四幕 街の案内人
やっぱり区切りが悪い、そしてだいぶ書いてるうちに設定変わっていることにちょっと困惑しました。
それにしても予約投稿なんてあるんですね? そのうち使おうと思います。
魔法について聞きたかったけどそれは監視の人に聞きましょう、隊員さんたちもお疲れみたいですし。
無言のまま時間が過ぎていく、何もしないのは暇だったのでレイヴで遊んでいたら部屋の扉が開いた。
「連レテ来タゾ、コイツト一緒二行動シテモラウコト二ナル」
連れてこられた人物は背が高かった、ゴブリン族の二倍ほどの背丈で女性である。
ゴブリン族の誰かが来るものだと思っていたので視線低かったが、合わせて視線を上げる。
腰は少しくびれがあり、胸は大きめ、顔を見ると頭に猫の耳が付いていた。
ワーキャットだろうか、まさかゴブリン族の集落にいるとは思っていなかった。
「はじめまして、君が不思議なお嬢さんかニャ? ウチはここに住んでるワーキャットのベルだニャ、宜しくニャ」
丁寧にあいさつをしてくれた、礼儀には礼儀を返すべきよね。
「はじめまして、私はカースドールの……メアよ、これからお世話になりますベルさん」
私は人形、その時々によって私の呼び名は違っていたから、どれを言うか迷ったけど、最後に付けられた名前でいいわよね、気に入ってるし。
「ん、普通にいい子だニャ、魔族みたいだし多分問題ニャいニャ」
「ソレジャア後ハ頼ミマス、マタナ嬢チャン」
それだけ告げると扉に消えていくゴブリン達、ゆっくり休んでくださいな。
「それじゃあウチ達も行くかニャ、ついて来るニャ」
そういって扉に向かうベルさん、私もその後ろについていく。
「色々話はあるけど、それは家に着いてからニャ、何も持ってニャんだったニャ?」
お金も食べ物も何にも持っていない、むしろ監視が付いて良かったのかしら。
「まったく……ピクシーめ、本当に厄介な奴だニャ」
ピクシー? たしか妖精族だったような……
ピクシーって確かイタズラ妖精よね、旅人を惑わすことで有名な。
やってることはイタズラの範疇だけど、積み重なるとバカにならない、一回それで魔界軍が撤退せざるを得なくなったことも有ったっけ。
あの時は大変だった……飛び交う武具、居なくなる指揮官、そこを狙って攻めてくる勇者達。
天界軍が仕向けたみたいだけど、本当に厄介だったわ。
でも……何で今ピクシー? 厄介なのは同感だけど。
「どこも似たような造りだから迷わニャようにしっかり付いて来てニャ~」
集落の中はそれなりに活気に溢れていた、峡谷の中をそのまま街にしている。
彼らは集落と言ったけどこれは立派な街だ、先ほどの魔石を利用した街灯に歯車と滑車を利用した運搬装置。
底にある大きな煙突が付いた建物からいきなり煙が吹き出した時は思わず声をあげちゃったわ。
ベルさんに色々説明されていくうちに一つ分かったことがある。
どこにも魔術が使われている様子はない、時代は変わったということかしら……
「とりあえず詳しい話しは中で聞くニャ、上がってニャ」
案内されたのは壁を掘って部屋にしたような場所だった、扉の前にベルと書かれているだけで、他の部屋と全く見た目が同じ……確かにこれは迷いそう。
「何にもニャいけど適当に座ってニャ、そのうち椅子が欲しいんニャけどね。」
部屋の中は本当に簡素であった、干し草の寝床に木の机、部屋にひとつだけある扉の隣の窓には花の植木鉢がおいてある。
「ニャはは……来客なんて考えてニャかったから座るところがニャいニャ……」
確かに一人なら十分でしょうけど二人だと狭いわね、私は狭いところは好きだけど。
「大丈夫ですよ、私は人形ですもの……柔らかいクッションも何も必要ないわ」
「ニャはは……申し訳ニャい」
気を使わせたかしら? 本当に大丈夫なのに。
ぎこちないなりにもお互いに座った、ようやく一息をつけそうね。
「じゃあそろそろ聞かせてもらうニャ、後敬語はいいニャよ」
やっぱり違和感があったかしら? 慣れない言葉は使うものじゃないわね。
「分かったわ、私はこの言葉使いに慣れてて……ごめんなさいね」
「いいニャいいニャ、それよりもメアちゃんはピクシーに身ぐるみ剥がれて拐われたんニャよね? そういうのたまにあるニャ」
なるほど、さっきピクシー発言はそういう意味だったのね、実際には違うけどうなずいておいた方が良さそう。
アルフェスから来たって言ったけど、それは伝わっていないみたい。
あの隊長さんが隠したのかしら? 大方説明が出来なくて理由をでっち上げたのだと思うけど。
「そうね、あんまり覚えて無いけどそうだと思うわ、かなり昔の話だから確証は無いけど」
かなり昔ってことにしておけば多少の食い違いはカバー出来るでしょう、実際かなり昔から来たわけだし。
「今まではどこに居たんだニャ? サロからはギャップで転がってたって聞いてるニャ」
ギャップというには拓け過ぎていたような気もするが、まぁギャップなのだろう。
それよりもあのゴブリンの隊長さんはサロって名前だったのね、憶えておこうかしら?
