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4 江戸

まだ出会って10分もたっていないのに仲間が一人死んだ。伊藤君。おしゃべりでピザデブで死ぬほどウザかったけど、根は(おそらく)いいやつだっただろうに。きっと休みの日なんかはすることなくて一日中パソコンとか虫とか見てたにちがいない。


あたし

「く、栗間さん…」

栗間

「協調性のない人はこの戦いには向きません。」

あたし

「だからって何も殺すことないじゃないですか。せめてメラで…。」

栗間

「え、殺してはないですよ。ほら。」

栗間さんが指をさした所を見る。

あたし

「あ!伊藤君。」

そこには手の平サイズのちっちゃい伊藤君がいた。なんかぴょこぴょこ跳ねてキーキー言ってるけど小さすぎて聞き取れない。

栗間さん

「メラゾーマは小さくなる呪文です。」

あたし

「そんなことも出来るんですか…」

栗間さんはドラクエやったことないんだろうな、と思った。

伊藤君は相変わらずキーキー言っている。小さくてもウザい。思わずデコピンしたら勢いよく吹っ飛んで大人しくなった。笑える。

栗間さん

「さて、落ち着いたところでわたしの考えをお話しします。」

あたし

「はい。」

栗間

「さっきアシモは汗や心拍数や血圧で人の感情を読み取れる、と言いましたよね。」

カイジの利根川もそんな事やってたな。どうでもいいけど。

あたし

「はい、だから誰もアシモには逆らえないと。」

栗間

「そうです。謀反を企て、心の中で『アシモぬっ壊す』と思いながら近づいた者は一瞬で殺されます。殺意は消せるものではありません。」

あたし

「遠くから攻撃するのは?」

栗間

「レーダーで常に外からの攻撃に備えているので、銃弾やミサイルは感知された時点で粉々になりました。」

あたし

「合コンでウーロン茶飲んでる女くらい守りが固いですね。一体あたしに何が出来るって言うんですか。」

栗間

「実はアシモが心を読み取れるのは現代の人間だけなのです。日本全国の人間の感情パターンを把握していますが、さすがに過去の人までは手を回していないようです。」

あたし

「ということはあたしや伊藤君は近づいても大丈夫なんですか?」

栗間

「伊藤君…?」

あたし

「ほら、あの太ってる人…」

栗間

「あーあー、いたね」

あたし

「じゃああたしはアシモに近づいて壊せばいいんですか?てかそんな簡単に壊れるもんなんですか。」

栗間

「アシモのボディはガンジョーダXくらいの強度ですが、アーマードスーツを着れば壊すことができると思います。」

あたし

「なんでガンジョーダX知ってるんですか。」

栗間

「100年後の今、ガモウひろしはあなたの時代でいう手塚治虫みたいなポジションですからね。ラッキーマンはブッダに匹敵するほどの哲学漫画です。」

あたし

「まじすかwガモウすげぇえぇww」

栗間

「あ、あとあなたの時代に叶姉妹ってタレントさんいましたよね?あの人達、見た目変わらずまだテレビに出てますよ。」

あたし

「まじすか。整形するために国家予算くらい使ってるんじゃ…。」

栗間

「話が脱線しましたが、あなたにはとにかくボスのアシモと接触して欲しいのです。」

あたし

「アシモはどこにいるんですか?」

栗間

「長野市です。」

あたし

「ちょwなんか身近に感じるww」

栗間

「ちなみにここは仙台なのでちょっと長野まで時間がかかります。」

あたし

「仙台?仙台といえば牛タンですね。」

栗間

「牛タン…?」

あたし

「牛の舌です。」

栗間

「牛の舌をどうするんですか?」

あたし

「え。食べるんですよ。煮たり焼いたりして。」

栗間

「ええぇ!牛の舌をですか!?」

あたし

「栗間さんの時代にはなくなっちゃったんですか?」

栗間

「ないですよ。そんな気持ち悪いもの…。」

あたし

「……。」

栗間

「……。」

あたし

「とりあえず長野市に行きますか。」

栗間

「はい。じゃあ外に車がありますので。」

栗間さんについていきドアから出ると、そこはテレビでしかみたことないような江戸時代の風景だった。

着物姿の女がしとやかに歩き、その横を宅急便のトラックに描かれているような飛脚の男が走っていった。町並みも水戸黄門っぽい。

あたし

「え…こ、これは…?」

栗間

「びっくりされたでしょうが、この辺りはアシモの指示により全て江戸時代を元に作られています。」

あたし

「100年後なのになぜ?」

栗間

「アシモ自身がハイテクノロジーなので、民衆との差を広げてその力を誇示したいためだと思います。それかただの趣味かです。」

あたし

「日本全体がですか?」

栗間

「いえ。北海道から南に向かって徐々に江戸化していて、そろそろ仙台も完全に江戸になってしまいます。そうなると車が使えなくなるのでこれが最後のチャンスなんです。」

あたし

「国民は暮らしにくいでしょうね。さっきの部屋の装置は?」

栗間

「そのうち取り上げられてしまいます。」

あたし

「そんな。せっかく山根が気付いた文化がなのに…」

話しているとそばにいたおばさん達の会話が聞こえた。

「最近ニュースになったあれ、近所の奥さんが引っ掛かったらしいわよ。」

「いやねぇ」

「でもわたしもそんな電話きたら思わず信じちゃうわよ。」

「そうねぇ。お互い気をつけましょうね、拙者拙者詐欺には。」

あたし

「…確かに江戸化してる」

栗間

「では車にどうぞ。」

栗間さんの横には流線型のカプセルみたいな乗り物があった。全体的につるんとしていて、フロントガラスとドアがあるだけで車輪はない。

あたし

「これ、まさか空を飛ぶんですか?」

栗間

「空ではなく地下です。」

あたし

「地下?」

栗間

「乗ればわかります。さ、どうぞ。」

中に乗り込むと現代の車とそう替わりはなかった。栗間さんがエンジンをかけると車の下の床が開き、エレベーターのように車が下がった。

栗間

「道路が地下になっただけであとはあなたの時代と一緒です。信号もありますし。歩行者がいない分事故は減りましたが。」

あたし

「今まであった道路の分建物も建てられるしすごいですね。」

栗間

「では長野市へ向かます。」

車は一気に加速し、一気に120キロまで出た。栗間さんがいうには地下道路は全て高速道なんだそうだ。

信号は1キロ前から告知され、なにもかもがよく出来ている。

栗間

「あ!しまった!」

あたし

「どうしたんですか?こ、故障…?」

栗間

「伊藤君忘れた。」


たいした問題じゃなくてよかったなぁと思った。

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