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Beardead Gold Bear  作者: 大隈寝子
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BGB 番外その1「白」

注意書きです。

この番外は読まなくとも本編は読み進められることはできます。

また、この番外を読まずに先に完結まで読んでいただいて見るという方がいいかもしれません。

個人的にはネタバレが全然大丈夫という方はこの番外を読んでいただいた方がいいかも?といった感じです。

ネタバレとかねーわー無理だわーという方は一旦飛ばしていただいて全部終わってから戻って来て頂ければ、と思います。

だったら最初っからこの順番であげんじゃねぇよという話ですが、そこは作者のジコマンです。

ご了承ください。

(あと一回か二回ほど番外は予定しています)


それでは、どうぞ。


 タイヨウが異界へと落とされたのとほとんど同時刻。

 地球のはるか彼方、ヨーロッパのとある城。

 その広間に二つの人影があった。

 一人は広間の中央に。

 白の衣服をまとったその身体は細く押せば倒れてしまうのではないかというほどに薄かった。

 ふてぶてしく、その視線を睨めつける。

「直々に俺を呼びつけるとはどういうつもりですかね」

 挑むように問う。

 問われた者は、その男から直線上に座していた。

 さながら王のように。

「まぁうすうす感づいてはいるだろう?」

 響くほどに低い声。

 そして敵意にすら近い挑発を意にも介さない泰然自若。

 しかしその態度とは裏腹にその格好は質素だった。

 どこかの民族衣裳のような黒を基調とした薄布、それだけだった。

「討伐対象でも見つかったんで?」

「ご名答。まぁここからかなり距離はあるんだがね」

「……どこです?」

「日本の上空だ」

「本当に遠いじゃねぇか」

 チッ、と白い男は愚痴をこぼす。

「そもそも次は“青”の番だったはずでは?」

 彼らは名前で呼び合うことはしない。

 それはそこまで馴れ合うつもりはないという意思の現れでもあるが同時に“術式”的意味合いを持つ。

「彼はこないだので手痛くやられたらしくてね。まだ快復してないらしい」

 軽い世間話のように言う。

「情けねぇ。“主神”相手でもねぇのに。制裁案件じゃないんですか?」

 彼らが狩るのは“神”だ。

 “青”と呼ばれる人間は失敗こそしなかったが、勝利の油断のすきに厄介な相手に遭遇したのだ。

「そうでもないさ。“マオウ”が出てくるなんて彼は愚か僕も予想はしてなかったしね」

「“マオウ”……?アイツが出て来たんですか?」

 半信半疑を言葉にのせて白い男は聞く。

「ほんの少しね。気まぐれだろうけど。それはともかく、まぁそういうわけだから“白”である君に出番が回ってきたって話だ」

 神という人間の相対すべきでない存在、それに勝利することは当然という前提の元に会話はすすむ。

「君としても多く戦えるのは楽しいことだろう?」


 “白”と呼ばれた男は城を出て雪の残る道を歩いていく。

 正直なところ彼の心中には神を殺れるという昂ぶりよりもめんどくささがうずまいていた。

 つい先日、南米で一柱の神を狩ったばかりだ。

 もう少し、ただの気分ではあるが、間をあけたかった。

 とはいえ、あの男の言うことならばどうしようもないのだが。

「さて」

 不意に“白”は立ち止まる。

 どこを見るでもなく、ただパチンと指を鳴らし音を響かせた。

「日本か……」

 空気に渡るその音に術的な意味がのる。

 男を中心として円を9つ伴う魔法陣が出現した。

 それぞれの円から巨大なクレイモアが9。

「切り従えよ。従え、理を囚えよ。そして理を切れ」

 男の力量からすればあまりに簡単な、そしてあからさまな呪。

 しかし現れた大剣はそれに答えそれぞれがひとりでに動き出した。

 その剣筋全てが光となって宙に残る。

 ものの数秒としないうちに、それは世界に表出された。

「……いくか」

 白と金で彩られた機関車らしきものに“白”は乗り込む。

「動け、行き先は日本だ」

 ほどなくして、音をたてずにその列車は空へと走り出した。

 車両は十両。

 “白”はその先頭に乗る。

 後ろの九両はただのかざりだ。

 豪奢な椅子に眠るように腰掛ける。

 どうせ明日には神に相対しているだろう。

 ならば今は休息をとっておいたほうがいい。

 そう言うほど疲れてもいないのだが。

 かといって術式に準備がいるようなタイプの術者でもない。

 むしろ“白”はこう考えていた。

 神相手に準備が必要な術式を携えて臨むようでは勝利はありえない、と。

 神は常に人間の理の外にある。

 その道理に外れた存在に対応しきるには、初撃だけで決めようとするような心構えでは勝てない。

 あくまで対等でなければ。

 そう在ろうとしなければ、神にも、そしてこれからの目的においても生き残ってはいけないだろう。

 “神敵”と称される自分たちは統括する“黒”以外その構成員の術式を把握していない。

「そういえば」

 言いながら、以前会った中年の男を思い出す。

「“青”はやたらと用心深そうな男だったな」

 思い出したきっかけは後方にいた。

 先頭より後ろ全ての車両に同時に何かが入り込んだ。

 10人。

「敵の領域内に、しかも明らかに劣っている連中を送るとは」

 立ち上がる。

「この“白”相手になめたことをする」

 侵入した10人はいずれも青をモチーフとした装飾品を身につけていた。

 “青”に心酔する、いわば門下の人間だ。

 それが独断か、あるいは“青”の指示かは判然としないが。

「まぁ、斬ればいい」

 先手は向こうが打ってきているのだ。

 殺したところで“青”も責めてはこまい。

 むしろそれで文句をいってくるようなら斬り伏せにいく理由にもなろう。

 そんなことを雑に考えながら、一両目と二両目の間にたつ。

「……一応話は聞いてやろうか」

 二両目に入る。

 間もなくして、術式の炎が“白”を襲った。

「一応、俺は“源蝕”なんだがな。もうちょっと敬意ってものを払ってもいいんじゃないか」

 殺人の意図が込められた術式の炎を軽く手で払う。

 その瞳に映っているのは青のマントで身を隠した人間だ。

「ところで、お前達は独断か?それとも指示か?」

 問われた人間は何も言うこともなく、突っ込んできた。

「愚策だな」

 その態度に対する返答は一言と、横一閃に広がった剣撃のみだった。

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