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ネコにごはん  作者: 三波直樹
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森崎の変 前編

 私、森崎は代謝がすこぶる良い。飲食店に取材へ行くと、物撮り用の料理を用意してもう間にお話を聞き、撮影後には撮影する料理以外の試食を出してもらえることも多々ある。私としては食費も浮いて美味しい料理が食べることができて嬉しいのだが、スケジュールが混み合うと一日に三件や四件、営業時間前やランチとディナーのお昼休憩や仕込みの時間にお店に行かなくてはならないことが多い。同伴者が女性だと一口食べて「森崎さんあとお願いします」とお願いされる。しかし私は代謝が良い、喜んで食べるのだが、必ずコーヒーを出してもらえる。それも森崎は嬉しい、家ではインスタントだが、私はコーヒーが大好物なのである。

 さて、問題はここからである、私、森崎は代謝がすこぶる良い。お店を出て車に乗ると「もよおす」のだ。もう少し前ならお店で、もう少し後なら会社で、なのに三十数年この身体で生きているのに唯一コントロールできないのは腸だ。腸には「第二の脳」があると言われているが、昭和のドッキリ番組でも制作していたんじゃないかと疑いたくなる思考をしている。「お手洗いに行きます」私は正直に生きてきた、「人の意見を聞きなさい」そう親に教えられて守ってきた。その森崎が「行きます」と宣言したのだ、シフトレバーをパーキングに入れてサイドブレーキをかけながらシートベルトを外して、厳密に言うと言いながらもう「行っていた」のだ。どうして今日の同伴が彩弥ちゃんなんだ。「森崎さん頑張って」彼女の声援を背に受けてデパートに駆け込んだ。きっと彼女も噂に聞いていたんだろう、「森崎の変」それはいつも突然に。

 どうして一階の化粧品売り場には男性用お手洗いがないんだ、差別だ。入口付近にあるフロアガイドの文字を読んでいると目の前が白くなる。一階、化粧品、コスメティックナビゲーション。二階、インターナショナルブティック、免税手続きカウンター、サービスカウンター、インフォメーションカウンター。三階、婦人靴、ハンドバッグ、婦人服飾雑貨(男性用お手洗いマーク)。階段は危ない、密室になるエレベーターもリスクがある、十二階のレストラン街へ直通の場合もある、エスカレーターが無難だろう。


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