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--佐藤澪、起動します-- 【微妙にR-15】

微妙に15禁です。覚悟して読んでください。

 だって、悔しかったんだもん。

 学校帰りに友達とスタバに寄ったら、やけに仲良さそうに、紫苑の制服着た女の子と喋ってる澪がいたから。

 油断してたかな。澪、元々は女の子と絡むの苦手で馴れるまで無愛想で、女友達なんか、ましてや彼女なんて絶対できないと思ってたのに。

 だから、ゆっくりゆっくり、幼なじみの枠を越えていこうと思ってたのに。

 幼なじみなんて、私は圧倒的不利だ。澪の事をよく知ってるとか、正直恋愛には関係ない。大切なのは、澪の瞳に映る自分の姿。

 そう、澪が私を幼なじみとして映してる以上、私はそれより上の地位には登れない。

 ねぇ、澪のことこんなに大好きなんだよ。

 一瞬でもいいから私を見て。

 私を他のみんなと同じ視線で、公平に審査してほしいの——



 お待たせ珠里、と、澪がドアを開ける。

「いて良いってよ。でも流石にこの部屋で寝るのは……」

「私それでいいよ?」

「よくない。お前は俺に何がしたいの」

悩殺したいです、本当は。

 でもなんか、澪には煩悩なんて無さそうだなぁ。スカートめくれても涼しい顔で通り過ぎていきそう。

 「とは言うものの、他に部屋がないんだよな」

澪が困ったように首を傾げる。

「だからこの部屋でいいよ。澪、そういうの興味無さそうじゃない」

「あ……いや、その……無い訳では……まぁいいや……」

え?何?聞こえなかっ……あらら、あれは絶対喋らない顔だ。

「じゃあ、俺がリビングで寝るよ。ここ使っていいよ。あ、漁らないでね」

「え、それは悪いよ!!いいじゃん一緒に寝ちゃえば。澪小柄だし入ると──」

澪が一瞬顔をしかめる。あ、やば。禁句だった。澪、167センチちょいくらいしかないんだよねー。170超えたのかなぁ?

 とか考えてたけど、澪の切り返しが意外だった。

「こんなちびにはお前も興味無いだろうしな。いいよ隣で寝て」

えっ?な、なにそれ。どういうニュアンス?皮肉?

「そんなことない……よ。わ、私身長とか気にしないし!!」

「……そ」

え、何この空気。なんか気まずいな。ど、どうしようかな……。

 「あ、ねぇ聞くけど」

話題を変えてみよう。

「ん?」

「心理テストだと思って」

「はぁ」

「自分の敵だけどすっごく仲がいい女の子と、自分の味方で自分のことが好きそうな女の子、二人が命の危機にさらされてるとして、どっちかしか助けられない状況なら、どっちを助ける?」

「そりゃあ──」

…味方か。そうだよね。昔からコイツは──

「どっちも助けないな」

…!?

「だってさ、その状況じゃおそらく自分の命だって危ない訳で、じゃあ命懸けられるのはどっちかっていわれたら絶対に仲いい方だけど、それが敵なんだったら罠の可能性もあるし。だったら両方見殺しにする」

死にたくないからね、と澪は付け足した。

「澪……変わったね」

「え?」

「昔の澪は真剣にすっごく悩んで、両方助けたいなって言ってたのに」

「……いつの話?」

「小学生の時かな」

「よく覚えてるな……」

そりゃそうよ。私、澪のことなら大概覚えてるもん。

 「今はさ、自分が分かったんだよ。俺は、正義のヒーローじゃなくて、白馬の王子様でもなくて、あるとすれば恐れられる黒騎士だからさ」

澪が笑う。大人になるってこういうことなのかな。

 最近、澪の考えている事がわからない。昔は手に取るように、テレパシーでもしているようにわかったのに、ある時から段々分からなくなった。小さい頃より遥かに感情も読みにくくなった。なにがあったんだろう。

