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闇の底

*******************************************************

(だれ・・・・?)

(誰かが、オレを呼んでる。)

 知らない声が、頭の中で響いている。いつごろからだっただろう。それすらもう、頭に靄がかかってしまったように、思い出せないのだ。


――――まーくん

――――まーくん どこにいるの? どうしたの?


(ああ・・・お母さんの言い方に似てる。もう、ほっといてよ)


――――もういいんだ もうがまんなんてしなくていいんだから


(お父さんかな? 違うんだ、我慢なんかじゃないんだ)


 母親の台詞のような、父親の台詞のような。

 でも、聞きなれない声。それでも優しくて、心強くて、無性に懐かしい。


(だれ・・・・?)

 問いかけたところで、返事は帰ってこない。声は聞こえるけど、どうも会話はできないみたいだ。


――――ぼくを、まーくんの場所へ。誰か、おねがい・・・・!!!


 祈りの声が何度も何度も聞こえるのだ。それに返事をしても、向こうにはきっと聞こえてはないんだろう。

 そう。ここは心地いい。何も考えなくていい。海の底のように、無音で、自分は揺らめいているだけでいいんだ。

 それなのに、たまに頭の中に、こうして声が聞こえてくるようになった。静かな水面に投石するように、胸の中がざわめく。


(どうして・・・・)

(どうして・・・・)


 しばらくの間、声が響き、また聞こえなくなった。また静かに揺らめいていると、瞼がピクリと動いた。

 ここにいるとき、何をしても開かなかった目が、開こうとしている。

 うっすらと光が見えた。


(怖い)

 でも、興味もあった。ここで目を開いたら、いったい何が見えるのだろう。初めてここへきた時から、ずっと不思議に思っていた。

 でも目は開けないし、ここでは視力が使えないのだと思っていた。

 鼓動が速くなる。


 うっすらと開いた目に、鮮烈な光が飛び込んできた。

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