僕の日常-宇宙人からみても超最悪ー
住宅街の片隅で木々に囲まれた一軒家が映された。レンガ調の塀が高く、家の外観が窺えない。それでもちらりと覗いて見える家の屋根には太陽光パネルが搭載されているのがわかる。映像は塀の中へと入っていく。中には庭があり、木々が植えられ、家に行くまでの道ができている。その道に進んでいくと、大きな家がみえてきた。一見洋式なのだが扉だけは引き戸になっている。ちょっと変わった組み合わせだが、それがやけにマッチしているおしゃれな家。映されているこの家は確実に僕の住む家だ。
ちなみに僕は父、母、祖母の四人家族で住んでいるが、この家には今現在僕しか住んでいない。なぜなら、僕以外の家族は世界一周旅行のチケットが当たって長期旅行中だからだ。嫌味なことに運が悪いのは僕だけで、家族は超運がいい。このリッチな家も母があてた宝くじで購入したものだったり、世界一周旅行のチケットは祖母が引き当てた。父は普通のサラリーマンだが、周りがちょっとやっていたからという理由でやってみた株で一儲けしていたりする。でもこんなのは一例に過ぎない。嫌なことに。
小さいころのある日、僕だけなんで運が悪いんだろうと愚痴をこぼしたとき、父が「お前がいるから、ある意味家のバランスがとれているんだよ」と笑いとばされたのが釈然としない疑問として僕の心によく残っている。なにがバランスだよ。ほんと、こんな家に生ませた神様は意地悪にもほどがある。
映像は家の中に進んでいき、僕の部屋の扉を突き通って、部屋の中が映された。真正面にはきちんとたたまれた制服が置かれている丸いテーブルがあって、その先に外の明かりに照らされているカーテンがみえる。部屋の左隅には学習机があり、その隣には丁寧に整理された本棚とクローゼットがみえた。部屋の右隅にはベットがあり、そのベットの脇には鞄が寄りかかる形で置かれてあった。ベットの上では僕が寝ていて、壁に背を向けて丸まっていた。頭の上には電子式時計が置いてある。時刻は5時57分と表示されていた。
(どうやって撮っているのか気になるけど、それよりもこれってプライバシーの侵害じゃないか)
憤慨しつつ、映像をみせつけられていると、視点が僕の部屋のカーテンに移り変わった。
カーテンがなにやらもごもご動き出し、その下からなにやら白くて小さな、ミミズみたいな気持ち悪い虫が這いずり出てきた。にょろにょろにょろにょろとゆっくりと壁を伝い、僕のベットのもとへ進み、電子式時計へ到着したところで、突然背を向けて寝ていた僕が勢いよく右手を上げながら寝返りを打った。映像は電子式時計をアップにする。すると、凹んで内部が若干見えている電子式時計の中にミミズっぽい虫がつぶれていた。
――人に害を与える星人ではなかったのに、悲しいことに殺されてしまいました。ウオーター星人はただあなたのエナジーを吸ってヒト型になろうとしただけなのに。……彼らの地球に来た目的はボランティアでした。少しばかり力を借りて、人間界に自分たちの文明でできることを施そうとしていたのですよ――
脳裏に響く声はなんとなく悲しげだったので、たぶんきっと背高クラゲはまたおよよと泣いているんだろうと思う。しかしそう言われましても、害はないにしても、エナジー吸うところだったんですよね? 気味悪いです。けれど殺していたのはショックではある。僕の信条が破られたわけだから。でも、うーん、複雑。
心の中で葛藤していると、映像が切り替わっていて僕が眠たそうに横になりながら、電子式時計を取り上げていた。映像の僕は電子時計をみて一瞬固まったのち、猛スピードでテーブルの上にあった制服とベットに添えられていた鞄を持ち抱え、部屋から去っていく。
僕が去ったあと部屋にある丸いテーブルがアップに映し出される。そこには先ほどのミミズっぽい虫の死骸を抱きかかえながら、泣き叫んでいるこれまた同じような虫がいた。
――我々の調べではこの星人は団体で地球にボランティアで来ていました。ただでさえこちらの地球まで来るのは大変なのに、最新鋭の機器を駆使して、地球人に貢献してあげたいと。そうした意気込みでやってきたのです。なのに、かわいそうなことに志半ばで死んでしまいました――
ええ~そんなこと言われても。でもあれは僕が殺したのか、そう思うとなんだか罪悪感が。心がチクチクする。
映像はリビングに移し変わる。そこで僕はキッチンのシンクで素早く顔を洗い、近くにかけてあったタオルでふき、キッチンのすぐそばにある机に駆け寄ってパンが入った袋からロールパンを一個取り出し、パクッと一口で食べてのどを詰まらしながらも、近くに置いた制服に急いで着替え、事前に玄関に放り投げていた鞄を玄関から拾い、家の外に出ようと駆け出した。
直後、映像が玄関の外に移り変わる。そこにはいかにもエイリアンといった生き物が玄関横の壁にくっついていた。いや、張り付いていた。むしろ壁と同化していたといったほうが正しいかもしれない。まるで家のイラストみたいになっていた。そのエイリアンの外見は長細くひょろっとして全体的に白く、手も足もなくにょろにょろしている。口はないようだが、上のほうに目らしきものがついている。まん丸目が二つ。ちょっとだけかわいい。もしかしてさっきの泣いてたミミズか??
