一夜明けて
『少女と翼』を投稿する予定でしたが、急遽変更いたしました。
『少女と翼』は次回か次々回にする予定です。
*支援魔銃に《ポルセット》という呼び名を付けました。
このように表示されます→支援魔銃
戦闘が終わり立ち上がった俺は、ミューリが隠れている家へと向かい、扉を叩く。
「ミューリ、ケイだよ。もう大丈夫だから出ておいで」
ほんの少しだけ開けられた扉の隙間からミューリの顔が覗く。
「あのおじさんたちは?」
「みんな俺が眠らせたから安心して」
「もう大丈夫なの?」
「ああ、もう大丈夫だ。おいでミューリ」
「……うん」
周囲に盗賊も、誰もいないのを確認したミューリは隠れていた家から出ると突然、細い両腕を俺の後ろに回し、ギュッと抱きつく。
その腕は少しだけ震えていた。
「すごい怖かった……。でも、がんばったよ」
1人で隠れているのがーー、どれほど怖かったのか。俺には想像できない。
俺はそばに居てあげられなかったのを少し申し訳なく思いつつも、頑張って恐怖に耐えたミューリの頭を優しく撫でる。
「ああ、よくがんばったなミューリ」
「うん!」
元気に、今度は眩しい笑顔で答えたミューリの腕からはもう震えは消えていた。
俺とミューリは手を繋ぎながら、村人たちがいる方角の門を目指して歩き出す。
門を抜けると、俺たちが歩く一本道の先には集団、もとい何十人もの村人たちが心配そうに俺たちのいる方角を見つめていた。
その集団から飛び出す影があった。
ミューリの母親だ。
それを見ると同時にミューリも走り出す。
「お母さん!」
「ミューリ!」
親子は磁石で引き寄せられるかのように全力で走り、道の真ん中で崩れるように膝間付いた母親の胸に、絶望的状況から生還した少女が飛びつく。
2人は何度もお互いの名前を呼び合い、強く抱きしめ合う。
まさに号泣と言えるくらい、2人の頰を大量の涙が流れている。
その涙は昇ったばかりの朝陽に眩しく照らされ、ダイヤのごとく輝いていた。
きつく抱き合う2人に駆け寄った村人たちのほとんどは、手を叩いて喜ぶ人、歓喜の叫びをあげる者、服の裾で涙を拭く者、神に感謝を示す者ばかり。
なんと仲間思いの人々であろうか。
たっぷり数分もしたあと2人が泣き止むと、コルボら村人たちは俺と向かい合うように集まる。
コルボは村人たちより2、3歩近づいたところで立ち止まる。
「ありがとう、本当にありがとうケイさん。ケイさんが居なければ我々は村も仲間も全てを失っていたでしょう。本当に、本当にありがとうございます」
コルボはお礼を言うとともにお辞儀する。
コルボに続いて村人たち全員が俺に向けて深々と頭を下げる。
俺は慌てて彼らに頭を上げさせようとするために必死に言葉を探す。
「いや、その…泊めてもらってる恩を返しただけですよ。今回のは宿泊代の代わりだと思ってください」
「そう…ですか。それではケイさんもお疲れでしょうし、お部屋でお休みになられますか?その額の怪我も治さなくてはなりませんし」
「はい、休みたいです。それに肋の骨を折られちゃって安静にしたいですし……」
「だっ、大丈夫なんですか!?」
「まあ、ある程度は大丈夫ですよ」
コルボは心の底からホッとするように胸を撫で下ろした。しかし自分たちのせいで怪我を負わせたのは事実。表情には出していないが、コルボを含めて村人たちは罪悪感を感じているだろう。
「そうですか。ではお部屋でお休みになられてください。我が村には医者が居ない代わりに治療用塗り薬があるので、それをあとで負傷したところに塗りましょう。すぐに効果は出ませんが10数日すれば治ると思いますし」
「はい、お願いします」
俺は眠たい目を擦りながら家へと足を向ける。
コルボも一緒に向かってくれた。
歩きながらコルボは俺に尋ねる。
「そういえば例の盗賊たちは、どうした…のですか?」
「全員生きていますよ。ある程度の怪我を負わせたり、あるいは眠らせたりしていますし、両腕を縄で縛ったりもしましたから、今すぐ起きて暴れるようなことはないと思います」
「そうですか!それではあとは我々が彼らを牢獄に入れておきますよ」
「牢獄なんてあるんですか?」
「はい、もともとは村を襲ってきたオークやコブリンを捕縛したとき用に作っておいたのですよ。広場の塔の脇にある建物の地下に人が20人くらい入れる牢獄をね。まあ村を守る若者が居なくなったせいで捕まえる事もできませんがね」
そう言うとコルボは苦笑した。
「で、そいつらを牢獄に入れた後は?」
「3日後に来る輸送隊にクルアンブール憲兵隊の出動依頼の書類を渡すので、そうすれば10日後以内に憲兵隊が来て、身柄を引き渡せば全て終わりますよ」
「そうですか。なら良かった」
そう会話しているうちに家の前へとたどり着いた。
コルボは俺より一足先に家へ向かい、玄関の扉を開けてくれた。
「ケイさん、どうぞ」
「ありがとう、ございます。うーん、疲れた………」
俺は家に入るや否や、寝室に突入した。
ベッドへうつ伏せでダイブすると、低反発マットなど無い硬いベッドが今だけは天国のように感じた。
「ではゆっくりとおやすみください。ケイさん」
コルボの言葉を聞き流しながら俺はヒラヒラと手を振る。
「ん〜〜、はーい。おやすみなさい……です」
俺は睡魔の誘惑に吸い寄せられ、1分としないうちに重い瞼を閉じた。
俺が深い寝息を立て始めたのを確認すると、コルボは温かい眼差しで見つめながらもう一度小さく「ありがとう」と呟くと、音を立てないようにゆっくりと戸を閉め、その場を後にした。
結局、睡眠不足と戦闘による疲労のせいで俺が再び起きたのは夕陽が沈む時間だった。
今回の投稿が予定より大幅に遅れてしまい申し訳ありません。
こんばんは、作者のリッキーです。
今回のお話も読んでくださり、本当にありがとうございます。
12日間も投稿できなかったのにも関わらず、そのあいだに1度もPVが0にならなかったことに私自身驚きました。
読者の皆様が次の話が投稿されるのを待ってくださっているのだなと感じました。
それに救われました。ありがとうございます!
さて今回はミューリと母親の再会からケイが寝るまでを投稿させていただきました。予定ではこのお話で少女と飛行機を登場させるつもりでしたが、スランプ状態になり12日以上も投稿しないのはマズイ!と感じ、途中まで書けている部分のみにしました。
ーーーー変更のお知らせーーーー
つい先週からガソリンスタンドでバイトを始めました。それにより小説の執筆時間が減ってしまいました。
そのため今回から投稿するお話の文字数を6000字以上から2000文字以上へ変更させていただきます。
1話ごとの文字数は減ってしまいますがその分、投稿ペースを落とさない&投稿目標日を守るようにしたいと考えております。
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これからも色々あるかと思いますが、ハードフライトを温かく見守ってくださると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
次回の内容は詳しくは決めていません!すみません!
あと次の次のお話までにはヒロインと航空機を出します(絶対!)
今回のお話及びハードフライトの評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします。
ーーお知らせーー
次回のお話は本日、10/28の21:30頃に投稿する予定です。