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『まずはそうだな。プレゼントとかはどうだ?相手が好きなものをあげたら好感度があがるんじゃないか?』
「そう、かなぁ?」
プレゼントかあ、どうだろう。
『そのレーネという少女の好きなものはなんだ?』
レーネが好きなもの……
「動物、が好きかな」
『ほほう』
「犬とか猫とかよく撫でてて餌あげてるの見るし」
『ふむふむ、犬や猫か………ぬいぐるみとかはどうだ?』
「ぬいぐるみ……」
レーネが犬や猫のぬいぐるみを抱きしめている姿を想像する。………いいな。うん、凄くいい。
「ぬいぐるみにしよう」
『うむ、それがいいだろう』
そうと決まれば、
「ぬいぐるみを見に行こう」
ぬいぐるみの専門店にやって来た。
……来たはいいが、入るのには中々勇気がいる。
「………」
そっとショーウインドウから中を覗く。小さい女の子の家族ずれでいっぱいだ。
場違いだ。完全に場違いだ。
『……どうした、入らないのか?』
「うっ……」
……レーネの、レーネのためだ。
「男は度胸!」
そう気合いをいれて、店内へと入った。
「しっ失礼しまぁーす……」
小さく呟く。なんだろう、なんか凄くやましいことをしてる気分になってくる。
軽く店内を見渡す。いろんな種類のぬいぐるみがある。とりあえず猫のぬいぐるみに近づく。
『おおー、かわいいなあ』
女神様が呟いた。確かに可愛い。レーネがこんなの抱きしめてたら可愛すぎてもう………って、意識が飛んでた。
頭を振って煩悩を消し去る。考えないようにしよう。
改めて猫のぬいぐるみを見る。
『……ふーむ、猫のぬいぐるみだけでこんなに種類があるのかぁ』
「どれがいいかな……」
レーネに合うのはどれだろう?黒い猫は目が鋭くて格好いい感じで、白い猫は目が大きくて可愛い感じで、赤い猫は目を閉じて寝そべっている。
『青い猫も知的で良いなあ』
「うーん……」
どれも凄く良くて中々選べない。
……そういえばこれ、いくらなんだろう?
青い猫を手に取って値札を見る。
「……!」
………無理だ。高い、高すぎる。買えない。
「……」
帰ろう。さすがにこれは無理。
青い猫を戻して出口へと向かう。
『ちょ、どうしたんだ?』
戸惑っている女神様を無視して店から出た。
噴水の前のベンチに座って頭を抱える。
「高い、無理」
『……そうか』
これだけで女神様はすぐに理解してくれた。
『そうすると、もう作るしかなくなるんじゃないか?』
「無理、裁縫苦手」
『おっおう……』
女神様が引きぎみに返事をする。
どうしよう。
『………ならぬいぐるみ以外の良いものを、探すしかないな』
「ぬいぐるみ以外の良いもの?」
それって何?
『とりあえず、そこら辺に出てる店を見て回ったらどうだ?』
出店が並ぶ道を進む。良いものはないかとキョロキョロと辺りを探す。
『どうだ?良いものは見つかったか?』
「いやー中々……」
それほど興味を引かれないものばかりだ。
『……そう簡単にはいかないか』
「うーん、あ」
興味が引かれた。そこに近寄っていく。
「……あの、これ何ですか?」
そういって綺麗な飾りのついた棒を指差す。
「ん?これかい?これは簪という髪飾りだよ」
「髪飾り……」
これなら、どうだろう。
『簪か……いいんじゃないか?』
「うん、これください」
「はいよ、毎度あり」
俺はお金を支払い、簪を仕舞った。
「喜んでくれるかな……」
『喜ぶだろうよ。大丈夫だ、自信をもて!』
「……うん、ありがとう」




