なるほどこれを闇サイトというんだななんて便利なんだ
13話まえがきにてに訂正を載せてあります。
ご覧ください。
家に帰った俺は、さっさとパソコンに張り付いた。
昨日見ていたページにログインすると、同盟の話がもうあがっていた。
[今年は同盟早かったですねー]
[ハート結構キビしいんじゃねーか]
など、想定内の言葉が飛び交っている。
その中で、一つとんでもないスレッドがあった。
[今年は闇のジョーカーいるの?]
……!?
なんで知ってるんだろう。言い回しからして昔から知っているような――。
[近年いないらしいですね。私達の役目なくなっちゃうじゃないですか]
[ここって、昔の闇のジョーカーが、未来の闇のジョーカー保護の為に作ったんだよね]
[えっ、最初からその目的で作られたんですか?知らなかったー]
……え?なにそれ……。
そんなの聞いてない…。ガセか?
[そもそも闇のジョーカーがここの存在を知らない可能性があるんですよね]
[あ、私も現役んとき知らなかったー。終わってから知るとか皮肉っすよね]
[え、OBなんですか?]
[はい。もしかしてここって現役もいるんすか?]
[現役は少数派だよ。でも闇のジョーカー経験者も少ないね。歴代ゲメルデと、スポンサーについてる裏社会の人なんかが殆ど]
[詳しいですね。さすが管理人]
管理人……この人が。
なんかすごく信憑性がある会話だけど……もしかして非公式だったとか?
[今年の闇のジョーカーが、ここで名乗り出てくれればいいんだけど]
[それ、神にバレそうじゃないすか(笑)]
[大丈夫だよ?検索除けはしてるし。あと書かれたら全員に知らせて速攻消す]
[まぁ最終手段はハッキングかまして強制データ削除ですね]
……会話からして、ここの人達相当手練れなのか?
もしかして、話しておいた方が得……?
それは、本当に勘だけれど。
{あの}
そう書き込む。
[おや、新入りさんだね]
[わー、見たことないIDですもんね。いらっしゃい]
{あの、突然で悪いんですが}
{僕、今年度闇のジョーカーです}
その後の、そのスレの荒ぶりようと言ったら。
それは、本当に勘だったけれど。
なんだか、当たっている気がした。
この、皆の協力性の良さを見ると。
その晩だ。
本格的な『仕事』が舞い込んだ。
最新の書き込みで「ダイヤがハートと同盟組むっぽいよ」とあり驚いていたところに、奏からメールが来た。
『仕事だよ。
ダイヤとハートが同盟を組むらしい。
当事者間では話が進んでいるみたいだから
ダイヤ側のメール回線を破壊して、公布できないようにして欲しい。
いや、ウイルスでもなんでもいいんだけど。とにかく公布を阻止するんだ』
……ははぁ。なるほど。考えたね。
要するに、壊れたように見せかけてメールを阻止すればいいんだな。
いや、回線の混雑を装うか?でもそれじゃWEBメールを使われたら終わりだ。
それともいっそ、一時的にサーバーを停止するか……。それだとすごい影響が……。
ていうかそもそも、締結はいつだ。
あー、これは奏もわからないかな。
視線をケータイからパソコンへ移し、キーボードに手をのせる。
{それっていつ締結かわかりますか?}
[んーと、明日かな?]
{ということは、最低でも明明後日までに公布ってことになりますね}
[そうだね。なに、仕事かい?]
うわぁ、数時間でここまで知れ渡ったか。
{ああ、まぁ……。外部に漏れないようにお願いします}
[はっはっは。ここの連中を甘く見すぎだ。プロが集まっている上にサイトに護衛部隊がついているんだぞ?]
……素直にすげぇなここ。それで流出を防いでるのか。
{知りませんでした。すごいですねここ}
{仕事なんですよ。ダイヤのメール回線を破壊しろっていう……}
[あ、それ私やりましょうか?]
えっ?
さっきまで話していたのとは別の人だ。
{どうやってですか?}
[簡単ですよー、無線RANのアクセスポイントにちょちょっと細工して、壊すんです。各王宮に振り当てられたアドレスから送らないといけないんで、妨害できます。あ、私ダイヤの関係者なんで]
{本当ですか!?いいんですか?裏切り行為ですけど}
それはいい手かもしれない。ついでに直るまでの数日間連絡不能になる。
[大丈夫ですよ、生徒ではないので。ただ、問題は――]
告げられた言葉に、俺はにやりと笑う。
そういえば、奏が、なんか言ってたっけ、と。
{大丈夫です。なんとかする手があります}
[そうですか。なら実行しますよ]
{ありがとうございます}
[お役に立てて嬉しいですよ、闇のジョーカー]
{そんな、大袈裟な}
[いえいえ、私たちはあなたの為にいるんですから]
そうらしいが、なんかそう言われると落ち着かない。まるで俺が王様みたいだ。
ひとまず、仕事は成功させられそう。あ、でもその為には奏に電話しておかないと。
ケータイを操作して、奏の番号を選択し発信ボタンを押す。
――と。
『はっ、はいっ……』
電話がつながり、やけに怯えたような声が聞こえた。
「あ、もしもし奏?俺だけど……なんでそんな震えてんの?」
『……澪?』
そうだと答えると、奏は心底安心したように「よかったー……」と言う。
「なにがあったんだ」
『いやさー、テレビで今ホラー特集やってて』
「怖がりのくせに一人で見ていたと。へぇ、今度すごい怖いお化け屋敷に連れて行ってあげるよご主人様」
『え、遠慮しますっ!!……で、何?』
……弱点みっけ。
いやそれより、まずは仕事仕事。今度いじればいいや。
「仕事のことだけどさ、こないだ話してたいとこに頼みたいことが――」
『あー…刹那に?あいつはプロフェッショナルだから多分いい仕事してくれるよ』
電話の向こうから、少し楽しそうな奏の声。
プロフェッショナル?
この手の?
……嫌な予感しかしないのは、俺だけか。