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トランプの遊戯、ついにはじまっちゃうよ♪by奏

進行の都合上、もしかしたら最後のほうを後で削るかも知れません

 ……だるい。

 完璧なる寝不足だ。

 寝れねぇよ畜生。

 あぁ自分が情けない……。

 非常に残念ですが、この状態で、今日からトランプの遊戯がスタートいたします…。



 「おはよぉ澪!今日から本番だよ!元気?」

「なんで家の前にいるんだ」

玄関のドアを開けて開口一番がそれだった。

 いや、だって普通に考えて家の前に奏がいるとかおかいしだろ。

 ブレザーと同じ灰色のパーカーのフードを目深に被り、黒いストッキングを穿いた奏が、フードからはみ出る白くて長い(ウィッグだからね)を揺らして、笑顔で(フードでそこまで表情はみえないんだけど)家の前に立っている。

 端から見たら凄く変な格好だけど、奏だから仕方ない。奏みたいなアルビノの場合紫外線にハンパなく弱いから、こうやって肌の露出を抑えているんだ。そうしないと皮膚ガンになるからね。

 それ以外違和感がないのが奏の凄いところだ。コレ男なんだけど、何故女装なのに違和感を感じないんだろう。これじゃ完璧に女の子だ。

 ……ツルペタだけど。

 「はやく起きたから、迎えに来ちゃったのー」

「……で、何故朝から女口調」

「トランプの遊戯始まるとさ、神ってバレやすいんだよねぇ」

変装だよ、と言うが、見た目だけで充分誰だかわからないと思うのは俺だけか。

 「それより、今日は開会式のでしょ。バンクなんだから、はやく行かないと」

「あぁ、そうだn痛い痛い!引っ張んな!!」

「ごめんごめん」

「反省してないだろ離せ!!」

なんで朝から奏にひきづられてなきゃなんないの……。

 駅までには流石に離して貰ったけど、駅ではたまたま会った彩芽に

「えっ、何、彼女?へー、やりおるやん澪!可愛い子やなぁ。あぁ、大丈夫やで珠里には内緒にしておくから」

「違うって!!」

なんて話になっちゃうし。振り回されっぱなしだ…。

 この状況で大丈夫なのかな……。



 学校は、騒々しかった。

 「本日より、トランプの遊戯を開催します!!」

開会宣言が朝行われ、その後は授業が普通に行われる予定だが、気が気じゃない。いつ、誰から何を通告され、どうしなければならないか、全くわからないんだ。いつ奇襲が来たっておかしくない。

 そんな中で、俺はただ一人、冷静を欠かしてはならなかった。

 奏から次々もたらされる情報を整理し、スペードの状況と照らし合わせ作戦を練った上で、自分でも情報を仕入れる。

 ……無理に近い行為をこなさなければならないらしい。

 そうそう、俺手紙を書かなきゃいけないんだよね。各々の『王宮』へ。

 書き上がった原稿を見直し、顔をしかめる。こんな厨二な文章でいいのかな。

「いいんじゃない?それで」

「……奏?」

背後で突然聞こえた声に、ふと振り向く。

  白い髪を揺らして卓上の手紙を覗き込む奏と目が合い、奏は軽く笑った。

「いいと思うよ、それ。なんか信憑性があって。スパイっぽい。ていうかそれ、学校なんかで書いて、他の人に見られないようにね?」

「大丈夫、授業中に書いてるから」

「それもどうなんだろう」

だって授業受けなくたって、ねぇ。

 「それ、どうやって配るつもり?普通に出したら住所書かなきゃいけなくなっちゃうじゃない」

「……奏、行ってきて」

「えっ!?」

「女装したまま、ラブレター渡すような感じで」

「え……、おっ、俺がご主人様だからねっ」

「口調戻ってるよー。てか、俺は別に契約解消したっていいんだから」

「う…」

奏が黙った。全てのゲメルデにおいて前例ないと思うけど、契約解消できないとは言われてないもんね。

 契約解消と似たものに『裏切り』があるけど、実は違う。裏切りっていうのは契約相手に何も言わずに別の人と契約したり命令を拒んだりすることで、契約解消は相手に伝えて正式に解消すること。こちらは双方同意の上っていう制限がつくけど、そこに関してはいくらでも脅しがきく。

