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ジョージとまーくん

 ボクには世界中のあちらこちらに、双子のようにそっくりな兄弟たちがいる。一度離れてしまうと、なかなか兄弟とは再会できない。でも、親友のお出かけについて行くと、時々兄弟とすれ違ったりすることがある。それは、街中だったり、遊園地だったり。そんな時、ボクたちはお互いの親友には気づかれないように会話をしている。

 親友にナイショっていうわけじゃないんだよ。ただ、ボクたちの声は、親友には聞こえていないみたいなんだ。

 初めて親友に出会った時も、ボクを見て、目を輝かせて抱きしめてきた親友に、ボクはこう挨拶したんだ。

 《お、おっと。や、やあ、はじめまして!きみはだれ?》

 彼はそれには答えず、ボクを抱きしめたまま、家族に紹介したんだ。

 「まーくん、この子がいい!ジョージって名前にする!」

 ―じょ、ジョージ・・・?

 どうやらそれがボクのことを言ってるんだと分かったとき、ボクは不思議な気持ちになった。

 ボクたちには名前がない。ボクはたくさんの兄弟の中の一つでしかなかったから。


 「ジョージと公園に行ってくるー!」

 まーくんはどこへ行くにもボクを抱えてあちらこちらを駆けまわるから、ボクはすぐに泥んこになった。泥んこになったボクを、まーくんのお母さんが、洗ってくれたけど、洗ってくれた後は、ボクはまーくんとは一緒に寝れなくなった。その度、まーくんは、いつもなかなか眠れず、遅い時間までぐずっていた。

 ぼくもなんだかすごく悲しくなった。温かいまーくんにはりついているのは気持ちが良かったし、まーくんの寝息を聞いていると、安心できたから。

 急にひとりぼっちになった気がして、冷たい夜風の中、綺麗な月を見上げていた。

 眠れずぐずるまーくんに音をあげたお母さんは、友人に頼んで、ボクそっくりの兄弟を譲ってもらってきた。ボクがお風呂に入った後、一緒に眠れるように。まーくんにはボクじゃないとは言わずに渡したらしいのだけど、まーくんはすぐに気づいてしまったんだ。


 「これ、ジョージじゃない」

 

 結局、新しく家族になった兄弟にはミッシェルという名前がつけられた。それから、お母さんの趣味のハンドメイドの洋服が着せられ、おうちのリビングに飾り立てられた。

 まーくんに抱えられながらミッシェルに会うと、ミッシェルはいつも恥ずかしそうな顔をしていた。


 《見てくれよ・・・今度は女物のドレスだぜ》

 《でも、似合うよミッシェル。ボクは服を着てもまーくんに脱がされちゃうからね。ちょっとうらやましいよ。》

 《そ、そうか・・?親友のいるジョージのほうが俺はうらやましいけどな。度々女に囲まれて着せ替え大会とか、けっこう疲れるんだぞ》


 苦々しい口調で言うミッシェルにボクは笑いかける。そんな風に言ってたって、ボクは知ってる。お母さんの手作りの服を着せてもらいながら、ミッシェルは毎回、嬉しそうにはにかんだ顔をするんだ。


 ボクの毛はミシェルのと比べると、何度も洗ってもらったから、ごわごわしている。色も少し濁っているし、まーくんのお絵かきのペンのインクが染みて、緑色の模様もできた。

 それでもボクはまーくんが好きだし、いつも一緒にいるのが嬉しかった。汚れだって、ボクにしてみたら、まーくんからもらった、【ジョージ】って名前と同じようなもので、プレゼントで、勲章だったんだ。

 

 

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