7 サイゼ
栗間
「ではさっきも言った通り、私は離れた所からテレパシーで指示を出しますね。県庁周辺は特に警戒が厳しいので。」
あたし
「はい。」
伊藤
「あ、栗間さん、なんか武器みたいのないんですか?」
栗間
「武器?」
伊藤
「アシモ壊すんでしょ、素手じゃ無理じゃん。」
栗間
「うーん、下手に凶器持ってくのはまずいですよ。危険人物と見なされてしまいます。」
伊藤
「そうかー。バールのようなものがあればいいんだけど。」
伊藤くんはバットを振る真似をした。ぶよぶよしたジャイアンみたいだ。
あたし
「ちょっといいですか。」
栗間
「はい?」
あたし
「壊すって具体的にどうするんですか?」
栗間
「あ。それですが、ただ壊すだけじゃだめなんです。アシモオリジナルを壊してもデータはバックアップされてるので」
伊藤
「量産されたアシモがそのデータを元にまた修復してしまうと。」
栗間
「そんな感じです。」
あたし
「じゃあアシモオリジナルを壊してデータを消せばいいんですね。」
栗間
「はい。そうするとアシモ団はただの白いゴミになります。」
伊藤
「おk。楽そうじゃん。」
あたし
「ことがうまく運べばね。」
栗間
「じゃあ面接の時間なのでそろそろ行ってください。」
栗間さんと別れたあと、あたしと伊藤くんはワリオ城の入口にいった。6つの金貨は必要ないようだ。金貨はワリオ城のメインだからなんか悔しい。
自動ドアが開き、中に入るとそこは普通の会社だった。普通じゃないのは人間にまじってアシモが働いていることくらいだ。
受付に面接室の場所を聞き、そこへ向かう。
あたし
「ねぇ伊藤くん。」
伊藤
「なに」
あたし
「なんでそんなにやる気なの?やだなーとか思わないの?」
伊藤
「未来には俺達の子孫がいるじゃん。助けたいよ、そりゃ。」
あたし
「い、伊藤くん…偉い!かっこいい!」
栗間『未来のリアルドール約束したんですよ。成功したらくれって。』
伊藤
「ちょw栗間お前www」
あたし
「うわ。死ねピザ。」
伊藤
「ち、知的好奇心だよ。未来のリアルドールとか凄そうじゃん。AI搭載で感情があるらしいし。」
栗間『凄いですよ。あれがあれば彼女いらないですよ。だから生産が制限されてて希少価値が高いんです。』
あたし
「…」
伊藤
「たま姉の顔にもできるんだって。ねぇ」
あたし
「触んな」
伊藤
「自分でお風呂入れるんだって。」
あたし
「もういいよ。」
伊藤
「女にはわかんないんだよこのときめきは…」
量産型アシモ
「ななさんと伊藤さんですね?」
あたし伊藤
「あ、はい!」
量産アシモ
「面接担当のアシモです。こちらの部屋へどうぞ。」
通されたところは面接のためのものなのか、椅子とテーブルだけのシンプルな部屋だった。なのに中山美穂がビキニ着てるビールのポスターが壁に貼ってあった。こんなポスターラーメン屋でしかみたことない。
あたし
「よろしくお願いのします。」
量産アシモ
「ではお二人にいくつか質問します。」
伊藤あたし
「はい。」
量産アシモ
「アシモを尊敬していますか。」
伊藤
「もちろんです。」
あたし
「わたしもです。」
量産アシモ
「ブル…」
あたし
「?」
量産アシモ
「失礼しました。ハイロウズの中で好きな曲はなんですか?」
伊藤『誰だよそれ知らねえよ、栗間さんどうしよう。』
栗間『ハイロウズ?どこに?なんですかそれ。』
あたし『えーと、多分日曜日よりの使者っていえばいいと思います。』
栗間『にちようびよりのししゃ。ですか。』
伊藤『なにからの使者だって?』
栗間『アシモに怪しまれます。とりあえず答えて下さい。』
あたし伊藤
「に、日曜日よりの使者です。」
アシモ
「おお!知っているとは。かなり勉強してきたんですね。にこにこ」
アシモはかなりご機嫌になった。表情がないから言葉で感情を伝えるようだ。
あたし『そういえば…このアシモは検問のときのアシモみたいにイーイー言わないんですね。』
栗間『あのイーイーはノリというか、わざとだったんでしょう。』
あたし『変なの。』
ミポリンのポスターといいワリオ城といいアシモは変だ。ミポリンが好きなロボットなんて考えられない。
もしかしたらアシモに人間を越えるAIを組み込んだ…そして自殺した科学者の影響を受けているのかもしれない。
あたし『なんてな。』
話が大きくなりそうだったからふと浮かんだ考えを即却下した。あたしは早くアシモを壊して帰りたいんだ。くわばらくわばら。
栗間『ななさん!それ!もしかしたらそうかもしれませんよ!』
あたし『え!』
栗間『ちょっと自殺した科学者のこと調べてきます。もしかしたらこの戦いが有利になるかもしれないので。』
あたし『じゃあお願いします。』
栗間『あ、ミラノ風ドリアとドリンクバー。』
あたし
「飯食ってるのかよ」