九幕 街の長
切り悪すぎ、上げる側も気持ち悪いくらいに中途半端。
次何か書くことがあったら絶対なろう意識して書いてやる、なんで毎回切る場所で悩まにゃならんのだ。
さっきまでの親し気な雰囲気が一切なくなった語尾がニャじゃないベルさんに連れられて入った応接室は、他の部屋と同じ土壁ではなく平たく加工された石壁だった。
明るさは魔石で確保してはいるものの窓がなく、風の通りが一切なかった。
「君が昨日ここに入ったっていう魔族のメアだな? まずは謝罪しよう、さっきの扉には防犯の為に魔法がかけてあったんだが、それを切り忘れていた、申し訳ない。」
そんな部屋の中に居た男からそんな声がかけられた。
男の見た目はオオカミ男といった格好をしており、体格もそれなりに大きい。
この応接室大丈夫かしら? 明らかに声をかけてきたオオカミ男の大きさに合っていない。
「貴方がここの長かしら? ご存知の通り私はメアよ、よろしくね」
……。
あ、マズイ……普通に話しちゃった。
「そうだ、俺がこの街……いや集落の長だ、名前をジルベルトという、ジルと呼んでくれ」
ジルベルト……ジルさんは気にしてないみたいね、面倒だからこのままでいくわ。
「さて君のことはベルスターからの報告で聞いている、魔術が使えるそうだな?」
ベルスター……誰かしら? そう思ってベルさんに目線を向けるとちょっと目を背けられてしまった。
ベルさんってベルスターって名前だったのかしら? 別に変な名前だとかは思わないけど……まぁいい
わ。
「魔術なら使えるわ、確かベルさんにも見せたわよね?」
覚えてないだろうけど。
「それも報告で聞いている、しかしにわかには信じられなくてだな……一度ここで使ってみて欲しい」
ここで?
「いいのかしら? ジルさん達からしたら怪しげなものなのでしょう? いきなり長の前で使わせるのはどうかと思うわよ」
「……そこはベルスターが信用足ると判断した結果だ、問題があれば俺とベルスターの責任だな」
「そう……なら安全な魔術を使うわ、安心して」
元より危ない魔術を使うつもりはなかったが、余計に使うわけにはいかなくなったわ。
「誰に使えばいいかしら? 誰でもいいわよ」
「顔見知りの方がいいだろう? サロ! 入ってこい!」
サロ……誰だったかしら?
「昨日ブリダナ嬢チャン、元気シテタカ?」
あぁ……最初に会った猪頭のゴブリンね、そういえば昨日名前を聞いた気がするわ。
「どうもサロさん、昨日はお世話になったわね」
「タイミングはいつでもいい、君のタイミングでサロに魔術を使ってくれ」
再開の挨拶もそこそこに、そんなジルさんの言葉で流れが戻される。
「分かったわ、それじゃあ早速……怖くないわよ? 安心してね」
ゴブリンのサロさんは堂々と立ってはいるものの、目に見えて足が震えていた、なんか……凄く申し訳ない気分だわ。
「じゃあいくわ」
最初の言葉は方向性、なるべく安全で怖くないようにだから……
「ふかふか枕に暖かお布団!」
気が抜けるくらいの詠唱が丁度いいわ。
「スリープ(sleep)」
言葉と共に手を突き出し、軽くサロさんの頭に触れる。
「……zzz」
すると瞬く間にサロさんが倒れるようにして眠ってしまった、そして倒れたサロさんをベルさんが支えていた。
「今のが魔術か? 本当に魔石が要らないんだな……」
「これでいいかしら? まだまだ見せれるわよ?」
「いや十分だ、ありが「何するんですか!(バシーン!!)」と?」
ベルさんが対処していたから大丈夫だと思ってジルさんと話していたら、いきなりベルさんの叫びと平手打ちの音が聞こえてきた。
「ンガッ! ……アァ? 痛テェ……何事ダ?」
「何事じゃありません! 何ですか! いきなり女性の胸部に顔を埋めるとか信じられませんよ!」
「アァ? ナンジャソリャ?」
……?