どうせ忘れそうだけど。
「山に埋もれた洋館の中に居たわ、そこでずっと眠ってたのよ」
証明のしようがないから信じてもらえるかしら?
「嘘ニャ、サロはメアちゃんが記録にも残ってないほど昔の国から来たって言ってたニャ、そんな昔から山の中に居て生きていけるわけないニャ、食糧はどうするのかニャ? どこかから支援を貰っていたんじゃニャいかニャ?」
あぁそういうこと、入れはしたけど信用はしていないのね。
「人形は何も食べないわ、生きるのに光も必要ないのよ」
無駄に嘘なんて言わないわよ。
「じゃあどうしてそんなに昔の人形が、そんなにも劣化せずに綺麗ニャのかニャ? ピクシーに攫われて山に入ったニャら替えニャんか持ってニャかったはずニャ」
いいところを突いてくる、そこの説明は難しいのよね。
「魔術の力……じゃダメかしら?」
実際には良く分かっていないのよね、材質かいいのかしら? まぁ魔術のおかげってことにすれば何とかなるのが私の魔術、理由なんてテキトウで問題無しよ。
「ダメニャ、その……魔術? でどうやって劣化させニャかったか教えてもらうニャ」
さて……なんて言おうかしら。
「私は催眠の魔術だけじゃなくて空間の魔術も少し使えるのよ、ちょっびっとしか使えないけど……体が劣化しない空間を作るくらいは問題無しよ」
嘘ばっかりじゃないけどこれは嘘、私は空間の魔術も使える、確かに普通は一系統しか使えないけど、それは万全に使えないってだけ、そもそも催眠の魔術は空間の魔術の発展型だからそこは気にするところじゃないわ。
「じゃあどうやってその魔術のエネルギーはどこから持ってきたんだニャ? エネルギー無しに維持できるわけないニャ」
? できるんじゃないかしら、確かに私は人形だから動くのに魔力は必要、でもずっと寝てたのだもの、それくらい自然回復で回せるわ。
「それは魔法だったかしら? それの話だったら魔術と魔法は別物よ、魔術で使う魔力は自然回復だけ、持て来ることなんてできないわ」
古い物には魔力が溜まりやすい。私は苦労したことないけど、皆やり繰りに苦労してたわね、懐かしいわ。
「ニャ~……そう言われると確認しようがニャいニャ、とりあえずその魔術を後で見せてもらうニャ」
「わかったわ、問題なしよ」
見せるくらい簡単にできるわ、派手なの使おうかしら?
「その代わりに魔法を見せてもらえないかしら? ちょっと興味あるのよね」
もしかしたらまだ魔術の改良ができるも知れないわ。
「多分大丈夫ニャ、それじゃあ……他に聞くことはあったかにゃ?」
私に聞かれても答えようがないわよ。
どうせ後で魔術も見せるし、他は多分言っても伝わらないでしょうね。
「こういうのは慣れてニャいニャ……後で魔術を見せてもらう、それだけで大丈夫ニャいはずニャ?」
「大丈夫なんじゃないかしら?」
「じゃあ今からその魔術を見せてもらうニャ、場所はどこがいいかニャ? 準備には何が必要かニャ? 他にも必要ニャ物があれば教えてニャ」
必要なもの……知識と魔力ね、それ以外要らないわ
「特に用意が必要な物は無いわよ、場所もどこでもいいわ、それじゃあ行きましょうか」
スッと立ち上がる私に驚きの目を向けるベルさん、そしてレイヴ? 貴方はどうして頭の上に乗るのかしら? 今までそんな事したことなかったじゃない。
レイヴは人形だから重くないし邪魔にもならないけど……いつも抱いていた物がないと落ち着かないわね、まぁ気が済んだら降りてくれるでしょう、その時にまた抱けばいいわ。
「ニャ~……本当に何も要らないのかニャ? 魔石が必要でも問題ニャいニャよ?」
ここで必要だと言えば魔石が貰えるのかしら? 魔術には使わないけど欲しいわね。
「……魔術には必要ないわ、でも後で貰えるかしら?」
無駄に嘘をつく必要はないわ、ここは正直にね。
「魔術って凄いニャね……それがあれば森に住めるかも?できたらいいニャね」
急に小声で呟き始めたベルさん、聞こえはしたけど触れない方がいいかしら?
「魔石をあげるのは難しそうだニャ、でも貸すのはできそうだニャ」
あら残念、でも触らせてもらえるならそれでいいかしら。
「それじゃあ付いてきてニャ、訓練場に案内するニャ」
そう言うとベルさんは立ち上がり、部屋から出ていく。
心なしか来たときよりも歩きが速い気がする、何故かしら?
いやマジで……設定変わりすぎなのよ、勇者なんて登場させるつもりなかったのに書いてあるから出さなきゃいけなくなったよ……何とか回収してみるけどさ。