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短編 天才科学者の計画

作者: さとるぅ

「出来た・・・ついにできたぞぉぉ」

やせ細った顔にサングラス、髪はボサボサで白髪、見るからに怪しい1人の男が歓喜の声を上げている。

ついに、人類を滅亡させるであろう、ウイルスを作り出したのだ。


性善説、という考えがある。

人は先天的に善の性質を有しており、悪というものは後天的に人の善性を汚損して生まれる。

大雑把に言えばこう言った考えだ。

しかし、この男からはそんな説は唱えようもない。


この男、山田 さとる は産まれながらにして完全なる悪であった。

生き物が近寄れば意味もなく殺し、それをなんとも思わなかった。他者への共感はなく、ただ己の欲望のみによって行動する。群れることはなく、道徳心のかけらもない。

この男の一体何処に善性があると言うのだろうか。

今、この瞬間にも、ただ自分の能力を知りたい、それだけの理由で人類を滅亡させるであろうウイルスを作り上げてしまったのだ。


男が作り上げたウイルス。


その名もプー太郎ウイルス(PTV)。

このウイルスは感染したものの理性をなくしプー太郎にしてしまう、恐ろしいものであった。

また、このウイルスに感染したものは人を噛む。

傷口からすぐさまウイルスに感染し、噛まれた人間もプー太郎になってしまうのだ。

まったく、道徳性を持たない天才というものは恐ろしいものである。

「ふっふっふ、第一感染者は誰にしてやろうか」

悪の塊である、さとる博士が第一感染者として選んだのは実の弟であった。この男は家族に対する愛情すらないのである。

「さあ、弟よ兄のために死んでくれ、社会的に」

背後から弟に忍び寄ったさとる博士は首筋に注射器を打ち立てた。

プスっチュゥゥゥ

ウイルスが弟の体内に注入されていく。

みるみると弟の顔からはやる気、元気、そういったものが抜けていっていた。

ウイルスが狙い通りに作用しているのは間違いない。

「ふはははは、成功だ、ふははは」

成功の喜びでさとる博士は高笑いをする。

「さぁ、弟よ街へでよ。人を噛め、人類を全てプー太郎にするのだぁ」


「やだよ、兄さん僕は働きたくないんだ、兄さんが人を噛んで来なよ」

弟はプー太郎になってしまっていた。

天才が作ったウイルスにも欠陥があったのだ。

プー太郎となった人間は働かない。

外に出ることも少ない。自分から人を噛むなどということもやる気がでないので、やらないのだ。

さとる博士はだらしのない弟を見て、苛立ちをおぼえた。

「命令を聞かないのであれば、殺処分だ!!」

その言葉は冗談ではなく本物の殺意がやどっていた。

しかし、弟はそんな事など気にも止めない。

ポケットからスマホを取り出し、寝そべって動画を見ながら屁をこいていた。

「殺してやるっ!」

さとる博士は胸元から光線銃をとりだし、弟に向けて発射した。しかし、弟はそれをするりと躱す。

するりと躱すと言ったものの、光線銃をである。

光の速さで放たれる光線銃をいとも簡単に躱したのだ。

「何をするんだい、兄さん危ないだろう」

そう言うと弟はあっさりとさとる博士から光線銃を取り上げてしまった。

こんなことは普段の弟ではまったくもってできるはずのない芸当である。

ウイルスの副作用によって身体能力が爆発的に上昇していたのだ。さとる博士には弟を殺すことはできなかった。

こうして、さとる博士は最強のプー太郎である弟を養っていくことになってしまったのだ。

「こんなウイルス、作らなければよかった・・・せめて空気感染にしてれば・・・」

さとる博士は激しく後悔するも、一度進んだ時計の針は戻らないのであった。




皆さん読んでくれてありがとうございました!!


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