あぁなるほど。
「なあメアさんよ、一体サロにどんな魔術を掛けたんだ?」
「……別に変な魔術は使ってないわ、単に私が知る限りで最高だったベットの寝心地を最初級の催眠魔術で感じさせながら眠らせただけよ」
ここのベット質が良くなさそうだったから。
「つまりサロのセクハラは本人のせいってわけだな?」
「……ジルベルト様! 少々席を外させていただきます! サロに異常がないか確認してまいります!」
「ほどほどにな」
「アァ? ……アァ?」
いまいち状況が掴み切れていないサロさんを引きずるようにしてベルさんが退出していった。
「さて話を戻そうか」
ベルさんとサロさんの退出の後、しばらくしてベルさんだけが帰ってきた、南無。
「さっきのが魔術で間違いないな?」
「そうよ、催眠魔術の初級のスリープね」
「たしかに報告にあった通り陣も魔石も使っていなかったな」
むしろ私からしたら使う方が分からないわ、入り口の防犯の魔法だって仕組みがさっぱりだもの、罠にかけられたら逃げられるかしら?
「最初の……なんだったか? ふかふか枕に暖かお布団だったか? あれには意味があるのか?」
「あれは魔術には必要な言葉よ、言葉自体は決まってないけど何かは必ず言う必要があるの、言わないと何が起こるか術者にも分からなくなるわ」
あえて暴走させることもできるけどね……最悪魔力の過剰消費で死んじゃうこともあるけど。
「必ず? どんな言葉でもいいのか?」
「そうよ、かつての勇者は「朧!」とか「無花果!」とか言ってたらしいわ。ありきたりなところで言うと「はぁぁぁぁああああ!」みたいに叫ぶだけの術者も居たし……好みの問題じゃないかしら?」
雷が苦手な人が雷っぽく詠唱したら凄まじい威力の魔術になった事例もあったし……イメージにしやすさの問題だと思うわ。
「それは誰でも……俺でも使えるのか?」
魔術を使うための適正は誰でも持ってる、でも実際使えるかは別問題だから……。
「ジルさん次第じゃないかしら? 少なくとも絶対無理ってことはないわ」
「そうか……」
「……」
「…………」
ありゃ? 黙り込んじゃったわね……魔術教えてほしいかしら?
「なぁ……あんたはいつまでここに居るつもりだ?」
君からあんたに呼び名が変わったわね。
「私は外がどれだけ危険か分からないわ、だから分かるまで……危険じゃないならフラフラとそのうち勝手に出ていくつもりよ」
「もしだ……もしここに長く滞在してくれるなら魔法を教えてやる、望むなら魔石もくれてやる」
一切分からない技術だったから凄く興味はあったのよね、でもその対価って……
「その代わりにジルさんは何を望むのかしら? 魔術かしら?」
「それもお願いしたいがそれよりもだ、俺たちは『星』と戦っている」
「『星』?」
「『星』って名前は本人がそう自分を呼んでたからだが……奴は魔法工学技術の発展が気に食わないらしい、奴の手勢の天使や妖精に所要な都市は襲われ続けている、ここを街と言わない理由はこれだな、街と呼ぶと『星』に見つかりやすくなるらしい。さらに豊かな大地すらも奪われこのような荒れ地に追いやられている。奴曰くこれは」
! まさか。
「星の導きだ……とでも言っていたのかしら?」
ジルさんがその言葉を告げる前に横入りして言葉を差し込んだ。
「あ? 知ってたのか? じゃあ説明は要らないな」
言葉を被せられたせいでちょっと不機嫌そうにそう告げた。
……星の導き
この言葉はかつての私にとって聞きなれた言葉だった、そしてその言葉と共に天軍を率いていた者のこともよく知っている。
まだ死んでなかったのね、それとも代替わりしたのかしら?
前回思いつきで小説がどうの書きましたが、あれも他の案も書く気はないです、思いつくだけ。
だって面倒だもん