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10「どうやら魔王は雑用係にされているようだ」

 

魔王(笑)とこれから一緒に昼を過ごすとか、勉強を教えてもらうとかエロゲのような展開になっても定められた運命から逃れる術はない。


俺の必死のランナウェイは虚しくも失敗に終わり、この教室という名の監獄にへと閉じ込められた。


「堂々と教室から出ようとしたらバレるに決まってるじゃない……」


「あえて堂々とした方がバレないもんかと思って」


「クラス最低点の一ノ瀬君がバレないわけないじゃない」


……知りたくない事実を知ってしまった。

ここはビリだったとネガティブな解釈ではなく、逆1位だったとポジティブな解釈をしとこう。

おお、そう解釈すると俺すごくね?


「しかし、この光景は驚愕的だな……」


「本当、皆本番では出来る子ばっかりなのに……。今回のテストは難しくしすぎたのかな?」


違う、違うよ先生。よく見てくれ。


8組の人数は男女合わせて31名。

その中で女子は17で男子は14。少々女子の方が多いクラスだ。


だが、今この場にいる人数は14人。

そして今回補習に招待された女子は八神のみ。そう、八神“のみ”だ。


つまりは俺を含む残り13名は全員男子。

これは三沢を除く男子全員が補習に参加している計算になる。


予め言っておくが、8組の俺を除く男子は召喚が出来る学園のFクラスとは違い、馬鹿ではない。

むしろ優秀と言っても過言ではないだろう。


ならば何故このような状況になっているのか?


答えは簡単。

原因は美羽先生だ。


昼休みに俺は、今回の補習には美羽先生の授業を受けたいがために、わざと赤点を取った男子が一部いると述べた。

だが実際は男子のほぼ全員が作為的に赤点を取ったのである。


どんだけ人気なんだ美羽先生。

確かに去年のミス青学では上位に名前が挙がったが。


というか、これを打ち合わせなしでやった8組男子に脱帽したい。

お前ら全員漢だよ。

社会的には馬鹿だけど。


「真面目にやって赤点を取った一ノ瀬の方が馬鹿だと思うがな」


「……何故お前がいる?」


今の状況を整理していると、いつの間にか俺の席の真横に三沢が立っていた。

高得点を取った三沢は補習を免除されているハズなのだが……。

まさか三沢も美羽先生の授業を受けたいとかか?


「なに、流石にこの人数を担任一人で受け持つのは厳しいと思ってな。そこでヘルプとして俺が名乗りを上げたわけだ」


要するに暇なのか?

……いや、コイツの場合は問題を解けずに悩む俺の姿がみたいだけだろう。

どうでもいいけどヘルプと聞くと夜のお店の用語のイメージしかない俺はもう駄目だと思う。


「駄目だよ三沢さん!!馬鹿なお兄ちゃんを監視するのは優秀な妹である私の役目なんだから!」


「さて、どこからツッコむべきか」


「下半身?」


いきなり教室に侵入してきて馬鹿な発言をした妹にとりあえず全力で消しゴムを投擲。

凄まじい速度で放たれた消しゴムは眉間を打ち抜かんと妹に真っ直ぐに襲いかかるが、妹は慌てることなく放たれた消しゴムを片手でキャッチ。

なにその無駄なスペック。


「甘いよお兄ちゃん。そんな盗賊レベルの単発攻撃が私に当たるわけないよ。せめてあと50は増やさないと」


「そんなに消しゴム持ってねえよ」


「常に最高の妄想をイメージすれば投影出来るよ!」


「身体は消しカスで出来ているんですね、わかります」


「三沢は黙ってようか」


50以上もの消しゴムが投影され、一斉に妹に襲い掛かる光景を想像してみる。


なにソレ怖い。


「……三沢君。邪魔するなら出ていってね?」


「邪魔になればな」


もう既に邪魔だっての。


「一ノ瀬さんは邪魔にならなくても出ていってね」


「理不尽だ!?」


理不尽じゃねーよ。違うクラスどころか違う学年なんだから。


「お兄ちゃんは私がいないと勉強に集中出来ないよね!?不安だよね!?やる気起きないよね!?あっ、今のやる気ってのは決して下ネタ的な意味では―」


「出てけ」


「兄の冷たい態度に全妹が泣いた!!」


妹が教室からログアウトしました。

俺が追い出そうとしても必死に抵抗するので、電話で魔王(笑)さんを呼んで引き取ってもらったが。

その際に―


「なんで私がこんな事を。仕事もあるのに……」


「放して!私がいないとお兄ちゃんがあの淫乱教師の爆乳に溺死されちゃう!」


「い、淫乱教師の爆乳……。私って生徒からそんな風に見られてたの?」


「はいはい、貴女にないものだからって先生を妬まないの」


「HA☆NA☆SE!!」


「一ノ瀬。ここは俺が『もう止めて!爆乳のライフはもう0よ!』と言うべきだろうか?」


……もう色々とカオスだった。

それだけではなく、まさかの魔王(笑)さんの登場に男子13名全員が歓喜の声を上げている。昼休みのときにはただ驚く事しか出来なかったくせに、どんだけ順応性が高いんだよ俺のクラス。


