世界』を夢見るよりもよっぽど良い物だと思った。
「けど、寿命が無い世界っていうのも少し気になるね」
「寿命の無い世界、か」
「その世界ならその世界なりの人生の楽しみかたがあるかもしれないでしょ?」
そんな声に、久しぶりに話したのが嬉しかったからか、僕の頭はそれほど回っておらず、口から思った言葉がこぼれ落ちていた。
「だったら、僕が書くよ」
「え?」
「寿命の無い世界、面白そうだろ?」
そう言うと音海はきょとんとした顔になると目を輝かせた。
「それじゃあ最初に私に読ませてよ」
この日、家に帰った後頭を抱えたのは言うまでもない。
けど、いつの間にかいつものように戻れていたことが嬉しくて、まあ、これくらいいいかと思い直してスマホを鞄から取り出す。
残念ながら我が家にはパソコンが無く、文章を書くにはシャーペンとかでノートに書くか、スマホのドキュメントに書くしか無いのだ。
手で書くことに何か僕の知らないメリットがあるのかもしれないが、僕はスマホで書くことにする。
寿命の無い世界、か。
まずはタイトルから決めようか。今はまだ具体的な物は浮かばないからそれぐらいしかできそうに無い。
ああ、こんなのはどうだろうか?
『生限突破世界で生きる僕たちは』
タイトルは決まったがそれ以上何も出てこない。
でも今はそれでいい。
焦る意味なんて無いのだ。
締め切りがあるわけじゃない。
ふと頭に浮かんだ時に少しずつ書いていけばいい。
そう思ってドキュメントを閉じた。
友人に聞いて知ったんですが、この作品、pc投稿になっているそうな
書くのも投稿してるのもスマホなんだが……
と、投稿が遅れたのと短いのを誤魔化してしまおうと考えつつもできなさそうなので謝っておきます。
本当にすみませんでしたぁぁぁぁ!
そして失礼ついでにこれからも投稿頻度下がっていくかもです。
それでももしよければ読んでみてください。
最後に、今回も読んでくださった方、ありがとうございます。




