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狂い出す生命

そこからなにかみえるかい?

みえなかったらつぎいくよ

たちどまっていたらだめなのさ

なんだかこころがほろほろだ

ふうせんみたいにしぼむのさ

ところがくうきがないほうが

はれつしなくてすむものさ

だからやっぱりすすもうよ

ここにいたらいけないとも




「はぁはぁ……」


ここまで来れば、大丈夫だろ。

僕は一心不乱に走ってきた道を振り返り、あいつらが来ていないことを確認する。

ツいてない。

本当にツいてない。

なんでいつも僕はこうなんだろう。

それは僕がキモオタでなよなよしてるからだ。

そんなことわかってる。

でも思わずにはいられない。

だってそうだろ。

理不尽な出来事に、はいそうですかなんて言ってたら、きっと何も考えられない人形になっちゃうよ。

僕はそんなの嫌だ。

だいたい、お金をたかるなら僕以外にもいるだろうに。


「ああ、くそっ!」


イラついて道端に落ちていた空き缶を蹴っ飛ばす。

物に当たるのはいい。

自分が強くなった気になれる。


「あいつらをあの缶みたいにぐちゃぐちゃにできたらな」


ついそんなことを考えてしまう。

僕はまだ火照った体を冷やすため、道の端に座り込んだ。

僕の名前は時須連鎖。

一言で言うなら駄目な奴。


やってられない。

学園に行けばDQN共に絡まれてカツアゲされるし、クラスの女子には指をさされながら笑われるし教師は僕を見やしないし。

帰ろう。

僕はゆっくりと立ち上がり、家に向かった。


ベッドに横になると、すぐに眠気がやってきた。 今日は何か疲れたし、もう寝よう……。




きみがせかいすくうんだ

このきたないろくでもないせかいをきみがすくうんだ

たいせつなのはおもいとつよさ

きみにしかできないことだからきみがやるしかない




変な夢をみた。

僕が世界を救うとかいう夢だ。

バカげてる。

僕みたいな生きてる価値のない人間が世界を救う?

笑わせないでほしい。

夢の中とはいえ、ひどいものだ。


自分の机の上に鞄を置き、椅子に座る。

そんな当たり前のことができただけでなんだか今日は絡まれずに済みそうな気がする。


「でさ、昨日お前なんで逃げた?」

「き、昨日は、その、用事があって……」

「へえ、俺たちに金渡すことよりも大事な用事?」

「そ、それは……」


くそっ! くそっ! くそっ! なんなんだよ! こいつら、死ねよ!

そんなに僕が嫌いかよ!

僕はクラスの数人に取り囲まれていた。

この糞DQNの中心にいるのは長瀬冬馬。

クラスの中心みたいな奴で表向きはいい人のように気取ってるけど、中身は本当に嫌な奴。

噂では麻薬にも手を出してるらしい。


「なあ、おい、聞いてんのか? ああ?」

「す、すいません……」

「謝るならさ、誠意見してよ」

「ど、どうやって?」

「お金、そうだな、十万円貸してくれよ」


無理に決まってるだろ!

こいつ、調子に乗りやがって!

そもそも貸すんじゃなくて、よこせだろう!


「なに黙ってんだよ!」

「ひっ!」

「ぎゃははは、冬馬ぁ、ビビらせちゃダメでしょー」


長瀬が僕の机を蹴る。

さすがに吹っ飛びはしなかったものの、横に倒れてしまう。

その光景を嬉しそうに周りの野郎どもが囃し立てる。


「あのさあ、時須、俺は怒ってるわけだ。 お前が逃げて、誠意を欠片も見せない。ありえないだろ?」

「はい……」

「明日までに、十万持ってこい」


それだけ言うと、長瀬は後ろを向いて去っていった。

他のもその後に続いて行く。


「はあ……」


ため息ばかりついている。

仕方ないし今日は家に帰ろう。


「ラララ〜♪」

いつもの帰り道を歩いていると、途中の公園で少女が歌を歌っていた。

とても可愛い少女が可愛い声を出している。

黒くて長い髪の毛が特徴的だ。

息を飲むほどに美しい。

しばらくの間、時間を忘れて見てしまう。

まるで、天使に会ったかのような。

そんな錯覚に陥る。

「あの……」

思わず声をかけてしまう。

「ひっ!?」

少女はギョッとした顔でこちらを見た。

「す、すいません! 迷惑でしたよね……!もうやめますから、許してください、本当にごめんなさい!」

いきなりペコペコと頭を下げだした。

「え、え、え?」

「申し訳ありません! 失礼します!」

走って去っていってしまった。

知らない間にひどいことをしてしまったのだろうか。

やりきれない気持ちで家に帰った。

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