まーくんの巣立ち
まーくんは中学生になった。
毎朝、黒っぽい服を着て、いつも同じリュックを背負って学校、とかいう場所で、勉強とかいうものをしているらしい。僕はまーくんの部屋の本棚の上から、まーくんが着替えて扉の向こうへ消えていくのを見送る。
まーくんはボクと一緒に寝なくなった。まーくんは滅多にボクの名前を呼ばなくなったし、ボクの方を見なくなった。たぶん、勉強とかいうのが忙しいのだろうとボクは思っている。寂しくないと言ったら嘘になるけれど、ボクをまーくんのベッドの上から本棚の上へ移したお母さんが、言っていた。
「大人になるのに、たくさんのものを卒業しないといけない。ジョージももう卒業。いつか私からも卒業するのかしらね」
ボクと離れていくことは、まーくんにとって大切なことらしい。そしてそれが、大人になるってことで、いつかまーくんはお母さんからも離れていくのだろうか。ボクにはよく分からなかったし、やっぱり少し寂しかった。
でも、柔らかくて丸くてプニプニしていたまーくんのほっぺがだんだん引き締まって、表情に厳しさや真剣さが出てくるのを、ボクは見てきたから。たまに悲しそうな表情でいるのを見るとボクも悲しくなったし、まーくんが何かと戦ってるんだなと何となく分かったから。だから、ボクには何もできない代わりに、まーくんを見守ろうと思った。
だって、ボクはまーくんの親友だから。