早くもピンチ到来
ーー「さぁ!私の後ろについてくるがいい!!」自己紹介の時の"イイコ"のフリを早くもかなぐり捨てた私はそんな上から目線な発言をかっ飛ばしていた。足を弾ませて歩く私の後ろで四名のメンバーはげんなりした顔した顔をした。「馬鹿って無駄に元気だよね。アメリアには馬鹿って言葉がよく似合う。」エヴァンがボソッと呟く。ラシェルもそれにうなづいた。「もう七時間ほど歩きどおしですのに、よくもまぁ…。無駄に元気がよろしいこと…」「体力ありあまりすぎだろ…」アルフもほとほと呆れたような顔をしていた。グレヴィリウスは蓄えている髭をさすり、「未知なる生物だな」と考え深げにそれらを締めくくる。うぉいっ!どうやったら、元気+馬鹿=未知なる生物という方程式が成り立つんだ!?このまま黙っていては、舐められて終わるのが関の山だろう。いい加減黙らせねば…。その為にも私はある事を指摘するべく、クルリと振り返った。「私が元気すぎるんじゃなくてアンタ達が体力なさ過ぎなのだよ!」さっきから無駄に無駄に、失礼極まりないものだ。まったくリーダーを舐め切ってる。けしからん奴らめ…。私は軽くアルフ達を睨んだ。そして、それに、と私は続けた。「馬鹿って言う方がカバなのだよ!!」ビシィッと四人(主にエヴァン)を指差すと彼は露骨に嫌そうな顔をして「指ささないで。それに僕をカバなんて動物と一緒にしないでくれる?考えただけでも嫌悪感に吐きそうになるから。」エヴァン特製、極寒ー150°の冷た〜い言葉を吐きました。オイオイオイオイ。今、全世界のカバさんファンとカバを敵にまわしたぞ。カバさんは素晴らしいんだよ!?強いんだよ!??…エヴァンが謝る気配がないので代わりに謝ります。ごめんなさい。私が心の中で、猛烈な勢いでカバさんファンとカバに謝っていると、不意に隣の茂みからガサゴソっと音がした。ーーかと思うと、何かが飛び出してきた。え?え?え??呆然と突っ立っていると、「馬鹿!何してんだよっ」という怒声と共に視界の前を紅い何かが横切った。目をパチパチっと瞬かせれば、目の前には刀を抜いたアルフの姿。少なくとも10mくらいは離れていたのに、瞬間移動ですか!?って聞きたかったけれど状況が状況だけに聞けなかった。…というのも、アルフの刀によって食い止められていた奴が"ライザー"だったからだ。ライザー、、それはゲームならそれはもうボスキャラ格の魔獣である。最初っから飛ばしすぎじゃないですか!?私が思わず二度見してしまったのも無理はないと思う。普通、討伐するタイプの旅はLV.1くらいの奴から順々に強い魔獣と戦うものではないのか!?そんな事を思いつつ、私はアルフの背中に隠れながら、ライザーの身体を観察した。人間の何倍もの大きさで、姿形は…狼が一番近いかもしれない。銀色に輝く肢体には所々金色のラインが入り、剥き出しの牙はその者の凶暴さを物語っている。ラスボス並みに威風堂々とした魔獣である。そこまで観察していて、私は、はたとある事に気がついた。…ラスボスvs新米勇者様。……勝ち目ねぇぇぇぇぇええええ。心の中でムンクの叫びをする。旅を始めて七時間と少し。早くも我がチームにピンチが訪れました☆