 「仕方ないなぁ……。行ってきてあげるからご褒美ちょうだいね?」

「はいはい、なんか奢ってあげるよ」

「やったー!花月堂のケーキ!」

奏が跳んで喜ぶ。甘いもの好きだよな、こいつ。

 さて、それはどうせ放課後だし、俺は王宮でサボってようかな。



 サボろうと思って王宮に行ったら、ゲメルデの皆さんが揃っていた。

「あの……何してんスか……?」

「え?作戦会議だよ。君も出てくれないか?」

「いや、俺は……横で情報収集してます……」

真顔でエースにいわれてしまった。ゲメルデの特権とかあったっけ?というか三笠がクラス居なかったの気付かなかった。

 王宮常設のデスクトップPCを起動し、OSが立ち上がるのを待つ。

 そういえば、言わなきゃいけないことがあったな。

「エース、ジョーカーなんですが」

「何かわかったのかい?」

「何かというか、ルール改正があったらしくて」

「は?ちょっと待てお前。俺達そんな連絡受けてねぇぞ!!本当なのか!?」

キングがいきり立つ。そりゃそうだ。ルール改正が伝達されてないなんて、普通はありえない。

「ええ、トランプの遊戯公式ホームページのルール一覧の一番下に、こっそり付け加えられてました。みますか?」

完全に起動しきったパソコンでインターネットブラウザーを立ち上げ、ブックマークから公式ホームページにとぶ。

 それからルール一覧のページを開き、スクロールして最後の項目をクリックした。

「新ルール、ババヌキ……?」

「要するにジョーカーを奪えるってことみたいだな」

「ちなみにジョーカー獲得が見込まれるハートは、このルール気付いてませんでしたよ。エースと知り合いなんですが」

「……お前、クラブクイーンとも知り合いじゃなかったか?」

「はい」

「情報網が凄そうだな……」

「そんなことないですよ」

キングの呆れ顔に、さらりと否定の言葉をかける。

「ハートはハート、クラブはクラブだし、俺もバンクです。友達でも敵であることに変わりはないです」

「ふぅん……割り切ってんのか。それもそれで辛そうだな」

……辛い?辛いのか。

 そうか、友達を敵に回さなきゃいけないんだもんね。辛いはずなのか。

 ……あれ?じゃあ俺が変なのか?

 それを当然だと思っている俺が。

 あーあ、ヤんなるなぁ。なんか、自分に感情が無い様に思えてくる。

 なんだろう、いつもなら、心から出てくる感情ってのがあるのに。



 「あっ、あの!!」

写真で見た顔を見つけ、声をかけた。クラブのエースだ。

 澪からの手紙が入った白い封筒を渡そうとして、ガシッと肩を掴まれる。

「そのフード……その髪……!!お前、刹那か!?うちの生徒には手ぇ出させないぞ!」

「なっ、何言ってるんですか!?」

凄い剣幕。相当嫌われてるらしいな、刹那ってのは。

 ……いや、ということはあの刹那なのか?

「ここら辺で白い髪なんて、天羽刹那しかいないだろう!!」

天羽……刹那……!?

「ち、違いますっ!誰ですか!?わ、私、隣の市から来たんです!!」

脅されて驚いているか弱い少女を演技する。こんなの、馴れたもの。

「……そうか、悪かった。確かに髪がただの白だな。銀色じゃない」

銀髪……か。あの刹那以外いないな。

 それにしてもよかった、神ってバレたんじゃなくて。

「あっ、あのっ!!これ……後で読んでください!失礼しましたっ」

一気にそこまで言って封筒を押し付け、そのまま全力ダッシュ。

 慌ててるエースを置いて、見えなくなるまで走って路地に曲がり込む。

 はぁ、はぁ……。日差し強いなぁ。逃げ込んだ路地が日陰でよかった。

 こんなとこでよく、刹那は活動出来るもんだ。

 まぁ、彼と俺とじゃ全然違うんだけど……。

 「あれ?こんなとこで何してんの、奏」

突然声がして、はっと上を見る。

 銀髪の少年が、面白いおもちゃを見つけたような表情でこちらを見下ろしていた。

 「α-albinoは大変だな。日差しに弱くて。まぁ俺もこないだまでそうだったけど」

「こないだまで?……ってまさか!!」

「そぉ、至上三人目のαγ-albino」

 俺の親戚で俺より綺麗なアルビノだった彼。にっと笑って見せる右目は、紫色だった。

 そうか……。彼に、クラブ周辺の情報を貰えば、ぐっと作戦が楽になる。

 しかもαγ-albinoとなれば。

「ねえ、刹那──」

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