表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら僕は宇宙組織に指名手配されたようです  作者: さくらみち
宇宙組織に指名手配されました!
2/10

僕の日常ー運が悪くって超最悪ー

 僕ってホントついてない。

 

 僕の家、学校まで歩いて10分ぐらいで着くんですけど、今日はなんと家を出てから三時間近くもかかってしまいました。最悪です。また遅刻しました。いつもいつもこうなんです。毎日何かしらのハプニングで遅れてしまうんです。


 今日起きてからの出来事、聞いてくれますか?


 まず朝のこと。学校は9時からだけど、念のため僕は時計を6時にセットしているんです。いつも6時起きなんですよ。だけど今日は起きたら、時計がなぜか壊れてて、起きたのは7時だったんです。でもこの時間なら余裕で間に合います。


 急いで顔洗ってご飯食べて(本当にいつもなにかしらのハプニングがあるから急ぐんです)それでワイシャツ着て青いブレザー着て茶色いチェックのズボンを履いてネクタイして鞄もってさあ行こうと玄関を開いて一歩出たとき、鳥のフンが僕の頭に落ちてきました。


 信じられない、最悪です。


 僕はすぐさま頭を洗いに家に戻り、急いでシャワーで洗って乾かしてそしてまた外に出たのです。

 

 そうしたら、今度は家の前でなんとよぼよぼの老人が倒れているではありませんか。体を仰向けにして片手で胸をつかんで、もう一方の手で空を仰いでるんですよ。いかにも死にそうだから僕は放置しておくわけにもいかず老人に「大丈夫ですか」と駆け寄ると「水をくれえ」というので家から紙コップに水を入れ持ってきたわけです。僕が渡したコップを受け取った老人はすぐさまポケットから薬を取り出して水を飲むと、本当に生き返ったように輝いた笑顔になって僕に感謝の言葉をながーくながく述べてきて、携帯の時計をみたら気づけば9時になっていました。


 終わった。


 長かった感謝の言葉が終わると老人から笑顔で大きく手を振られ、僕は急いで学校へ走って行きましたが、今度はその道のりで犬が突然僕の目の前に現れてなぜか僕だけを執拗に追いかけてきました。


 マジかよ。

 

 首輪がついているのでどこかの家から脱走してきたみたいです。しかもその犬ドーベルマンだったんですよ。怖いよ、野放しにするなよって思いながら必死に逃げまくってなんとか逃れて携帯の時計をみると9時半でした。もーどうしてこうなったんだ!!


 なので学校に着いたのは10時でした。


 教室開いたら2時間目が始まっていて僕がその場で遅刻した経緯の説明をすると、担任でもある三好先生がまたかよという顔をして手招きし、教卓の前に立たされ、そして先生はげんなりした顔で言いました。


「また嘘ばかりのべて、いい加減素直に寝坊したと言いなさい」


 クラスは大爆笑でした。


 本当なのに。

 はぁ、やってられないよ。

 運が悪くって超最悪。



***

 僕の名前は宇多川望うだがわのぞむ。宇宙ヶ丘高校に通い始め、はや2年目、全然慣れない。それどころか普通の学校生活が送れていない。朝礼なんてまともに受けたことがない。なんでだ。ちゃんと朝起きて出かけているのに。

 やっぱり運の悪い僕が、そう簡単に第一志望に受かるわけがなかったということか。きっと意地悪な神様が第一志望に受かったという幸運な出来事を運の悪い出来事によって相殺させようとしている、そうとしか思えない。


「次、ここテストに出るぞー」


 日本史担当の三好先生が教科書を持ちながら黒板を叩くと、みんな一斉にノートを取り始めた。三好先生は黒縁眼鏡が印象的な、若いのに堅い男の先生だ。因みにテストは難しいことで有名で、説教が長いことでも有名。だからみんな必死にメモっているけれど、今僕は授業に集中できる気分ではない。あんなことがあってへとへとなのに怒られるし、笑われるしでもう疲れた。