――ウオーター星人の特徴として、ヒト型になるには人のエナジーが必要ですが、そうじゃなくてもなにか食料があれば、からだを膨らませることができるのです。先ほどの泣き叫んでいた星人はあなたの台所から食料を頂戴して大きくなったのですーー
ええ、なにそれ、気持ち悪。
率直な感想を抱きながら映像をみていると、僕は戸を開いていた。それに気づいたウオーター星人は壁にひっついたままゆっくりと僕の元へ動き出し、外面の戸の取っ手の部分まで移動していく。僕が一歩出ると薄っぺらかったにょろにょろがどんどん膨らんでいき戸から分離し、僕につかみかかろうとしたのか顔っぽい部分をにょろっと伸ばしてきた。
しかし、僕は一歩出た瞬間、すぐに引っ込んだのでウオーター星人も一緒に入っていく。そして勢いよく僕は引き戸を閉めたのでウオーター星人は顔が挟まれてしまった。しかもそいつは体を横になりながら僕を追っていたので、ちょうど目のような部分だけ挟まれる形になってしまった。挟まれたそいつは、みるみるうちにしぼんで小さくなっていき、いなくなってしまった。
――かわいそうに、急所の目が挟まれた彼は即死でした――
ああああごめんなさい。にょろにょろさん。僕のドジのせいでーーーーっと思ったけれど、その、もしその星人生きてたらなにしようとしていたんですかね。僕に。想像するだけで命の危険を感じますが。
映像はまたもや僕の家の前に移り変わる。そこにはさきほどのにょろにょろと同じ姿をしたウオーター星人たちが複数いた。数えると5、6体かな。玄関脇にある木の陰に隠れている。まだいるのか。団体ってどれくらいいるのだろうか。そんなことを思いながら映像をみていると、宇宙人たちは僕の玄関に注目しているようだった。
少しすると髪が生乾きの僕が出てきた。それをみたウオーター星人たちがその場からにょきっと顔を伸ばして僕に襲い掛かろうとする。けれども僕は鞄を荒々しく振り回しながら走っていたので、タイミングがつかめなかったのかにょろにょろした顔が収縮していき、木の陰にひゅんと戻っていった。
そして木の陰でおろおろしているのがみえる。僕はそのまま庭を通り過ぎ、外へと出て行く。すると宇宙人たちはなにやら囲みだして相談し始めた。うち一体がどこからか携帯電話のようなものを取り出し、何かを発していた。
先ほど飛び出していったかと思った僕はすぐに戻ってきて、戸を荒々しく閉じて家に入っていった。木の陰にいたウオーター星人はぴょこぴょこ頭を出しながら、僕が玄関から出てくるのをうかがっている。数十秒後、僕は紙コップを持ち玄関から飛び出してきた。しかし、出て一歩でこけた。急ぎすぎて足が滑ったようだ。そのせいで宇宙人らがいる玄関わきの木の方にコップの水が飛び散ってしまった。僕はやってしまったという顔で、コップの中をのぞいている。
ああ、たくさんついでいた水が三分の一までなくなってしまってたんだよな。そんなことを思い出していたら、映像の中の僕は必死の表情で零さないよう両手でコップを持ちながら早歩きで外へ向かう。映像の焦点が、木の陰に移ると、隠れていた宇宙人らが、うめいているのがわかる。どうしたんだろ。
――ウオーター星人は水が苦手なのです。微量の水でも大やけどのような痛みがやってくるのですよ。後ほど我々が確認した結果死亡を確認しました―――
マジで!? ああ、申し訳ないことをした。本当にごめんなさい……って待て待て待て!! 水苦手なのに、地球にきちゃだめでしょ!! てか名前ウオーターなのは別に水に強いわけじゃなくて、弱いからつけられてたのかよ!
