明日、主役が終わる
明日、卒業する。
短くて長い3年間が終わる。最後の卒業式練習が終わり友達と文句を言いながら教室へ帰ると………机の上に卒業アルバムがあった。
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俺は、目立つことなどほとんどなかった。幼稚園、小学校と人数が少なかった為友達も少ない。
部活も3年間、一応やったものの……悔しい思い出とサボった記憶しかない。
たった数十ページに収められた3年間……1ページ、開いて思ったことは
「詐欺だな……これは……」
ピカピカな校舎、真面目に授業するクラスメート、体育祭・合唱際の真剣な表情。
………文句半分、真面目半分……
「こんなにリア充じゃねぇよ俺は!………部活の連中だってクラスメートだってこんなに仲良くないわ!」
写真で見るとキラキラした過去。
実際は、寝不足のオンパレードだ。
そりゃあ、楽しいこともあったかもしれないが……全員で和気藹々って……
「文句しか出てこねぇ……」
パラパラとページを進める。
「あっ……」
思いだした。
一枚だけ、もっと文句を言いたくなる写真が……
部活中の写真。ダサい俺がカッコよく見えた。真剣にやってるみたいにみえる。試合で、たった、たった一回だけのスタメン。一回だけ決めることの出来たゴール。最高に気持ち良かった瞬間が思い出せる。
「何で、俺?他に誰かいるだろ……」
だが、写っていたのは俺だ。他にも何枚もある。俺じゃなくてもいい写真。
でも、俺はいる。
本当だったら絶対に使われない写真がある、俺にしか分からない、何か……
生きていく中で、注目されるなんて一握り、そんなことわかってる。
分かってなかったみたいだが……
卒業アルバムは、俺達が主役になれる唯一のものだ。俺がいたと言う証が、ここだけにはある。
何千とある写真の中で、これが使われたと言う事実。他の場所では、ただ、埋もれてしまうだけの写真が、ここでは主役になる。キラキラと輝くことが出来る。
逆に言えば、ここで以外主役になれない。誰も俺に興味なんかない。俺を選ぶ人何ていない。
最初で最後、俺は主役になった。俺の3年間は、ここにあった。
俺達は明日卒業する。