 僕は教室の窓側の一番後ろの席で、ぼんやりと教室を眺める。

 

 数年前に建て替えられたばかりだから、教室には傷一つなく綺麗な教室だ。目新しいところ以外は普通の教室にみえるけれども実はそうではない。黒板には実はスイッチがあり、押すと天井裏に収納でき、代わりに大きなモニター画面が現れる仕組みになっている。


 今僕が座っているこの席だって実は最新式だったりする。座っているこの椅子は肘掛けつきで座り心地のよいだけの(まあ最高なのだが)椅子であるが、机はボタンを押せばパソコンに変形して、それで授業を受けることもできる最新型だ。


 そんな最新鋭の高校なので、防犯管理も徹底している。一人一人にIDが振り分けられていて、ICチップが内蔵されたカードが配布され、それを使わないと校舎内に入れないようになっている。……あぁ何度入れなかったことか……!

  

 過去の苦い記憶を思い起こしていると、どこからか厳しい視線を感じた。黒板に目をやると板書の途中とみられる三好先生がチョークを片手に僕を睨めつけている。慌ててノートを開いてペンを持ってメモを取ろうとする態勢に移ると、三好先生は背を向けて板書を再開した。

 ホッとしてペンを置く。周りのカリカリ音が響く中、窓の外を眺めた。なんだか暗くて雲が多い。雨が降るかもしれない。そう思ってると、ガラスにひょろい男の子が映っているのが目に入った。僕だ。くせ毛でないのに髪は少し濡れててくしゃくしゃで跳ねていて、顔は眉毛が下がって悲しげだった。



 キーンコーンカーンコーン


 授業終了のチャイムが鳴る。二時間目が終わったのでお昼休みが始まった。


 わぁわぁと教室内がざわめきだすと、僕のすぐ前の席に座っている男子生徒、本田誠ほんだまことが話しかけてきた。本田は短髪黒髪でワックスかけすぎだろうと突っ込みたくなるほど漫画みたいにツンツンした髪が特徴的だ。


「おい宇多川、今日も遅刻だったな。いつもいつもご苦労さんなことで」


 にこやかに穏やかに微笑んで言っているが、これは文字にしたら絶対語尾に草が生えている笑い方だ。完全に馬鹿にしている。


「そういじめないでよ。望くんだって、わざとじゃないんだから」


 止めに入ってくれたのは、本田の右の席にいる幼なじみの女の子、花咲ゆかりさんだ。花咲さんは穏やかでいつもニコニコしていて背景に花が飛んでそうな女の子らしい女の子だ。肩まである髪が少し跳ねていてくせっ毛だけど、それがほんわかした印象を一層強くしている。

 一見おっとりしているようにもみえるけれど、しっかり者でもある。着ているブレザーにはシワ一つ見当たらないし、チェックのスカートもビシッと模範的に着こなしている。


「いや、さすがにここまで毎日運が悪いことはねーだろ」


 本田が手を広げ、やれやれといったようなアメリカンなポーズを取り、馬鹿にしてくる。


「本当なの! 本当にそうなのよ! 望くんはほんとーにほんとのほんとーに信じられないほど超のつくほどついてない、運が悪くてしかもドジな人なの! それは昔からみてきた私が保証するわ! そうだよね? 望くん」


 身振り手振りでかわいく必死にフォローをしてくれているのだけど、肝心のそのフォローの言葉は僕の心をグサッと貫いている。


「う、うん。そうだね」


 しかし、まったくもってその通りなので肯定するしかなかった。


「なんだよ花咲、お前こいつのこといつもかばうよな。もしかして好きなんじゃないの」

「もう何言ってるのよ!」


 怒り口調だけどなぜだか顔を赤らめた花咲さんは僕に「あいつの言ったことは気にしなくていいからね!!」と凄い勢いで言ってきた。


「う、うん」


 勢いに負け、何も言えなかった。もともと何を言うつもりもなかったけど。


「宇多川、ちょっと来い!」


 三好先生が扉の前で手招きしている。遅刻の件のことだろう。げんなりする。僕は二人に行ってらっしゃいと暖かく(うち一名は語尾に草を生やしながら)送り出され、先生の後についていった。


