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人工惑星  作者: 赤靴下
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7-1 ヒイラギ

 その日はここ数日の中でも特に暑いカンカン照りで、ウスイは地上に出るのを渋った。

「なんでわざわざ俺たちが探すんだよ。こういうのは本部の調査官の仕事じゃないか」


 まさしくその通りなのだが、当の本部からは調査官はおろか一人の人員も割けないとはっきり宣言されていたので、どうしようもなかった。


 ありがたいのはシグレが手の空いている知り合いの施設職員数人と一緒に、惑星の捜索に手を貸してくれたことだ。それでもこの広い町全域を相手に、当てになるのは簡易的な惑星感知器のみという状況ではそうはかどるはずもなく、私達は祭り市の余韻が残る炎天下の町中で、本部への悪態をつきながら惑星を捜索していた。


「嫌な目で見られているよな」そうウスイが言ったのは昼下がり、施設のエントランスで皆が休んでいた時のことだった。あまりの暑さに手伝ってくれていた職員一人がばててしまい、その人を施設に送り届けるついでに他の者も休憩を取った方がいいということになったのだ。汗だくで数時間探し回って得られた成果は成長途中の惑星核四個というありさまで、私も含めて士気の低下が著しかった。


「見られている?誰から」私は長椅子に座っているウスイの隣に腰掛け、冷たい水が入ったボトルを仰いだ。


「町の住民からさ」ウスイは憂鬱そうに答えた。

「これだから地上には出たくないんだ。誰も彼も、俺たちが何をやってるかも知らずにカルト集団扱いしやがって」


「何をやってるのか分からないから、カルト集団扱いされるんじゃないかしら」丸テーブルに着いているシグレがもっともな意見を述べた。

「だから言ったじゃない、白衣を着て行くのはやめた方がいいって。それじゃ自分が科学者だって主張しているようなものよ」


「俺たちは正装で町中を堂々と歩くことすらできない」ウスイが大げさに嘆く。

「いいか、俺たちが単にミニチュアの星を創ってるだけじゃないと知れば、全世界で俺たちを見る目は変わるぜ。なあ?」


 ウスイに相槌を求められた、シグレの知り合いの職員は曖昧な笑みを浮かべた。

「うん、まあ……」


「だからさ」ウスイは大きな声で続ける。

「ニオが言うみたいな、少しずつなじんでいこうとする努力なんか必要ないんだよ。科学者が地上を大手を振って歩くのに必要なのは、俺たちがお前らにとって、無くてはならない存在なんだってことを地上の連中に知らしめればいいだけの話だろ?本部はどうしてそれを許さない?俺たちがこそこそ地下ではい回る必要なんか、本当はどこにも――」


「待った」シグレがウスイの不満を遮った。

「施設の入り口近くでそれを言うのは賢明じゃないわ。誰に聞かれるか分からない」


「誰にも聞かれるもんか。地上の連中はどうせ、俺たちの仕事に興味一つ持たないんだから」ウスイはフンと鼻を鳴らしてそう返した。

「ヒイラギ、お前はニオの言いだした例のキャンペーンをまだやってるんだろ?チラシ配りで町の住民の科学者への理解は得られたか?まず無理だろ」


「まあ、そうだな」私はここ数週間の活動を思い返して答えた。効果のほどを半信半疑で配るチラシは、受け取られてもいい顔はされなかった。おおよそが興味がないか、あるいは胡散臭そうな顔で、丸められてポケットに入れられるのが関の山だった。


「だろ?こんなのじゃ何も変わりやしないんだよ」ウスイは我が意を得たりと頷く。

「そもそも、言い出しっぺのニオが不在だっていうのがひどいじゃないか。今を時めくホーム5で今頃ちやほやされてんだろうな。あいつが帰ってきたら愚痴の一つも言ってやったらどうだ?」


 私が答える前に、さっきウスイに相槌を打ったシグレの知り合いの職員の携帯電話が鳴った。彼女の応答から察するに、先ほど貧血を起こした職員が行った医務室から連絡があったらしい。


「カリンさんの具合、どう?」職員が電話を終えると、シグレが尋ねた。

「軽い熱中症だそうです。捜索はもう手伝えないと……すみません」職員は心配そうに言って、私の方に頭を下げた。


「いや、こちらこそ、無理をさせてしまったようで申し訳ないです」私は急いで謝罪を返した。厚意の下に集ってくれた人手を損なったことに、苦い思いが込み上げた。

「今日はこれくらいにしておきましょう。皆さん、暑い中手伝ってくれて、ありがとうございました」


 一人体調を損ねたとあっては、これ以上の捜索の継続は提案できなかった。そして、よければまた手を貸してほしい、と言うことも。私は疲労と、そしてわずかな安堵の色を湛えた面々に礼をした。



「あなたが責任を感じることじゃないわ」医務室に向かう道すがら、シグレが言った。

「カリンさんを誘ったのは私だもの。彼女を責めるわけじゃないけど、体調管理は自己責任の問題でもあるし」


「それでも一言謝らねば」私は答える。

「仕事と関係のないことに駆り出された挙句倒れたなんて、誰だって気を悪くするはずだ」


「関係ないなんてことはないでしょう。むしろこの施設の科学者全員に関係のあることよ。大半がろくに関心も示さない今の状況の方が異常だと思う」

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