そんな僕の突っ込みに、脳裏に響く野太い声が答えてくれる。
――命をかけてやってきたのです――
きっと背高クラゲはどや顔で言っているに違いない。そう思うぐらいのきっぱりした声だった。
てか来るなよ、そんなところでボランティア精神ださなくていいよ。なんか納得いかない。僕じゃなくても勝手に死んでたんじゃないか?
そうしてまた映像はどこかの路地に切り替わる。なんだか視点が地面に近い。目の前には走っている僕の姿が見える。もしやこれは朝、追いかけてきたドーベルマンの視点か!? どうやってるんだ、本当にこの映像。いやそんなことより待て、僕の足元の近くになにやらにょろにょろしたやつらがいるぞ。そいつらがアップになってよくみえるようになった。ああ! さっきのウオーター星人だ!! もしやさっきの電話で仲間を呼んだのか。もしやドーベルマンは僕を追いかけていたわけではなく、後ろの小さな星人を追いかけていたのか?
――ちなみにウオーター星人が背が低いのは少量のエナジーしか取れなかったからでしょう――
なぜか解説している声を聴きながら、映像の僕は路地裏の行き止まりにたどり着き、立ち尽くしていた。路地裏には汚いゴミ箱がいくつもあり、地面にはごみが散らばっている。突如こちらを振り返った僕の顔は青ざめていた。ついでに僕の後をついていたウオーター星人の表情も心なしか真っ青にみえた。
がるるるるという声が聞こえる。視点の主である犬がうなっているのだろう。僕は意を決した表情をして、近くにあったごみ箱に飛び乗り、その場から逃げ出した。犬の視点は逃げ出した僕を映さずまっすぐに宇宙人を捉える。残された宇宙人たちは恐怖におののいた顔をして仲間同士で固まり震えている。どんどんとそいつらの顔に近寄っていったところで暗転した。
びりっとしたような電流が全身に放たれると僕の頭から手が離されたのを感じる。僕の目の前にはラジカセみたいなのを持った背高クラゲが顔の近くにいて、ぎょっとしてと仰け反ろうとしたのだが、椅子に縛られていたため全然仰け反れなかった。背高クラゲが左に移動すると机の向こうに探偵服をおしゃれに着こなした美少女がみえた。彼女はかっこつけて、びしっと人差し指を僕に向け、凛とした顔で言い放った。
「これでお分かりになられましたか、あなたが残忍であるということが」
勝ち誇った顔にも見える美少女。僕は少し考える。果たして僕は残忍だったであろうか。数秒考えた後、彼女に顔をあげ、はっきりと言い返した。
「確かに僕の信条がことごとく破られたことに衝撃を感じざるをえません。殺したという点に関しては残虐でとてもショックで仕方ない。しかし僕は不可抗力じゃないですか! きっと僕じゃなくても彼らは死んでました!」
それに尽きる。彼らの選択ミスじゃないだろうか。水が弱けりゃ早かれ遅かれ死んでいた。そもそもここに来ること自体間違っていたんだ。
「人を殺してもそんなことが言えるのでしょうか」
うう、そういわれるとぐうの音もでない。僕はどんな命も平等と考えているから、罪の意識がががんとやってきた。ああ、でもでも、なんだか納得いかないです。
「とにかくあなたを連行します」
心で問答している僕に対し彼女は両手をうにょうにょに変形させて、僕の椅子ごと頭の上に持ち上げる。おかげで僕は空しか見えない。相変わらずどす黒い天気だ。雨が降らないのが不思議である。
彼女は機械のようにかつかつとリズムよくセットから降りていっているようで、そのたびに僕の体が振動する。ちょっと気持ち悪くなってきた。
急激な振動が少なくなったので、平面を歩いているのだろうか。僕は首を動かして下をなんとか覗いてみた。するとクラゲたちが機材をなにやら確認しているのが見えた。その後ろにはわらわらと数えきれないほどのクラゲが見える。もしや映像の出来を確認しているのか。本当に撮っていたのか!?