 ゴン


 痛い。二人を見ながら歩いていたら、頭をぶつけてしまった。身をかがめないといけないことを忘れていた。僕の背は180センチを超えている。ほんと不便だ、この身長。


 先生にどつかれながら教室を出る。僕は三好先生の後ろからでもわかるイラつきようにこれからの説教をなんとなく想像してとてつもなく逃げたい衝動に駆られなたけれども、それを抑えながらついていった。先生は教室のすぐ脇にある階段を通り過ぎて、長い通路へ進んでいく。通路を抜ければすぐに職員室があるから、確実に職員室での説教コースだろう。因みにさきほどまでいた教室は二階の端にあるので通路からかなり近い。そして通路を抜ければ、同じく二階にある他の棟である職員室に直結しているのでどこのクラスよりも早く着く。つまりどこのクラスよりも三好先生の説教をすぐに受けることができるのだ。ああ、最悪。


 ため息をついて僕も一歩通路へと歩き出そうとしたときだった。後ろがなにやらざわざわ騒がしいことに気づく。

 振り返るといつもならこの位置から突き当りの壁がみえるのに、その壁がみえないほど埋め尽くされている。

 不思議に思って止まってみていると、後ろで三好先生の苛立ったつぶやきが聞こえてきた。


「芸能人の空野ひかりが来るからって浮かれやがって……」

「ああ、だから、あんなに人が集まっているんですね」


 なんだ、だからか。そりゃ芸能人が来てればああなるよね。あはははと先生に振り返って笑った。……って待て。待て待て待て? 空野ひかり?


「ひかりんが来てるんですか!!!?」

 

 僕は驚いて廊下が轟くほどの大声を上げると先生がびくっとして、少し引いた顔をした。


「あ、ああそうだ。一応はここの生徒だからな。なんだお前ファンなのか」


「そりゃ当然です! 空野ひかりこと通称ひかりんといえば今一押しの女優ですよ!? 今やってる第三弾の歯磨きコマーシャルみました!? 超かわいいんです。ひかりんといえば長く胸まであるさらさらしたきれいな黒髪に、白い透き通った肌、眉まである前髪が幼い顔をさらに幼くしていて、大きくてクリクリした瞳が可愛らしくってそして全体的に小柄だからもあって儚げで守ってあげたい女の子ナンバーワンな彼女ですけど、そのコマーシャルではなんとフリルのついた白いワンピースを着てさらに儚げさをアップしているんですよ! 誰だって心を射抜かれちゃいますよ! そんな彼女が来ているだって!? 行ってきます!!」


 人ごみに向かって走りだそうとする僕の襟元をつかんで、三好先生は冷たく言い放った。


「お前は説教があるだろうが」


 そんなぁ、最悪だ。襟元をつかまれたまま、引きずられていく。うえ、苦しい。首が締まります先生。声にならない声で抗議しているとやっと気づいてくれたのか手を放してくれた。あー息が吸える。僕はガラス張りの長い通路を先生の後姿をみながら歩き出す。


(ああ、みたかった、一度でいいから生ひかりんをみたかった)


 ほんと、とことんついてない。振り返れば生まれてきてから17年、売店で売り切れ続出の人気な商品は一度たりとも手に入れたことがないし、だいたいほしいものはさぁ僕の番だと思った瞬間、終了のご案内がされてきた。しかも僕が両親に頼んだものはそれまで容易に入手できたものも、急遽入荷終了するから、両親から贈られる誕生日プレゼントはいつも希望外の品物だった。おまけにドジで楽しみにとっておいたケーキも冷蔵庫から取り出した瞬間、誤って床にぶちまけたりするし、最悪な人生だ。


 そんな最悪な日々だけど、そんな僕でも唯一安心して楽しめることがある。それは行動しないでただテレビを見たり読書をすること。そして最近のマイブームはひかりんの出ているドラマや映画を鑑賞することだった。


 それなのに……いや、もうやめよう。こんな考えは。そうだ、今日から悟ったような考えで物事をみることにしよう。こうして(せい)を受けているからこそ、ご飯食べることができて、人と話すことができて、外の花や草をみて、すてきだなって感じることができるんだよ。わぉ最高じゃん!


