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でも居酒屋俺も好きだよ。

 今日は、同窓会当日だ。



「さぁて、皆さん揃っとるーっ!?これから同窓会を始めたいと思うで!司会進行はウチ森岡彩芽と!」

「秦野朔夜ですよろしく!!」

本当に適役だな…。

会場は、始まって5分も経ってないにも関わらず、大盛り上がりだった。

明るい二人は、司会進行にぴったりだ。

 「さてさて、皆さん取りあえず食って喋って盛り上がってください!後半はゲームも用意しているのでお楽しみに!」

イエーイ!、とみんなが声をあげた。……さすがだ。

「ヤァヤァお久し振りじゃないのさ二人とも!」

司会を一旦終えた二人が、俺達の隣に座る。

「ほんと久し振りやねー!」

「うん、彩芽の関西弁が懐かしいわ」

彩芽は、関西圏を勤務先移転の繰り返しで転々とした末関東に行き着いた父に連れてこられた関西弁っ子だ。関西人に言わせると、これは色んな方言が混ざりすぎて「大阪弁」とも「京都弁」とも呼べない言語らしい。 関東人には分かんないんだけどね。

「あはははっ、ウチ未だに全然標準語使えへんねん。慣れへんもんやなぁ、あんだけ向こうにおると。ま、毎年向こうに帰っとるさかい、関西弁抜ける訳がないわな!!」

わはははは、という豪快な笑い方も変わっていない。彩芽は彩芽のようだ。

「朔夜も久し振り」

「ん、成長したなー澪。バイトやってるゥ?」

「親戚のおじさんみたいな事言うなよ。バイトやってるけど、いまだに金欠から抜け出せないよ俺は」

「澪は使うときにガンと使うからなー。一気に無くなるよな。なんど昼飯奢ったことか」

あー、中学時代はそんな事もあったような無かったような。とにかくパソコン用品とか漫画が欲しくて、お金使いまくってたからね、あの頃は。今もだけど。

「まぁ、変わってないみたいで安心したぜ。相変わらず、天才的な理系頭と地獄的な文系頭なんだろ?」

「うん。こないだの定期テストで95点とったよ、数学」

「で、英語は?」

「……1の位と10の位を足したら、5かな」

「その条件だと、最高でも50点しかとれてないことになるんだが、どういうことだ?」

はははよく分かったな。だが50点じゃない。32点だ。

「なんでそんなに差があるんだ……」

「数学は、ゲームで敵HPと与えた総ダメージの計算とかで使うからね」

「英語だってプログラミングの時スクリプトで使うだろ!?」

「お、よく知ってるじゃん。だけどスクリプト言語と英語じゃ文法も単語の意味も違う」

俺、JavaScriptなら文法も命令も覚えてる。使うし。基本的な奴なら大概扱えるかな。object言語も一応使える。Cが得意。

 「でも基本は同じじゃねぇの?」

「だとすると、なぜifの後に数字列がこないのか不思議だね、俺は」

ifの後には、キャラクター好感度の関数がくるはずだ。ああ、これはNscripterだけど。

「じゃあ、国語は何点なん?」

突然、彩芽が会話に参入した。

「77点だったかな」

「へぇ、そこまで悪くないやん。国語は得意なん?」

「うん。ラノベ読むからね」

「……ライトノベルって、案外バカにできないのよね……」

「えっ、珠里もそういうの読むん?」

「結構面白いぜ。マンガっぽいけど結構文学だし」

「ウチも読んでみようかなぁ……」

うんうん。ラノベはヲタクの文化じゃないからね。普通の小説だし。みんな読んでみればハマるよ。



 夕方になり、会場の居酒屋は騒がしくなってきた。

「そういえば、なんで未成年なのに同窓会が居酒屋なの?」

場所取りをしたはずの二人に聞いてみると

「それは珠里からの直々指定やで。中学ん時からおつまみ好きやったからなぁ」

という答えが返ってきた。高校生なのによく予約できたな。

「あぁ、そういやウイスキーボンボンを平気な顔で平らげてたな、中学時代」

そう話す横で、珠里は「枝豆もう一皿いただけますー?」「チーズ揚げお願いしまーす!」「馬刺一皿ー!!」のコンボだ。

「俺の美少女像がどんどん崩れてくぜ……」

「顔はいいんやけどなぁ」

「好物と食欲が異常だよね」

ちなみに当の本人は、頭を抱える朔夜と溜め息をつく彩芽と呆れている俺を、「何でそんな顔してるの?」とでも言いたげな表情で見た。

「みんなも頼みなよ〜。大人になったら飲みに行こうねー!!」

「う、うん」

頷いてはみたものの、正直、そう言う珠里にはついて行けそうにない。

 「じゃあ俺も注文しようかな。俺焼き鳥のモモ」

「お、朔夜がモモなら俺は皮で」

「じゃあウチ葱間で」

「焼き鳥好きね、みんな。じゃあレバーで」

「お前まだ食べるのか!?」

「太るで?」

「だぁいじょうぶよぉ。学校で体育もあるし、椿高校(カミーリジャ)って坂道きついのよ?毎日山岳トレーニングな気分なんだから。まぁ見晴らし良いけどね」

それにしても異常だ。

 「へぇ。澪んとこの紫苑高校(アスター)は?」

学校の話題に、朔夜が食いついた。

「俺んとこは超平坦だよ。校門まで100メートル走しながら登校できるから、朝やって負けた奴が昼飯奢りっていうルールがある。勿論やるかやらないかは自由だけどね。ヒネージッシェグロッケンブルーメは?」

「よく覚えてはるなぁ、そないな長ったらしい二つ名。個人的にはキネーズィッシェグロッケンブルームて発音したいねんけど、流石に3か国語混ぜちゃ拙いねんな。ウチんとこは、坂より階段やねん。全部で180段あって、最後の30段くらいはアドヴェントカレンダー代わりに、1日一本クリスマスキャンドルをたてていったりするで」

ヒネージッシェグロッケンブルーメや、アスター、カミーリジャは各校の二つ名だ。アスターとカミーリジャはよく使うが、流石に桔梗高校の二つ名は長すぎるので、ポスターなんかで格好つけたい時しか使わないね。覚えてる人も少ないし。

「シュテッヒパルメはご存知の通り、『東洋のモンサンミシェル』だからな。アクセス方法によって難易度が変わる」

シュテッヒパルメ——柊高校は、体育会系で機動隊などの就職率も高いのもあって軍事施設を兼ねた校舎で、人工島ひとつ丸ごと学校らしい。モンサンミシェルのように城塞になってて、中も自衛隊や在日米軍の為の小さな街になっているんだそうだ。行ってみたいなぁ、卒業したら。

 「私、シュテッヒパルメ攻略だけはしたくないなぁ。司令する側もされる側も大変そう」

「大変やでー。去年一瞬やらされたけど無理やった」

去年クイーンだった彩芽が言うと説得力あるなぁ。珠里はエースだから細かい戦略は関わらないはずだけど、まぁ正体バラさない為の演技だろうな。その点ナンバーズは楽だ。そういえば、朔夜は……?

「ねぇ、朔……」

訊こうとすると、朔夜はそれを拒絶するかのように、席を立った。

「さて、これからゲーム始めまーす!」

マイクでそう言う朔夜を見て、慌てて彩芽が立ち上がる。

半分くらい、裏がとれたかな。

朔夜は多分——。









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