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青い百合のアリス  作者: パンダ所長
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その日から、警視庁捜査一課と、渋谷区警察署捜査一課との合同捜査本部を設置することにした。五十嵐が渋谷区警察署に行く前、捜査一課長、榊原に呼び出された。


「失礼します。五十嵐です」


「あぁ、五十嵐君。悪いね、忙しいのに呼び出して」


ニコニコと人の良い笑顔で席を勧める榊原は、かつて五十嵐が世話になった恩人である。五十嵐が交番勤務から刑事になったのも、榊原のおかげである。


「それで、俺に用ってなんですか?」


あぁ、そのことだけどね、と榊原は前置くと、ごほんとひとつ咳払いをした。五十嵐は少しだけ身構えた。たいてい、榊原が咳払いをするときは、良くない用事が多いからである。実に頼みにくそうな表情をして、榊原は五十嵐を見た。


「咲野アリス、君の部下なんだけどね」


「咲野?あいつがどうかしました?」


何かしでかしたのだろうか、と五十嵐は考えた。


「うん。五十嵐君、君に咲野君の面倒を見て欲しいんだ」


一瞬、榊原が何を言っているのか理解できなかった。頭が理解したときには、五十嵐はため息をひとつ、大げさについていた。


「課長、確かにあなたにはずいぶんお世話になりました。けど、今回は話が違う。俺が子ども嫌いなのよく知ってるでしょ?」


あぁ、、分かっている。というように榊原は五十嵐を見つめた。


「知っている。だからこそ君に頼むんだよ。五十嵐君」


聞くところによれば、アリスはイギリス人の父親、コリンズ・アーチボルトというイギリスでは有名な刑事の娘なのだという。アリスは小学生までイギリスにいて、いつしか父親のような刑事になるのが夢だったという。


「それで、アーチボルト氏はなんて言っているんです?」


「彼はね、君の話を聞いて、是非ともって言っていたよ」


つまり、警察学校を優秀な成績で卒業したアリスでもまだまだ至らない部分があるから五十嵐に面倒を見させようと、そういう腹積もりである。


「課長、俺より適任はたくさんいるでしょ?上原とか、それこそ水野でもいいじゃないですか。なんで俺なんかを?」


「本当は君が面倒見がいいことくらい、知っているからさ」


そして、榊原は人懐っこい笑顔で「よろしく頼むよ」と言った。




いやいやアリスのお守り役を任された五十嵐は、急いで合同捜査本部へ向かった。


「警部!遅かったですね?そろそろ会議が始まりますよ」


水野光秀が五十嵐に声をかけた。五十嵐は腕時計を見た。p.m3:45。会議はp.m4:00からだった。あと15分の余裕がある。五十嵐は水野に声をかけた。


「あぁ、水野。咲野を呼んでくれないか?話が終わり次第会議に戻る。秀さんに伝えてくれないか?」


「分かりました。すぐ呼んできます」


数分後、アリスは五十嵐に呼び出された意味も分からず、使われていない会議室に来ていた。


「五十嵐警部、それで私に話って?」


鈴を転がすような声で五十嵐に問う。しばらく口を閉ざしたまま、五十嵐はアリスを見つめた。


「実に伝えにくいことなんだが、俺は課長にお前のお守り役を頼まれてな。こんな面倒な事件を持っているって時にだ。新人の面倒を見るのは、正直、上原や水野に任せたいと思っているが…」


「つまり、私は問題児と言いたいんですね?」


言葉を遮るようにアリスは口を開いた。


「違う。新人教育だよ。新人教育!」


そう言うと、五十嵐はアリスを連れて捜査本部へ足早に向かった。


「…周辺で不審な物音を聞いた人物はいないようです」


二人が会議室に入ると、水野が捜査報告をしているところだった。


「五十嵐警部、お話は済みましたかな?」


秀さん、と五十嵐が呼ぶ神城秀一が五十嵐を見つけて声をかけた。アリスは顔を赤くしながら席へ戻った。アリスの隣に座る安斎はそっと声をかけた。


「アリスちゃん、大丈夫?顔が赤いけど、風邪でも引いた?」


「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと暑いかなってだけで」


五十嵐は神城の問に答えず神城の隣に座った。胸ポケットから煙草を出すと、口にくわえて火を付けた。五十嵐は酒と煙草が好きで、むしろ良きパートナーと言ってもいいくらいである。


「拓さん、ここ禁煙なんだけど?」


隣に座る神城が五十嵐の肘をついた。五十嵐はしぶしぶ火のついた煙草を手で握り潰した。


「よし、方針はこれで決定した。今日はこれで解散する」


五十嵐は太い声でそう叫ぶと、上原、水野、安斎、アリスにその場に残るように言った。


「いいか、今回の事件は解決に時間が掛かるかもしれん。何せこんな猟奇的な殺人はそう起きないからな。本庁の意地ってものを所轄の連中に見せつけてやれ」


はい!と声を揃えて返事をすると、五十嵐の部下は聞き込みをするために街へ出た。


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