 ほら、今だって通路の外をみるとドス黒い雲の下、枯れ果てている木の上に何羽かカラスが止まっているよ。わあ最高だね!


「着いたぞ、なにぼーっとしてんだ」


 職員室の扉を開きながら三好先生は僕に厳しい視線を送っている。いつの間にか到着してたようだ。僕は苦笑いしながら、先生に続いて職員室に入ろうと身をかがめ、入り込もうとしたのだが、かがんだ拍子で小さな虫が先生の足元付近を這いずっているのが見え、とっさに先生を引っ張った。


 先生は怪訝な顔をしてこちらを振り向いたが、何も言わず自分の席へと進んでいく。先生についていきながら、床を見て虫の安否を確認する。よかった。生きていた。


 僕はある一つの信条を貫いている。それは生き物を大切にすること。アリや虫も殺さない精神である。たとえそれがゴキブリだったとしても。いや、ゴキブリに関しては触りたくないのが本音だが、やっぱり自分が超絶不運であるだけに小さな生き物やなにやらが必死に生きているのはとても共感するというか、尊敬している。

 だから僕は優しい目で、床を這いずる虫を見送った。


 見送ると同時に、三好先生は自分の席に腰を下ろした。そして説教が始まった。反論したい気持ちを必死で抑えて黙って聞く。しかし聞き捨てならない言葉が飛んできた。


「おまえはまた遅刻して、ふざけたことばかり抜かして、この間は空から人が降ってきて遅刻したとか言っていただろう。どうしてそんな突拍子もないウソをつけるんだ」


 ああ、反論したい。


『三好先生、それも本当なんですよ。その日はお弁当を作ってなかったので、時間あるし昼ごはん買おうと思って、コンビニに寄って、買って出ると、すぐ近くに植えてある木の上から人が落ちてきて、下にいた僕は衝突したんですって。おかげで手に持っていた僕の買ったお昼ご飯はパーになり、しかも倒れてきた人を受け止めたせいでからだが痛くなり、最悪でした。落ちてきた相手の顔は覚えてないけど、確か20代ぐらいの真面目そうな男性で、なんだかそこで感謝と謝罪の言葉を長々述べられて、そしてなんかご飯を買ってもらうことになり、結果遅刻してしまったんですよ』


 って言いたい。


 もちろんそんなことを言ったら火に油なので反論せず、ひたすらがみがみした説教を聞いていた。あぁ大人だな、僕。


 やっと職員室から解放された時には休み時間のほとんどが消えてしまっていた。


 はあとため息をつきながら、教室の扉を開く。ふらふらしながら、席に座り込んで机にだらあと寄りかかってうつぶせになる。できることならこのまま寝てしまいたい。


「こんにちは」


 突然隣から挨拶された。今日隣の席の人は休みじゃなかったか?

 そう思って目を開くと今一押しの人気女優である笑顔のまぶしいひかりんが座っていた。バッと起き上がって、まじまじとひかりんを見る。


(ええええええええええええ本物だよ!!!! ひかりんだひかりんだ生ひかりんだ!!!)


 あたふたしながら、本田と花咲さんにどういうことだとアイコンタクトを送る。教室から出る前は暖かく(うち一名は語尾に草を生やしながら)見送ってくれていた二人だが、厳しい眼差しを向けている。なんで? 二人から視線をそらし、クラスを見渡すと、みんなの視線が僕に集まっていることに気付く。


「どうしてもお前と話したいんだってさ」

「私はいくら隣が休みだからって、勝手に座るのはどうかと言ったんだけど、ここがいいってきかなかったんだよ」

「僕の?」


(どうして? 何の接点もないのに)


 はっとする。もしかしてあれじゃないか、漫画でよくある設定のあれ。幼稚園のときに好きになった彼のことが忘れられなくて、高校で再会して恋の火花が弾けちゃったパターンのあれでは!!? まったく僕の過去の記憶にそんな女の子の存在いないけど!!


