ぷろろーぐ
その恋は、一本の電話から始まった――
俺、佐藤澪。彼女いない暦=年齢の、ごく普通の高校生。
そろそろ彼女作りたいなーとか思いつつ、地味な容姿の癖に理想が高い俺は、結局この年齢まで彼女がいない。恋したことはあるけれど、大概相手は高嶺の花だ。
一番手の届く所にいた幼なじみで初恋のあの子は、違う高校に行ってしまって連絡もとっていない。ちょっと勿体ないかな。
まぁ、違う高校といっても隣町なんだけど、相手は名門の私立高校で、俺はその系列といえど私学の端っこにかろうじて引っかかっているような一般校。見かけても声がかけにくいんだよなぁ……。
というわけで、出会いを求めて平凡に暮らしている。――そんなある日のことだった。
ブーッブーッ……
いきなりバイブが鳴り響き、俺は慌てて携帯を開いた。
画面は着信中。ボタンを押して応答すると、女の子の声が聞こえてきた。
『もしもし、澪?珠里だけど、覚えてる?』
「え?珠里?あぁ、うん、覚えてるよ」
覚えてるも何も、初恋の君その人だ。忘れるはずがない。どうしたんだろう?
『久しぶり。突然ごめんね。メールしようかと思ったんだけど、メアド変わったのか送れなくて…』
あー、確かに変えたわ、こないだ。連絡してなかったか。
「別にいいよ。でも、どうしたの?」
『あぁ、あのね。今度小学校の同窓会やることになって、男女一人ずつ幹事をやることになったんだけど、それに私が選ばれちゃって……。男子選ばなきゃいけないんだけど、引き受けてくれない?』
「いいよ、別に。俺でいいなら」
暇だし。それに――
『よかったぁ。ありがとう!!あ、詳しいことはメールするから、私のところにメール送って?』
「うん、了解。それじゃ」
――あんなに可愛い、鈴の音みたいな声になったんだ。絶対、可愛くなったに決まってる。昔から美少女な兆しはあったけど、成長した彼女に是非とも会ってみたかった。
<1時に、駅前の噴水で待ち合わせね>
メールにはそうあった。時計は5分前。うん、ちょうどいい。
「あ、澪!!」
そういって手を振っていたのは――。
柔らかにカールした、綺麗な茶髪。
透き通るような、白い肌。
吸い込まれてしまいそうな、大きな瞳――。
ほら、俺が想像したとおり。凄く綺麗になってる。
俺と彼女。
この時、運命は狂いだした。
歯車はもう
正しく廻ることはないだろう