ってそんな呑気に見ているひまはない。どんどんとロケットのほうへ僕を持ち運んでいっているはずだ。曇天の空しかみえないが。
やばいやばいぞ、このままでは僕は宇宙に連れていかれてしまう。どうするどうする。僕は頭をフル回転させた。しかしダメだった。僕の頭ではこの現状を突破する術が思いつかない。頭よく生まれたかった。
すると雨が降ってきた。土砂降りの雨だ。ずしゃあああと僕の目に入ってくる――――と思ったと同時に、僕は落とされた。
ガシャン
痛い。僕が体を起こすと座面が壊れ、椅子の脚の部分も破壊されていることに気付いた。ただぐるっと金具で縛りつけられた背もたれ部分は体にくっついたままだったが、立つことができる。彼女をちらっとみると遠くのブーツを取ろうと歩きだしていた。しかし足場が悪くうまく動けないようだった。ブーツが遠くに飛んで行っているところをみるに、急な雨が降ってきたため、つるっとブーツが滑ってそのままこけてしまったのだろう。頑張って体勢を整えようとしている彼女をみて、しめたと思った僕は背もたれとともに走り出した。
「こら、待ちなさい」
後ろをみると女の子はブーツを履くのに悪戦苦闘しながら、大声を出している。それに気づいたカメラに群がっていたクラゲたちが、こちらに走ってきた。雨で足場が悪く、手もふれないこの状態で早く走れるわけがなく、逃げ切れることなんてできっこないとはわかっていた。でも逃げるしかないじゃんか。泣いているのかそれともひどい雨が伝っているのかわからなくなりながら、僕は走った。そしてすぐにこけた。
それもダイナミックに。
前に走っているのだから、前に倒れるはずなのに、なぜか僕は後ろに倒れてしまった。しかもエイリアンたちが残したねばねばの足跡が雨によって滑りやすくしているのか、背もたれの部分がボードになって一旦は止まっていたものの猛スピードでエイリアンたちのもとへ戻っていく。足が地面に引きずられて痛いので足は上げながら、僕は大量のエイリアンの中に突っ込んでいった。エイリアン達が僕を覗き込んでうにょうにょした手が僕の体にやってくる。
ああ、エイリアンにキャッチされ強制送還か――――と思ったら、どんどんどんどんスピードが増して、どいつらも手を出すのだが、空回りして僕をつかめない。
エイリアンたちが視界から消え、どこを走っているのかわからない。大雨も追いつかないほどの高速で僕はそのまま滑り出している。足で止めることなんてできない。
僕は死を意識した。
と同時に家族の会話が脳裏でよぎった。
『なんで望だけ、こんなに運が悪いのかねえ』
『本当になんででしょうね。うちの家系はみんな運がよいのに。そうだ、おばあちゃん。おばあちゃんが当てた世界一周旅行みんなで行きましょうね』
『おいおい母さん、そんなこと望の前で言っちゃだめだろ。望はどうせなにかしら行けないんだから、秘密にしなきゃ』
『ふふふ、そうだった。じゃあ望を除いた三人で行きましょうね』
家族が長期旅行に行く数日前の会話がここでよぎるのか!
僕は泣いた。さっきから泣いてたけど、さらに泣いた。
(さようなら、みじめなぼく。運のよい家族の皆様、運の悪い僕は運の悪いことで死にます)
高速で移動して風を体感している僕は、目を閉じる。数十秒だろうか、雨に打たれているのは感じるが何も起きない。それどころかなんだか止まっているようだった。なんで?