 そんなありえない夢と期待を至極真面目に抱いていると、授業開始のチャイムが鳴って3時間目美術担当の樋口先生がやってきた。樋口先生は白髪で絵の具があちこちについた白衣を着ており、まん丸の度数のきつそうな眼鏡をかけ、ザ・芸術家といった雰囲気を醸し出している。樋口先生は気難しい人なので、怒らせると怖い。さっきまで僕とひかりんに注目していたクラスメイトの視線が樋口先生に集中した。


「一時間だけ、空野ひかりさんも出席するそうです」


 先生が静かに言うと、教室内が興奮してざわめきだす。すると、樋口先生は厳しい表情で一喝した。


「授業ですから、私語は厳禁です。たとえアイドルがいたとしても集中しなさい」


 教室が静まり返った。そして先生は授業を始め、クラスメイトもノートを取り始める。


(樋口先生、アイドルじゃなく、女優です。代表作は「あなたと共に」っていう純愛ラブストーリーでひかりんは初めての主演で当時14歳だったのに天才的な演技を披露して賞まで獲得してるんですよ)


 先生に心の中で猛抗議しながら、授業を聞いていると右側から小声でひかりんが話しかけてきた。


「宇多川望くんだよね」


「へ? あ、はい!! そうです! どうして僕のことを知っているんですか!?」


 びっくりして大きい声で返事してしまった。クラスのみんなが、そして先生も厳しい顔をしてこちらを睨んでくる。僕は席で小さくなった。暫くすると教室が静まり返り、先生の話し声が響き渡ると、ひかりんがまたもや小さな声で話しかけてきた。本当は向き合って話したいけれど、怒られてしまうので耳だけ傾け、横目でひかりんをみる。


「ね。どうしてだと思う?」


 ひかりんはゆっくり近づいて、なんと僕の耳元にまでやってこようとしてきた! どういうことだ!? まさか本当に恋の火花が!?

 耳まで真っ赤になっているのを感じる。

 だめだ無理だ。幸せだけど耐えられない。


「ごめんなさい!」


 僕は彼女に向きかえって両手でやめてくれのポーズをとった。


 しかしここで悲劇が起きた。

 もう最悪だ。


 どうやら彼女は僕の背中に手を回そうとしていたようで、僕が勢いよく手を出しながら振り向くとちょうど僕の手が彼女の手をバシッと叩いてしまい、その反動で彼女がもっていた何かを弾き飛ばして、さらに彼女の前に両手を出した時には彼女をドンと突き飛ばす形になってしまった。


 彼女は椅子ごと倒れ、ガタンという音に教室のみんなが僕たちを向く。

 僕は頭が真っ白になり、慌てて椅子から立ち上がって、謝る。


「ほ、本当にごめんなさい」


 彼女を起こそうと手を差し伸ばそうと近づいたのだが、その際なにかを踏みつぶしてしまったのを感じた。


 さーっと血の気が引いていく。


 足元をあげてみると、それは粉々になっていて、もともとがどういう形状だったのか想像できない。でもきっとさっき弾き飛ばしてしまったやつだろう。


「ああああああ、本当にごめんなさい」


 なんてことをしてしまったのだろう。

 狼狽えていると、彼女はすっと立ち上がり、うつむきながら椅子に静かに座った。


 そして信じられないことに


「ちっ」


 ひかりんから舌打ちが聞こえた。

 確実にひかりんからだった。


「なんだあいつひかりんになにしてんだよ」


 周りからの罵声が飛んでくる。


「死ね宇多川」



 なんてことだ。


 ああ、僕ってホントついてない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