BGB 番外その2「到達」
注意書き(再掲)です。
この番外は読まなくとも本編は読み進められることはできます。
また、この番外を読まずに先に完結まで読んでいただいて見るという方がいいかもしれません。
個人的にはネタバレが全然大丈夫という方はこの番外を読んでいただいた方がいいかも?といった感じです。
ネタバレとかねーわー無理だわーという方は一旦飛ばしていただいて全部終わってから戻って来て頂ければ、と思います。
だったら最初っからこの順番であげんじゃねぇよという話ですが、そこは作者のジコマンです。
ご了承ください。
音もたてず、その機関車らしきものは夜空を走っていた。
「全くもって不愉快だな」
目の前で転がっている人間だったものを見る。
視界に収まっているのは一つだが残りのいくらかも似たようなものだろう。
ちょうどあばら骨のなくなるあたりを横に一閃。
「たかだか手下ごときが源蝕のメンバーにかなうわけがないだろうに。可哀想にな」
心にもない悲嘆を口にする。
結局のところそれが同じ源蝕のメンバーたる“青”の差金だったかはわからない。
「察するに“青”にいいように吹き込まれたんだろうが」
ほんの少しだけ知っている同僚の力を思い出しながら考える。
「どっちにしてもあのめんどくさいのに難癖をつけられるのは確定事項、か」
もしこの襲撃が“青”の指示によるものであろうと、そうでなかろうと自分がその配下である人間をいくらか殺したことに間違いはない。
あのやかましい口調でそれを詰問されると思うと今から億劫ではあるが。
「まぁこれを機に殺れるならそれでもアリか」
源蝕のメンバー全員が揃うことはまずないが、そういう決闘まがいの行為は“黒”さえ認めれば許される。
ニヤリと笑みをうかべながら
「さて、お前らとはバイバイだ。うまいこと土に還れよ」
自分の乗る先頭車両以外の全ての車両を“白”は消した。
自然、術式でつくられたものではない物体は空中へと投げ出されれ、落下する。
例えば、上下にわかれた幾つもの遺体。
「……ん?」
その中で一つ。
“白”は違和感を覚える。
自分から見て一番遠くに投げ出されたモノ。
「……オレが甘かったか?」
二つに分かれていない。
一つの身体を成している。
どうやら傷は負っているようだが。
「ふん。まぁがんばれよ」
ほんの少し期待を滲ませて落ちていく人間を見つめた。
それからしばらく、夜が明けるころにその車両は日本の上空へとたどり着いた。
「……さて」
立ち上がり、術式を操作して外気に触れる。
「国の領内ならどっからでもいけるか」
右手に、どこからともなく取り出した符を握る。
「……相変わらず……」
その先の言葉は口には出なかった。
この符は“黒”が作り出し、任務の際に“源蝕”のメンバーに与えられる“黒”オリジナルの術式だ。
そして口にだせなかった言葉。
「わからない」という一言。
術式には二通りのものがある。
脳内のイメージ通りに力を練り上げ行使する“反神”。
そして陣と言われる図形や象徴に力を込め発動させる“魔法”。
符を使うものは後者。
“魔法”にあたる。
その符に描かれた“黒”独自の陣。
それの意味するものがわからない。
基盤とする体系さえわからない。
初めて手にしたときは躍起になって解読しようとしたが、全く歯が立たなかった。
わからない、ということは対抗する術式を作れないこと、すなわち術者としての完全敗北を意味する。
この“白”が反神をメインに使うという点だけが救いではあるが、それにしても体系すらわからないというのは異常だ。
「……使えりゃそれでいいんだが」
力を込め、放つ。
その範囲は一国。
「あそこか」
現在位置から北に少し。
空中に球状の何かが浮かび上がる。
それが俗に世界といわれるものだ。
「……でかいな」
神敵たる一人の“白”は今まで神やそれに類するものを幾らか屠ってきた。
そのいずれも自身の世界を持っていた。
大抵が一つの街程度の広さだったが、現在“白”が目にしているものは小国ほどの大きさがある。
自然と笑みを浮かべていた。
熱が、期待が、興奮が、隠しきれず漏れ出した。
嗜虐的な笑み。
世界の大きさはそのまま強さを示すといっていい。
すなわち今回の敵、神は今までで一番強いことに意味する。
強者を自覚する“白”が笑みをこぼすのも無理のない話だ。
目算200kmほど。
気がはやったのか、“白”は機車を捨て、飛んだ。
抵抗も何もあったものではないただの豪速による跳躍。
それだけで霞むほどの距離を0にした。
通常の世界と神の世界のその壁にたどり着く。
その壁を、裂いた。
こじ開けるように、ただ力にまかせてその表層を割る。
そして神の敵を自称する強者は神の世界へと踏み入れた。
外からでさえわかるほどの大きさゆえにまずその捜索からしなければとわかってはいたが。
「……」
そこは暗い空間だった。
何もない。
ただ一つ、巨大な門を除いては。
「これお解けってのか」
その門の表面。
術者であれば一目でわかるほどに、あからさまに陣が描かれていた。
複雑な陣。
正直魔法は専門ではないが、こういうのもたまには悪くないだろう。
“白”は門に触れた。




