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Marionett‘s Memorial  作者: DEER
三章 悔いる悪夢は夜闇の奥に
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二十九幕 継ぐ者

短い!

「もはや懐かしいの」

行く準備は既にできておる、便利な魔術がいくつも開発されたお陰で、準備と言う面においては凄く楽になった。


「……ザック、四日前」

むう? そうじゃったな、そういえば四日前もここに来たな。

「この歳になると全てが懐かしく見えるんじゃよ、ほれ、時間がない、行くとするか」

大丈夫じゃ、まだボケてはおらん。


かつて儂が勤めて居た研究棟、国立の研究機関に足を踏み入れる、儂の研究室は地下だった。


「はぁ……はぁ……ザック教授!」

研究棟では考え事をしながら歩く者が多い、だから走るのはマナー違反なのだがのう……。


「これ! いつも廊下は走るなと言っておろうが! そんなに焦らんでも逃げはせんわい」

どうにもコヤツは落ち着き無くてならん、ずっと指摘し続けているのにのう……。


「はぁ……教授は逃げるじゃないですか! 何も言わずに旅に出るし、顔を出さずに訪問者を押し付けてきますし!」

そりゃ一々報告するわけなかろうに、もう儂は一線を退いておるのじゃぞ?


「それで、今日は一体何を押し付けに来られたのですか? まさか旅に出る連絡じゃないですよね?」

まったく……一体儂を何だと思っておるのじゃ。


「旅に出る報告じゃ、それだけでも無いがの」

後を託すにはまだまだ心配じゃが……人は成長するものじゃ、心配ばかりしてもおられん。


「そんな……バカな……教授がわざわざ連絡しに来るなんて……明日は快晴ですかね?」

何十年も太陽が顔を出さないせいか、あり得ないことの例えとして「明日は快晴だ」という言葉が生まれておる、悲しいのう。


「そうじゃな快晴になればいいのう、さて、詳しい話はお主の部屋で話すとするわい、入っても構わんな?」

「ええ大丈夫です、丁度整理したところでしたのでスペースも空いてますよ」

昔儂が使っていた部屋はコヤツに引き継いだ、だからかのう……整理に関しては煩いのじゃ。


「……ザック、片付け苦手」

ええい笑うでないわ、アリスだって何も言わんかったじゃろうに。

「それではこちらです」



研究発表の評価は普通といったものじゃった、じゃが儂はコヤツを真っ先に選んだ。

どこか見ている先が他の者と違ったのでのう、面白いから選んだと言うのが本音じゃ。

まさかここまで成長するとはのう、不思議なものじゃ。


弟子の背中を見ながら感慨しく思う、コヤツ、いやブランカは立派な研究者になった。

もう儂が伝えるものは無い、そう思うのじゃがブランカは儂の下から離れようとせん、独立して自分の研究をすればよいものを。


「それでは中へどうぞ」

そんなことを考えていたら部屋についた。


「それじゃお邪魔するかの」

ブランカは儂が最も信用する研究者じゃ、引き継いでも問題なかろう、必ずや世の中に役立てる、若しくは封印してくれるはずじゃ。



「それで、旅以外の要件って何ですか?」

長いこと共に研究してるためか、どうにも考えが読まれがちじゃな。


「これを、渡そうと思っての」

儂はポケットから一つの鍵を出す、魔術的な施しがあるものの、いたって普通の鍵じゃ。


「この鍵は……もしかして棚の裏の扉ですか?」

「察しがよくて助かる、そうじゃあそこの扉じゃ、それとこれを渡しておく」

儂は反対のポケットから半透明の石を取り出す。


「? これは分かりませんね、一体なんでしょう?」

「その鍵の先に全てをおいてある、ブランカなら分かるじゃろう、どうするかは自由じゃ、後は任せたぞ」

儂がここに来た理由は研究を託すためじゃ、これでもう心残りはない。


「ああ、そうじゃ扉を開けるのは一週間後にするといい、そうした方が何かと都合がいいのじゃ」

見たら何を言われるか分からんからの、儂らが出てからの方がよい。


「? ……分かりました、今確認してまいります」

コヤツ聞いておったのか?


「待て、そう急ぐでない」

「いいえ今入らせて頂きます、教授がわざわざ来ることもそうですが、何か嫌な予感がします、止めても入りますからね」

むぅ……不味いの。


「それでは、無駄だと思いますが言っておきます、ここから出ないで下さい」

ガシャーン!

整理したばかりのはずの棚を豪快に薙ぎ倒し、強引に扉までの道を作って扉の向こうに消えていった。


「だからってここまでする必要は無いじゃろうに……アリス、逃げるぞ」

お言葉に甘えて逃げるとするかの、まぁ三日四日じゃあの量は読みきれんじゃろ。


残り字数を計算していませんでした。

そして悲報 ストックが完全になくなりました。

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