塗られた都会
ある晴れた日のことだ。
俺は一人の少女に出会った。
俺を違う場所に連れていってくれる人に。
いつも通りに学園帰りにナンパをしていたら、いい感じの下級生がいたから声をかけた。
その子は綺麗な長い黒髪が印象に残る可愛い子だった。
「ご、ごめんなさい! 私、そういうのわからないです!」
なぜか謝られ走り去って行ってしまう。
「さすがに三連続で成功はしないかー」
俺のテクもまだまだだな。
「あー、君」
「うん?」
知らぬ間に横に人がいた。
ナンパ失敗の現場を見られてしまい恥ずかしい。
声の主は少女だった。
見覚えがある。
たしか、同じ学年の平崎由紀だ。
変わり者として有名な女の子だ。
可愛い顔をしてなかなかえぐいことをする。
告白してきた男子の返事に全てOKを出し、その後は放置。
いわく忘れてたらしい。
その彼女が俺になんの用だろうか。
「えっと、美笛裕人、だよな?」
「そうだけど?」
「ナンパばっかしてることで有名な」
「否定できない……」
いきなり失礼すぎないだろうか。
「私は平崎由紀っていうんだ」
「知ってるよ、あんたも有名だし」
「そうなのか? まあ、いいや」
どうでもよさそうに流す。
「ナンパ師の君にお願いがある」
「べつにナンパ師じゃねえからな」
「私の手伝いをして欲しい!」
そう言って頭を下げる。
「手伝い? なにをする手伝いだよ」
「私は影を探しているんだ」
「影って、あの?」
「いや、君の考えているものとは違う」
平崎はゆっくりと俺に近づいてくる。
「幽霊みたいな物だよ」
そして、薄く微笑んだ。
「は? 幽霊って……」
何を言ってるんだ?
おかしな奴とは思っていたが、マジにか?
「君のそのテクニックの力を貸りたい」
「いや、俺にメリットがないし」
頭のおかしい遊びに付き合うのはごめんだ。
「力を貸してくれたら君の言うことをなんでも聞くよ。それこそ奴隷のように」
「マジでっ!」
「ああ、なんでもだ」
「それは、その、そういうのでも?」
「繁殖行為に応じてやっても構わない」
「やります」
心は決まった。
「やらせてください」