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HAji-N-  作者: SAME
8/12

潜入

 あのクソ小さいミニが自分の車だったら、ヤマをおりて上山町役場でこの土地の登記を調べるのだが…。


 俺はほとんど斜面を滑り降りながら、そんなことを思った。


 伊瀬のやつは気が付かなかったか。

狭い道にびっしり家が並んでいるから、ごちゃついて分からなかったのかもしれないな…。

これが、閑静な住宅地だったらすぐに気が付いただろう。



 電柱はあるが、電線が一本もないのだ!!


 つまり電柱は完全に作り物なわけだ。


 なぜ役にも立たない電柱が何本もあるのか?

何者かが在りし日の芽久野を再現するため、としか考えられない。ここの住人はなんなのかまでは分からないが…。


 何のため?


 目立たせないためだ。


 あの鉱山施設で何かやっているのだろう。

 もしこんな山奥に迷い込んだ人間がいたとしたら…『大きな建物だけ』あるのと、『マチがあって大きな建物がある』のとでは怪しさの度合いが違う。少なくとも、鉱山関連の建物なんだな、で終わりだ。



 あー、もう御託はどうでもいい!!


『芽久野ではない、偽物だ』と何回主張していると思っているんだ!


 話 が 進 ま な い だろう !!



 俺は丁度低くなっている塀を乗り越えて、敷地の中へはいるのに成功した。子供の頃、ここからこっそり進入して遊んだものだ。この辺の再現率は凄いんだがな。


 まず、事務や研究所は入っている管理棟に行くのは止めることにした。さすがに建物内部へ入り込むのは難度がありすぎる…要は鉱山で『何をしているのか』がわかればいいのだから、坑道へ潜り込んだ方がいいだろう。たしかソコの入り口近くにも、簡単な事務所と休憩室があったはずだ。

 もし鉱物を掘り出しているならそれでいい…だが、そんな様子もないのなら、完全に『後ろ暗いこと』をやっているとみていいだろう。


 こそこそと、車の影や壁の横を通って坑道入り口まで向かう。面白いぐらい当時と同じだ。もし、場所が同じで些細なことに気づいていない状態であったなら、故郷が復活したと心から喜んだかもしれない。住み着いてしまったかも…それはないか。


 …と、ふいに違和感を感じて、俺は立ち止った。


 左に見えるは頑丈そうな扉…休憩室はもう少し先のはず。事務所はもっと奥。それ以外に部屋はなかったはずなんだが…。


 怪しい。


 どうやら鍵はかかっていない様で、そっと引き戸を開けて中をのぞくと、ずらりと台が並んでいた…ベットのようだ。休憩室にしては様子が変だ。


 ゆっくりと近寄ってみた。老人が横になっている…いや、よくよく見ると若者から中年から、あらゆる年代層がいるようだ。

 俺は一通り、横になっている人間を観察していった。まれに腕や足がなかったりする者もいる。それにしても、ピクリとも動かないな。


 そっと目の前の老人の胸に手を置いてみる…何も感じない、鼓動も呼吸も…


 …死んでいる?!


 その時、入り口から物音が聞こえ、俺は急いで老人たちが眠るベッドの影に隠れた。

どうも息づかいからして2人組で何か大きなものを運び入れに来たようだ。


 「何か、外から3人来たみたいだぞ。」

 「へぇ、珍しいな…観光かねぇ?」

 「さあな。でもさ、そのうちの一人が前にも来たことあんだってよ。」


 ドサンと何かが置かれる音。


 「2回目か?!それじゃぁ丁度良いじゃねぇか。」

 「ああ、今、富樫さんが…。」


 男たちの声が聞こえなくなり、扉が閉まった。


 そっと身体を起こして辺りを見ると、死体が又一つ増えている…うっすら赤い粉がついていた。

奴らが採っている石、の粉?そもそも、なんでこんな所に霊安室なんか設けてあるんだ?

何かがおかしい。何だ?何だ?


 …ちょっと待て。


 今の奴らは、俺たちの話をしてたな…2回目というのは…伊瀬の後輩のことか。


 そうだ、トガシさんに会いに行くとか行ってたっけな。さっき伊瀬には合ったから、二俣はまだそいつの所にいるんだろう。



 …丁度良い?何が丁度良いんだ?


 俺は知らず背筋が寒くなった。この死体の部屋のせいでないと思いたい。



 マズイ気がする。



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