「澪ぉ、何考えてんのー?」

「えぇ?……珠里をどうやっていじめるか、とか?」

「なにそれヒドっ」

真顔で言ってそれから澪が笑う。

 澪の笑顔はレアだ。いや、苦笑ならよく見れるけど、満面の笑みはかなりレア。

 澪の考えはよく分からない。でも彼はそれでいいんだと言う。

 根本的な所が変わってないのは知ってる。昔も、仲いい子を助けたいけど、って言ってた。

 分かってる、本当は。自分が澪の事好きなんだって。

 ──澪が何か、隠してるって。



 ……うう、いいにおい……。

 ……はー、花の匂いかなぁ。

 ん……今日何曜日だ?土曜か。あー、月曜からゲーム開始かぁ……。

 何時だよ今……。目覚まし…5時半?なんだよもう一回寝よ。

 んん…いいにおい…はぁああ…もっと……さ……ぁ……

 「ひゃっ!?」

……ん?

 ……何?

 「ちょっ…やめ……はぁ……だっ、だめ!」

 ……え?何これ?

「何やって、ふぁ、あぅ、あ…………」

 ……大人しくなった?まぁいいや、もう一回寝よう。あーこれいいにおいだしあったかいしやわらかい……

「へ!?……澪っ………………そ、そこはだめぇっ!!!!」

何っ!?

 目を開ける。目の前になんかある。なんだこれ。

 手を伸ばすと、腕を掴まれた。……え、てことは人間?

 ……あっ、そうだ、隣に珠里がいるんだ……。

 やっと思い出した。

 焦点を合わすと、涙目の珠里がアヒル座りで座っていた。

「澪ぉ……」

うぉぉお萌える!この姿凄い萌える!

 「えっと、俺、何やった?」

「あのねっ、私初めてなの!!だからね、もしそういうつもりなら先に言っておいてくれないとっ」

「……ごめん寝ぼけて」

これラッキーなのかな!?アウトなのかな!?

 それにしても珠里の体制が……。うー、涙目すごい良い。

「……あのさ、誘ってる?」

「えっ!?いや、そんなつもりは……。でも嫌では……」

「嫌がれよ」

嫌がってよ。じらされるとどうもうずうずする質だけど。

 「澪って昔から、朝弱かったもんね……」

珠里がため息をつく。まぁ、そうだったかも。

 まぁ私が隣で寝るって言い張ったんだからねー、と珠里は頭を掻き、ベッドから降りた。

「それに変なとこ触られた訳じゃないし、ただ…」

「え?」

「……な、撫で方がすっごいエロくて、思わず声が……」

ほっ……ホンノウッテコワイナー。ウン、コワイコワイ。いや俺本当に何やったか覚えてないんだけど。

 「澪、欲求不満なの?なんなら甘えてくれていいんだよ?」

満面の笑みで、珠里が手を差し伸べる。俺は首を振って立ち上がった。

「大丈夫だから、珠里帰った方がいいよ」

「あ、そうね」

珠里は服を整えて、ありがと、と笑う。

 部屋を出て玄関へ送る途中、彼女はふっと振り向いて真面目な顔で、

「……本当に、辛くなったら甘えていいんだから、頑張りすぎないでね」

と言った。



 珠里を送った後、もう一度布団に潜り込んだ。

 珠里はどうやら、俺がなんか特別だと知っているみたいだ。まぁ、校長の娘だしね。

 でも、何やってんだかは知らないっぽいな。幼なじみの勘だけど。

 ベッドにはまだ、珠里の花の香りが残っていて、毛布を手繰り寄せると香りが強くなる。

 ……俺、やっぱ欲求不満かも……。

 ……少しくらい、いい…よね?俺の布団だもんね?



 その後俺は、7時頃母さんに叩き起こらせた。






 ……たっぷり二時間ほど、ご馳走様でした。by澪

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