そう思いながら目を開くとすぐ近くにきれいな女の子の顔があった。上から覗き込んでいる女の子の青い目は引き込まれそうなほどきれいで、片側に高く結い上げられた金色の髪は濡れてなんだかきらきらしているようにもみえた。一瞬天使かと思ってしまったが、宇宙人のあの彼女だった。探偵帽子はどこか飛ばされたのだろうか。とにもかくにもどうやら僕は彼女に受け止められ、一命を取り留めたらしい。
「生きてましたか」
「はい……」
そのまま彼女は背もたれに縛られている僕をお姫様だっこして運んでいく。
僕は抵抗せず、黙って運ばれた。土砂降りにうたれながら、何も言わない。それを不思議に思ったのか怪訝そうな顔でこちらを見る。
「やけにおとなしいですね、先ほどまであんなに逃げまくっていたのに」
「もういいんだ、だって僕はいろいろな宇宙人を殺しまくっていたんでしょ? 僕のポリシーは殺さないってことだった。それなのに殺してた。最悪な人間だ。罪人だよ」
僕は彼女から目を逸らして言った。もうそういうことにした。そして今度は彼女をみて微笑んだ。
「それに君みたいなかわいい宇宙人に連行されるなら本望だよ」
今日から僕は悟りの境地を開いたんだ。そうそう、変なごつい宇宙人が最後にやってこなくてよかった。人型に変形しているとはいえ、こんなにきれいでかわいい女の子が連行してくれるなら幸せじゃないか。
彼女は僕の言葉を聞いてびっくりした顔をした。そしてドカーンとした音がした後、いきなり彼女が尋常じゃないほど小刻みに震えあがった。まるで彼女に雷が落ちたかのようだった。
びりりりりりりりりり
いや、比喩じゃなかった。これは確実に彼女に雷が落ちている。僕は驚きながら女の子をみつめる。大丈夫なのか? しばらくすると彼女の顔がみるみるうちに真っ赤になり、ポンとクラゲに変身した。全身がピンク色で三つ並んでいる目の形がハートマークになっているクラゲ。でもそれは一瞬ですぐにヒト型に戻った。
「あの、大丈夫ですか」
彼女は問いかけに答えてくれない。彼女は僕をお姫様だっこしながら、うつむいている。濡れた髪が顔にかかってあまりみえない。
僕の声は聞こえなかったのか、そのまま足早に大きなロケットのもとへ進んでいき、聞き取れない言葉を叫びながら、エイリアンたちを集合させ、ロケットに素早く入り込ませた。全員が入り込んだのを彼女は僕を持ちながら、見届けた。
あれ? 入らないのか? 彼女を見ると、うっとりした顔で僕の耳元でささやいてきた。
「私あなたの味方になります」
そして彼女の手が何十本もあるクラゲの手に変形した。その手が猛スピードで僕を縛っている金具と背もたれを素早く解き、僕はその辺に優しくちょこんと立たせ、余っている手で胸ポケットから取り出した四角い機械についてる大きなボタンを押し、クラゲが収容されたロケットが飛んでいった。
びゅーんと空の彼方へ飛んでいく。
僕が呆然と眺めていると、彼女は体からありとあらゆる機械を出してはクラゲの手で壊していき、彼女の前には山のようになったガラクタと化した機械が積まれていた。なにがなんだかわからず立ち尽くしていた僕の元へ彼女は駆け寄ってすり寄ってくる。
「さっきびびびびときたんです。あなたは運命の人だって!!! 私あなたに恋をしました!!!」
びびびび……、びりびり?
「いや、それたぶん恋のときめきではなく、雷によるびりびり……」
「宇宙組織との接触機材はすべて破壊しました! 私と逃亡しましょう」
彼女の手が僕の腕に絡み、上目遣いで微笑んでくる。可愛い。
でも絶対恋じゃなくて雷のせいなんだけど、まあいいか。
「わかりました!」
僕はすんなりと受け入れた。味方になってくれるのならいいことだ。受け入れないわけにはいかない。
酷い雨と雷が不吉を予感させつつも、僕と美少女エイリアンとの逃亡生活が今始まった。
おめでとう!望は相棒を手に入れた!