この状況を作りあけだ人物全員が俺の関係者という事実にコミュニティをミスったと後悔した。

どうしてこうも俺の周りは変人ばかりなのだろうか。


「一ノ瀬、類友というのを知っているか?」


「……百点満点の解答をありがとう」


悔しいことに納得しちまった。


「い、色々とアクシデントがありましたが、補習を始めたいと思います」


アクシデントと言った瞬間にクラス中の視線が俺と三沢に集中した。

その視線に気づかないのか、箱根駅伝を完走したランナーのように疲れた顔をした美羽先生がプリントを配り始める。


「ふふん」


三沢が得意気に鼻を鳴らす。

これは別に羨望の眼差しとかじゃないから自慢気な顔をするな。


「ああ、ありがと」


前から送られたプリントを受け取る。

これを提出して正解したら解放されるので、ちゃっちゃと終わらせよう。


「…………は?」


心機一転してプリントに目をやると、そこには全く意味不明の数字や記号の羅列。

何をどうしていいかまるで分からない。


えっ?俺が授業中に居眠りしている間にどんだけ授業進んでんの?

皆カリカリと筆を進めてるけどコレ分かるの?


「……三沢、ちょい教えてくれ」


「やはり無理だったか」


癪に障る言い方だが、実際に無理なのだから反論出来ない。


「むぅ、これが解ければ懸賞金を獲得出来たというのに」


「はっ?なに、この補習って懸賞金出んの?」


「そんなわけなかろう」


話が噛み合わない。

三沢は何が言いたいんだ。


「なに、ただ一ノ瀬のプリントをミレニアム懸賞問題が書かれたモノにへとすり替えただけだ」


「解けるか!?」


「先日観た映画でな、顔は平凡なのに実はかなり数学が得意という設定の男子高校生がいた。もしかしたら同じ平凡な顔である一ノ瀬にも同じような特技があると僅かながらも期待したのだが……」


「ケンカ売ってる!?ケンカ売ってるよなソレ!?」


「よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」


三沢がログアウトしました。

魔王(笑)さん、ホントご苦労様です。


「んー……」


三沢が連行されてから俺はプリントに集中したが、すぐに壁にぶつかった。

シャーペンを唇と鼻の間に挟んで、いかにも「俺悩んでますよー助けてー」オーラを醸し出す。


「どこか分からないところでもあるの?」


狙い通り、悩む俺の姿を見つけた美羽先生が教科書片手に近づいてきてくれた。

この時の心の中の俺はきっと新世界の神以上に悪い笑みを浮かべていたことだろう。


「はい。これはもう先生に訊かないと分からない問題で……」


「うん、どこかな?遠慮しないで質問していいよ」


よし、言霊はとった。

ならば遠慮なく質問しようではないか。


俺は出来るだけ幼い声でこう訊いた。


「先生のオッパイは身長と反比例してるんですか?」


吹き出した。

その質問に、表面上は真面目にプリントをこなしているが数秒ごとにチラチラと美羽先生を見る男子生徒全員が吹き出した。

何人かはむせている。


美羽先生は顔を真っ赤にして、腕で胸を隠すようにする。心なしかワナワナと身体が震えているように見える。


「た、叩くよ……?」


「オッパイで?」


叩かれた。

オッパイではなく教科書で。

しかも教科書で叩いたというのに俺の頭にはタライでも落下したかのような激痛が襲う。タライが落下してきた経験なんてないからどれぐらい痛いか知らないけど。


にしても、ちくしょう。美羽先生を誘導してパイパンチをもらう作戦は失敗か。

これは家に帰ったら反省会をして、更に綿密な作戦を考えなければ。


「……一ノ瀬君はプリントもう二枚追加ね」


「理不尽だ!?あまりにも厳しい仕打ちに全俺が泣いた!」


((((やっぱり血は争えないのか……))))


「な、なんだその目は!?見るな……そんな目で俺を見るなああああああああああっ!!」


「……二階堂さーん、お願い」


俺がログアウトしました。


「だから何で私が……仕事に手を付けられないじゃないのよ……」


そう言いつつもどこか楽しそうな表情を浮かべる魔王(笑)さん。

安定したツンデレっぷりであった。


……あれ?ていうかこれって俺、補修から解放されたってことじゃね?

おお、災い転じて福となすってのはこういうことを言うんだな。


「一ノ瀬くんは明日までにプリント終わらせてきてね。勿論追加された分も」


……次のテストは赤点取らないよう頑張ろう。


「大丈夫よ」


「はい?」


「この私自らが直々に勉強を教えてあげるのよ?心配しなくても中間試験では最低でも上位50位以内に入るようにみっちりと面倒見てあげる。か、勘違いしないでよね。これはあくまで等価交換なんだから、貴方もちゃんと代価は払いなさいよ!」


魔王(笑)さんのツンデレ力は人類の限界を超えていると思う。

と言っても、まさか現実で等価交換とか代価という言葉を聞く事になるとは予想外だったが。


てか、魔王(笑)さんと約束をしたのは、いささか早計だったかもしれない。

学年の人数が約240人。一時は試験のラストオーダーと畏怖された俺に上位50位以内に入れとか無理ゲーすぎる。


「はあ……」


これからの事を考えると、俺は溜め息を漏らさずにはいられなかった。



えっ?前回の投稿から急にアクセス数が2・3倍ぐらい増えたんですけど。

何が起きたんですか私の小説。


まさかこれが魔王(笑)様の力だというのか。

なんにしてもありがたやー。

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